2021-01-01から1年間の記事一覧

今日のうた(125) 9月ぶん

今日のうた(125) 9月ぶん 人流といふ語訝(いぶか)し夏の暮 (穴沢秋彦「朝日俳壇」8月29日、高山れおな選、コロナの感染者数が増えて、菅首相などは「人流を〇〇パーセントにしてほしい」とか言った、「人流」という曖昧で抽象的な語を使うのは、政府の無責任…

今日の絵(16) 9月後半

今日の絵(16) 9月後半 18 ジェンティレスキ : 自画像 しばらく若桑みどり『女性画家列伝』により、自画像を、アルテミジア・ジェンティレスキ1593~1652は、ヨーロッパで一流画家として活躍した初めての女性、父も画家だが、「当時としては異例な闘争的な」…

[演劇] デュレンマット『物理学者たち』

[演劇] デュレンマット『物理学者たち』 ノゾエ征爾演出 本多劇場 9月25日 (写真は舞台、サナトリウムだが実質は精神病院、天才物理学者メービウスと、それぞれニュートンとアインシュタインの振りをしている某国の敏腕スパイ二人とが、すなわち三人の「患者…

今日の絵(15) 9月前半

今日の絵(15) 9月前半 1 Van Eyck : Portrait of a Man with Carnation, 1435 今日からは有名人ではなく普通の人の絵、みな堂々とした存在感がある、まずファン・エイクの「カーネーションを持つ男」、たぶん50代だろう、ものすごく小さいが、結婚の象徴であ…

[演劇] 秋元松代『近松心中物語』

[演劇] 秋元松代『近松心中物語』 KAAT 9月9日 (写真は舞台、そして古道具屋の与兵衛[松田龍平]とお亀[石川静河]) 私は初見だが、蜷川幸雄演出で上演1000回を超えた名作と言われ、今回は長塚圭史演出。まぁ、それなりに面白くはあったが、近松の原作に比べる…

今日の絵(14) 8月

今日の絵(14) 8月ぶん 1 中山忠彦 : モラヴィアの装い、1975 中山1935~は、生涯、ほぼ妻だけを描き続ける、この絵も妻、気品があって美しい、中山は、女性は裸体より衣服を着けた方が美しいと考えるので、裸婦は描かない、夫婦でヨーロッパでアンティーク・…

今日のうた(124) 8月ぶん

[今日のうた] 8月ぶん (写真は斯波園女、女性だが芭蕉の最晩年の弟子で、芭蕉の死後は大阪で活躍した後、其角を頼って江戸に出た) 船長も舵手も夏服よごれなき (橋本多佳子『海燕』、1936年、上海、香港、マニラと旅行した時の句、大海原の真っただ中で青々…

[オペラ] ベルク《ルル》 二期会、グルーバー演出

[オペラ] ベルク《ルル》 二期会、グルーバー演出 新宿文化センター 8月29日 (写真はルル↓、スタイリッシュで美しい舞台) 私は今まで3幕版しか見たことがないが、これは2幕版。だが、見事な終盤になっている。演出のカロリーネ・グルーバーが女性であること…

[演劇] 安部公房原作・ケラ脚本『砂の女』

[演劇] 安部公房原作・ケラ脚本『砂の女』 ケムリ研究室公演 シアター・トラム 8月27日 (写真は舞台↓ 砂の穴に落ちた男[仲村トオル]と砂の穴に住む謎の女[緒川たまき]) 実験的・前衛的演劇を試みるために、劇作家演出家ケラと俳優緒川たまきの二人が作ったユ…

[オペラ] ヴェルディ《アイーダ》

[オペラ] ヴェルディ《アイーダ》 METライブ Movixさいたま 8月5日 2018年10月6日のMet公演、アイーダ(ネトレプコ)、アムネリス(ラチヴェリシュヴィリ)、ラダメス(アントネンコ)の三人が素晴らしい。ワーグナーと同様、歌い手の異様な声量が要求される作品な…

今日のうた(123) 7月ぶん

[今日のうた] 7月ぶん (写真は永井荷風1879~1959、浅草など下町を愛した荷風は、下町の風情を俳句に詠んだ) 夏空へ嵌め殺し窓壊さうか (佐藤勝美「東京新聞俳壇」6月27日、石田郷子選、「誉め殺し」は知っていたが、「嵌め殺し」は初見、でもよく分かる、最…

今日の絵(13) 7月後半

今日の絵(13) 7月後半 18 Picasso : Olga Picasso, 1923 ピカソは1917年にロシア・バレエ団の踊り子オルガ・コクローヴァと出会い、翌年に結婚、21年には息子パウロ誕生、オルガとの関係は1935年まで続いた、ピカソは1908~15年のキュビズムから離れ、その後…

[オペラ] 高橋宏治《プラットホーム》

[オペラ] 高橋宏治《プラットホーム》 杉並公会堂 7月28日 芸大出身の若手ソプラノ、薬師寺典子がベルギー留学中に発案・製作し、同じく若手作曲家の高橋宏治が作曲、1時間の作品。ゲント、ブリュッセルに続いて、これが三回目の東京上演。歌い手は薬師寺一…

[演劇] 宮本研『反応工程』

[演劇] 宮本研『反応工程』 新国立劇場 7月21日 (写真は舞台、九州にある三井化学工場で、ロケットの燃料を作っている、知識階級といえる旧制高校生たちが学徒動員された若い工員たちと、初老の小卒たたき上げ職工たちが仲良く一緒に働いている) 宮本研は『…

今日の絵(12) 7月前半

[今日の絵] 7月前半 1 Velazquez : The Needlewoman, 1635~43 ベラスケスの「編み物をする女」は未完成で、頭や顔は完成しているが、手や指は描きかけだ、しかし、前方に傾いている体、さらにうつむいている顔は、しっかりと指先を見ている、指先を見るぴー…

[演劇] エウリピデス『メデイア』

[演劇] エウリピデス『メデイア』 NTライブ シネリーブル池袋 7月14日 (写真は舞台↓、二階は王の宮殿での結婚式、一階はメデイアの住居、舞台の作りは非常にうまい、原作のメデイアは四分の一ほど神の血をひく王女で、伝承では魔女だが、本作では現代の「普…

[演劇] ムワワド『森 フォレ』

[演劇] ムワワド『森 フォレ』 世田谷パブリックシアター 6月7日 (写真は俳優たちと人物相関図、この俳優たちが一人四役くらい演じて、8世代にわたる140年間の家族の愛憎が描かれる、登場人物の多さという点では、『失われた時を求めて』の演劇版かもしれな…

今日のうた(122)

[今日のうた] 6月ぶん (写真は石田柊馬1941~、現代川柳の領導者の一人) ややこしく体を使うことになる 敵と味方とうさぎが殖える (関口真司『ねむらない樹vol.6』2021年2月、コンピュータ・ゲームの臨場感だろうか、画面上の自己の身体を巧みに動かして戦い…

今日の絵(11) 6月後半

[今日の絵] 6月後半 18 Tiziano : Venus and Adonis, 1554 「ヴィーナスとアドニス」は人気テーマ、美女と美少年を一緒に描けるからか、二人の女神ヴィーナスとペルセポネが取り合った美少年アドニスは、裁判所の命令で、二人の所にそれぞれ4か月づつ過ごす…

[演劇] 岡田利規『未練の幽霊と怪物(『挫波』『敦賀』)』

[演劇] 岡田利規『未練の幽霊と怪物(『挫波』『敦賀』)』 KAAT 6月23日 (写真は舞台、現代演劇なのだが、完全に能の形式で行われる) 本作は、今までほとんどない新しい試みを岡田が行ったという点で、非常にユニークなものだ。能を現代演劇化したり、現代演…

[演劇] 唐十郎『ベンガルの虎』

[演劇] 唐十郎『ベンガルの虎』 新宿梁山泊、花園神社・紫テント 6月21日 (写真は舞台、どちらも主役の「水島カンナ」を演じる水嶋カンナ、水嶋は新宿梁山泊の看板女優だが、その芸名は本作の「水島カンナ」に拠るといわれる) 唐十郎の弟子で新宿梁山泊を主…

[演劇] 野田秀樹『フェイクスピア』

[演劇] 野田秀樹『フェイクスピア』 東京芸術劇場 6月15日 (写真は舞台、左からイタコの白石加代子、ハムレットの父[若いけれど]の高橋一生、そしてハムレット[老人だけれど]の橋爪功、この三人が主人公、80歳の白石と橋爪の活躍は凄い!) 芸術としての演劇…

今日の絵(10) 6月前半

[今日の絵] 6月前半 1 Hals : Two Boys Singing, 1625 「子ども」は絵画の重要な主題、大人とはまた違う存在感がある、今日からは子どもの絵を少し、フランス・ハルスの絵は表情がとても生き生きしている、これは兄弟だろう、伴奏を付けて一緒に歌う前に、歌…

[演劇] 森見登美彦原作 『夜は短し歩けよ乙女』

[演劇] 森見登美彦原作『夜は短し歩けよ乙女』 新国立劇場 6月11日 (写真上は、京大「詭弁論部」OBの老人たちと楽しく酒を飲む京大一年生の「乙女」(久保史緒里)、写真下はもう一人の主人公、京大三年生のサークルの「先輩」(中村壱太郎)、天然ボケ少女の「…

[オペラ] サーリアホ 《Only the Sound Remains – 余韻》

[オペラ] サーリアホ 《Only the Sound Remains – 余韻》 東京文化会館 6月6日 (写真は、今回のものがまだないので初演から、「羽衣」と「経正(つねまさ)」、ただし舞台装置は今回とは大きく違う) サーリアホはMETライブで《遥かなる愛》を観たので、これが…

[演劇] 歌舞伎、鶴屋南北『桜姫東文章(下の巻)』

[演劇] 歌舞伎、鶴屋南北『桜姫東文章(下の巻)』 歌舞伎座 6月5日 (写真↓は舞台、桜姫の玉三郎のこのうえない美しさは格別のものがあるが、それ以上に、権助の仁左衛門の色気は筆舌に尽くしがたい、今日の観客は8割が女性だが、歌舞伎に女性観客が多いのは江…

今日の絵(9) 5月後半

[今日の絵9] 5月後半 17黒田清輝 : 舞妓、1893 27歳の黒田がフランスから帰国して、京都で描いた絵、9年間滞仏した彼は京都も舞妓も初めてだ、「舞妓は小さな綺麗な鳥みたいで、触はつたら壊はれさうな一つの飾物」のように感じられたと書いている。舞妓も日…

今日のうた (121)

[今日のうた] 5月ぶん (写真は石部明1939~2012、現代川柳の領導者の一人) 病棟や父「撤収ッ」を連呼せり (石田柊馬1941~、作者の父は出征し帰還した兵士だった、戦後ずいぶんたつのに戦争の記憶は父の中で生きている、入院病棟で意識朦朧としている父が「…

[オペラ] ヘンデル《セルセ》 二期会

[オペラ] ヘンデル《セルセ》 二期会 めぐろパーシモンホール 5月22日 コンテンポラリーダンスの中村蓉の演出、ダンスをたくさん舞台に取り入れている。ヘンデルのオペラは、オケの音楽が伴奏あるいは通奏低音として下部構造をなし、演劇的要素である上部構…

今日の絵(8)  5月前半

[今日の絵8] 5月前半 1 Jan Massys : Susanna and the Elders, 1564 旧約ダニエル書より「スザンナと長老」、水浴び中のスザンナを覗いた巡回裁判官の長老が彼女に情交を迫り、「いやなら青年と密会してたと報告するぞ」と脅した、彼女は普通の人妻だが、こ…