2020-01-01から1年間の記事一覧

 [美術展] 超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵

[美術展] 超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵 渋谷・Bunkamura 6月28日 (画像↓は、藤田貴也「EIKO-01」、完全な画像が見つからなかったので、二枚引用するが、原画はほぼ全身像、私は、少女がこんなに美しく描かれた絵を見たことがないので、立ち尽くしてしま…

 [映画] ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語

[映画] ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 Movixさいたま 6月23日 (写真↓、下は冒頭、ジョーは、原稿が出版社に売れて大喜びで街を疾走する、原作とは時間順序が違い、未来と過去が繰返し交錯する凝った構成) 私はオルコットの原作は未読だが、…

 [バレエ] J.バランシン/メンデルスゾーン『夏の夜の夢』

[バレエ] J.バランシン/メンデルスゾーン『夏の夜の夢』(パリ・オペラ座) 東劇6月8日 (写真↓は、妖精の国の女王ティターニア、まるで王女様のように可愛い、その横は王であるオベロン、まるで優美な王子様だ、その下は妖精と女官たち) 2017年のパリ・オペラ…

 [バレエ] M・ボーン/プロコフィエフ『ロミオとジュリエット』

[バレエ] M・ボーン/プロコフィエフ『ロミオとジュリエット』 恵比寿ガーデンシネマ 6月5日 (写真↓は、and palm to palm is holy palmers’ kiss のシーン、原作の舞踏会シーンだが、ずっと後の方に移している、その下は舞台の少年院、左はBoys、右はGirls)…

 [映画] ピケティ『21世紀の資本』

[映画] ピケティ『21世紀の資本』 Movixさいたま 6月1日 ピケティ『21世紀の資本』(2013)のエッセンスを映画化したもので、非常によく出来ていて、分りやすい。ピケティ自身も、最初から最後まで映像に合わせて講義する。103分の内容は、この250年くらいの西…

 美と愛について(17) ― 松浦理英子『最愛の子ども』(1)

美と愛について(17) ― 松浦理英子『最愛の子ども』(1) 多くの哲学者が「愛」について考察したが、プラトン『饗宴』、アリストテレス『ニコマコス倫理学』、キルケゴール『あれか これか』等と並んで、ラカン『アンコール』は最重要文献と言える。『アンコー…

今日のうた(109)

[今日のうた] 5月ぶん (写真は川野芽生1991~、2018年に第29回「歌壇賞」受賞、東大大学院生、古典的様式の耽美的な歌を詠み、思想性が強くフェミニズム的) 梅の木の心しづかに青葉かな (一茶、今、木々の青葉が美しい、我が家では、モクレンの葉などは風に…

美と愛について(16) ― 大黒達也『芸術的創造は脳のどこから生まれるか?』

美と愛について(16) ― 大黒達也『芸術的創造は脳のどこから生まれるか?』 本書(2020)は「美」を直接に問題にしているわけではないが、「芸術的創造」はどのようにして起きるのかを、脳の機能に即して考察した。脳波の他に、MRIやMRDTIなど脳の微細な磁気を…

美と愛について(15) ― 鶴岡真弓『芸術人類学講義』

美と愛について(15) ― 鶴岡真弓『芸術人類学講義』 (写真↓は、スペインのエル・カスティーリョ洞窟の「手形」の絵、4万年前) ケルト美術研究で名高い鶴岡真弓篇『芸術人類学講義』(2020、ちくま新書)は、芸術の起源について様々な角度から考察している。「芸…

今日のうた(108)

[今日のうた] 4月ぶん (写真は岩田正1924~2017、妻の馬場あき子とともに歌誌「かりん」を創刊、主宰。歌人としての他、すぐれた批評家でもあった) ともに戦後を長く生ききて愛らしく小さくなりぬ東京タワー (佐伯裕子『感傷生活』2018、東京タワーの完成は…

美と愛について(14) ― 渡辺茂『美の起源』(続)

美と愛について(14) ― 渡辺茂『美の起源』(続) (写真↓、オーストラリアに生息するニワシドリ[庭師鳥]のオスは、まるで庭師の名匠のように、アヴェニュー型(上)とメイポール型(下)の二種類の巣を作る。だが住むためではなく、その「豪邸」をメスに見せて求愛…

美と愛について(13) ― 渡辺茂『美の起源』

美と愛について(13) ― 渡辺茂『美の起源』 この三回ほど、「性選択」について見てきたが、今回は実験心理学者の興味深い見解を、渡辺茂『美の起源』(2016、共立出版)から見てみよう。 (1) まず渡辺は、ダーウィンの性選択や、同時代の進化論学者ウォレスのダ…

METライブ ガーシュウィン《ポーギーとベス》

[オペラ] ガーシュウィン《ポーギーとベス》 METライブ Movixさいたま 4月3日 (写真↓は舞台、多人数の踊りが多く、ミュージカルのよう、1935年ニューヨークでの事実上の初演はブロードウェイだった。メトでは、出演者のほぼ全員が黒人歌手ゆえ上演しにくかっ…

今日のうた(107)

[今日のうた] 3月ぶん (写真は折口信夫1887~1953、国文学者、民俗学者として名高い、写真は1935年頃沖縄の首里城で撮られたもの) 下萌や土の裂け目の物の色 (炭太祇1709~1771、「下萌(したもえ)」とは、冬枯れの中にも地面に緑の草が萌え始めること、たし…

映画 『三島由紀夫VS東大全共闘』

[映画] 『三島由紀夫VS東大全共闘』 TOHOシネマズ日本橋 3月27日 この討論会は、後に出た本で読んだので概略は知っていたが、今回、実際の映像の他に、当事者たちの今のインタビューが加わったのが非常によかった。当時、三島と共に行動した「盾の会」の学生…

美と愛について(12) ― バーク『崇高と美の観念の起源』

美と愛について(12) ― バーク『崇高と美の観念の起源』 (上は↑、エドムント・バーク(1729~97)の『崇高と美の観念の起源』1759、引用は中野好之訳(みすず書房)より) 前回は、ダーウィンの「性選択」の説を見たが、彼より前に同じことを言っていたのがバーク…

美と愛について(11) ― 美の起源としての「性選択」

美と愛について(11) ― 美の起源としての「性選択」 (↑ダーウィンの『人間の由来と性選択The Decent of Man, and Selection in Relation to Sex』1871、以下、ダーウィンの引用は、長谷川眞理子訳『人間の由来』(講談社学術文庫・上下、2016)より) 今回は、美…

美と愛について(10) ― 恋に陥る瞬間、マン『ヴェニスに死す』『トニオ・クレーゲル』

美と愛について(10) ― 恋に陥る瞬間、マン『ヴェニスに死す』『トニオ・クレーゲル』 (写真↓は、ヴィスコンティ監督の映画『ヴェニスに死す』1971で、美少年タッジオを演じたスエーデンのビョルン・アンドレセン、オーディションでヴィスコンティと並ぶ写真…

「シュルレアリスムと絵画」展  ポーラ美術館

[美術] 「シュルレアリスムと絵画」展 箱根・ポーラ美術館 3月3日 (写真↓は、デ・キリコ《ヘクトルとアンドロマケ》1930) ポーラ美術館で、「シュルレアリスムと絵画」展を見た。「シュルレアリスムの絵画」ではなく、アンドレ・ブルトン主導の「シュルレア…

今日のうた(106)

[今日のうた] 2月ぶん (写真は香川ヒサ1947~、角川短歌賞、若山牧水賞などを受賞、思索的でヒネリの効いた歌を詠む人) 恋人をみつけたような足取りであなたは川へ向かってあるく (梶山志緒里『角川短歌』2019年11月佳作、前後の歌からすると、作者1993~は…

METライブ フィリップ・グラス 《アクナーテン》

[オペラ] フィリップ・グラス《アクナーテン》 METライブ Movixさいたま 2月27日 (写真↓は舞台、非常に美しい、上はジャグリングjugglingの小さな玉が素晴らしい、手前で祈るのはアメンホテプ3世(アクナーテンの父)) アメリカの作曲家フィリップ・グラス1937…

美と愛について(9) ― 恋に陥る瞬間、トーマス・マン『魔の山』

美と愛について(9) ― 恋に陥る瞬間、トーマス・マン『魔の山』 (↑2018年ミュンヘンで上演された演劇版『魔の山』、ショーシャ夫人が髪の後に両手を回す仕草をし、彼女の肩と腕に触れるカストルプ青年。彼女はダボスのサナトリウムで治療を受けている(たぶん…

イプセン 『亡霊たち』

[演劇] イプセン『亡霊たち』 駒場・アゴラ劇場 2月22日 翻訳・演出は毛利三彌。この新訳では、従来は『Gengangere幽霊』と訳されていたのが『亡霊たち』と変った。役者たちが非常に上手い。舞台表現の水準は高く、BGMにシャンソンが掛かる以外はリアリズム…

平田オリザ 『東京ノート』

[演劇] 平田オリザ『東京ノート』 青年団公演 吉祥寺シアター 2月20日 (写真↑は舞台、終幕近く、中央は長女の由美(松田弘子)、右は次男の妻である好恵(能島瑞穂)、平田の劇には主役的人物はいないのだが、本作では二人は準主役的、『東京ノート』は小津の『…

美と愛について(8) ― 恋に陥る瞬間、トーマス・マン『すげかえられた首』

美と愛について(8) ― 恋に陥る瞬間、トーマス・マン『すげかえられた首』 『魔の山』で知られるトーマス・マンに、『すげかられた首Die vertauschten Köpfe』(1940)というインドの古伝説に取材した小説がある。ナンダとシュリーダマンという二人の若い青年と…

近松半二:新版歌祭文/近松門左衛門:傾城反魂香

[文楽] 近松半二:新版歌祭文/近松門左衛門:傾城反魂香 国立劇場 2月17日 (写真は↓、新版歌祭文のお染と久松) 「新版歌祭文」野埼村の段と、「傾城反魂香」土佐将監閑居の段の二つを見た。前者は悲劇、後者は喜劇で対照的だが、どちらも非常によくできた作…

美と愛について(7) ― 恋に陥る瞬間、ゲーテ『若きヴェルテルの悩み』

美と愛について(7) ― 恋に陥る瞬間、ゲーテ『若きヴェルテルの悩み』 (本の表紙↑、二人はどちらも手先を触れ合っている) ゲーテ『若きヴェㇽテルの悩み』は23歳のゲーテの実体験をもとに書かれている。「純愛小説」として名高いが、青年ヴェㇽテルがロッテと…

美と愛について(6) ― 恋に陥る瞬間、川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』

美と愛について(6) ― 恋に陥る瞬間、川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』 前回の『ロミ・ジュリ』では、and palm to palm is holy palmers’ kissと恋人たちが手を合わせる仕草が美しかった。人は恋に陥る瞬間に手が動くのかもしれない。だが、ロミオもジュ…

シラー 『メアリー・スチュアート』

[演劇] シラー『メアリー・スチュアート』 世田谷パブリック劇場 2月4日 (写真は↓、メアリー[長谷川京子]とエリザベス[シルビア・グラブ]、そして舞台、舞台には椅子くらいしかないが、光線の使い方がとても上手く、闇の中に人が光るのが美しい) 原作はシラ…

唐十郎 『少女仮面』

[演劇] 唐十郎『少女仮面』 シアター・トラム 1月30日 (写真↑は、左から、老婆(大西多摩惠)、宝塚の伝説的な男装スター春日野八千代(若村麻由美)、そして宝塚志望の少女・貝(木崎ゆりあ)、彼女たちの肉体は仮象であり、女優として成功すればするほど自分の肉…