2023-01-01から1年間の記事一覧

[折々の言葉]  7,8月ぶん

[折々の言葉] 7,8月ぶん キリスト者は真の神を知って、この世を愛さない。(パスカル『パンセ』) 7.3 人間はもはや芸術家ではない、[人間そのものが]芸術作品となったのである。(ニーチェ『悲劇の誕生』) 7 より気にかかることがあると、記憶の力はしばしば奪…

[折々の写真]7、8月

[折々の写真]7、8月 7.5ブレッソン『やさしい女』1969、ドミニク・サンダ17歳はこれが映画初登場、こんなに可愛いのに、氷のように冷たく暗い女、原作はドストエフスキーの中編小説で非常な傑作、彼の最初の妻がモデルとも言われる、動画が↓ 映画『やさしい…

[今日の絵] 8月前半

[今日の絵] 8月前半 8.1 7月29日に「マティス展」に行ったので、特に気に入った絵を何枚か。「座るバラ色の裸婦」1935、「眠る女性」1942、「オレンジのあるヌード」1953、マティスは、色彩のバランスもよいが、何といっても「形態」が卓越している 2 昨日…

[今日の絵] 7月後半

[今日の絵] 7月後半 16 Marie Élisabeth-Louise Vigée Le Brun:ポリニャック公爵夫人1783 エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン1755~1842はフランスの女性画家、マリー・アントワネット付きの肖像画家だった、ポリニャック侯爵夫人1749~93は上流社…

今日のうた(147) 7月ぶん

[今日のうた] 7月ぶん 七月の青嶺(あおね)まぢかく溶鉱炉 (山口誓子1927、同年7月、誓子が八幡製鉄所を見学した際の句、製鉄所の南側は山が青々としているが、「溶鉱炉の鉄扉を開けると、深紅の火が流出した」と誓子の自註、「七月の青嶺」という冒頭がいい)…

[映画] 宮崎駿『君たちはどう生きるか』

[映画] 宮崎駿『君たちはどう生きるか』 Movixさいたま 7月16日 静かで深い感動が残る傑作だ。『風の谷のナウシカ』とよく似た主題で、神話と現代が交錯する。人間たちは憎しみや戦争によって、世界の終りがもうそこにあるが、一人の少年と一人の少女が協力…

[オペラ] S.マクバーニー演出、モーツアルト《魔笛》

[オペラ] S.マクバーニー演出、モーツアルト《魔笛》 Metライブ Movixさいたま 7月14日 (写真↓上は、中央がモノスタトス、右端がパミーナ、下は、パミーナとパパゲーノ) 私がこれまで観た数十回の《魔笛》の中でも、トップ級の上演だ。《フィガロの結婚》な…

[今日の絵] 7月前半

[今日の絵] 7月前半 1 Leonardo da Vinci :肖像? 1472 ダ・ヴィンチ1452~1519のもっとも初期の絵と言われているが、疑う美術史家もいるようだ、ゆたかな髭が印象的で、顔が生き生きとしている、帽子、髭、衣服、背景の落ち着いた色彩のバランスの中で顔が…

[オペラ] ヴァン・ホーヴェ演出《ドン・ジョバンニ》

[オペラ] ヴァン・ホーヴェ演出 モーツァルト《ドン・ジョバンニ》 Metライブ Movixさいたま (写真↓は舞台、全体は二幕だが、すべてがこの地下室のような場所で生起し、太陽の光は一度も出てこない) 2023年5月20日Met上演、さすがヴァン・ホーヴェ演出で、こ…

[演劇] 野田秀樹『兎、波を走る』

[演劇] 野田秀樹『兎、波を走る』 東京芸術劇場 6月27日 (写真↓は舞台、たくさんの物語が時空をまたいで多重交錯しているので、全体が難解になった、写真上は、左から作家シャイロック・ホームズ、チェーホフ、中央が[不思議の国の]アリスの母、そして右が『…

今日のうた (146) 6月ぶん

今日のうた (146) 6月ぶん ひとつ脱いで後(うしろ)に負ひぬ衣更(ころもがへ) (芭蕉1688、「旅の最中で夏衣をもっていない、この衣を脱いで背中に背負い、衣更とするか」、「衣更」は、高校生の制服の転換のイメージがあったが、芭蕉の頃からあったのだ) 6.1 …

[演劇] 唐十郎『少女都市からの呼び声』

[演劇] 唐十郎『少女都市からの呼び声』 花園神社・紫テント 6月26日 (写真は舞台、おどろおどろしい肉体が乱舞する祝祭性、古代ギリシアのバッコス祭はたぶんこんな雰囲気なのだろう、奥山ばらばの踊りがいい) 新宿梁山泊、金守珍演出。花園神社の紫テント…

[今日の絵] 6月後半

[今日の絵] 6月後半 16 Victor Gabriel Gilbert : Elegance on a rainy day 都市は絵によく描かれる主題だが、雨の光景も多い、光の反射などで人も街も美しいからだろう、ヴィクトール・ジルベール1847~1933はフランスの画家、生涯をパリで過ごしパリの人々…

[折々の写真] 5,6月ぶん

[折々の写真] 5.5トリュフォー『突然炎のごとく』、主人公のカトリーヌ(ジャンヌ・モロー)が男たちをからかうために右側のセーヌ川に飛び込む。予定されたスタントマンが怖気づいてしまい、「じゃ、私がやるわよ!」とJM本人が飛び込んだ、「瞬間よ止まれ…

[折々の言葉]  5,6月ぶん

[折々の言葉] 5,6月ぶん 彼女はその恋を味わって悔いもなく、怖れもなく、悶えもなかった。(フロベール『ボヴァリー夫人』) 5.1 どうか私を想像してほしい。あなたが想像してくれなければ私は存在しないのである。(ナボコフ『ロリータ』) 5 [アルヌー夫人を…

[今日の絵] 6月前半

[今日の絵] 6月前半 1 Morisot : Young Lady Seated on a Bench, 1864 画家はただモデルの身体を描くのではなく、身体の姿勢や体勢を注意深く整える、体の向きや傾きだけでなく、何かを手にしていれば、それが体勢を創りもする、ベルト・モリソはマネの義妹…

[オペラ] ヴェルディ《リゴレット》

[オペラ] ヴェルディ《リゴレット》 新国立劇場 6月3日 (写真↓は舞台、ビルバオ歌劇場のも混じる、下は冒頭の舞踏会シーン) 10年前の、新国のクリーゲンブルグ演出版では現代の東京に場所を移していたが、このエミリオ・サージ演出版は伝統に沿った演出で、…

[演劇] 木ノ下歌舞伎『摂州合邦辻』

[演劇] 木ノ下歌舞伎『摂州合邦辻』 横浜KAAT 5月31日 (写真↓は舞台、糸井幸之介作曲の音楽はまるでミュージカルなのだが、ギリシア悲劇のコロスであるよりは、私には、皆が讃美歌を歌いながら踊っているように感じられ、涙が止まらなかった) 数年前に、木ノ…

[オペラ] ケルビーニ《メデア》

[オペラ] ケルビーニ《メデア》 日生劇場 5月27日 (写真↓は舞台、ゲネプロから、中央はクレオン王の王女グラウケー) 日本初演!こんな凄いオペラがあったのかと驚いた。ケルビーニはモーツァルトより4年後の生れだから、かなり古い。エウリピデスの『メディ…

[今日の絵] 5月後半

[今日の絵] 5月後半 15 children riding a dromedary (Arabian camel) 今日から「子どもたち」の絵を、まずイスタンブールの大宮殿モザイク博物館にある、6世紀のモザイク画、アラブのラクダに乗っている子どもたち、子どもは黒い鳥を抱えているし、どこかこ…

今日のうた(145) 5月ぶん

今日のうた(145) 5月ぶん 佐保姫が俳句の種を播いてゐる (森木道典「朝日俳壇」4月30日、大串章選、「「俳句の種」を播くが言い得て妙。さすがは春をつかさどる女神」と選者評) 5.1 野球部の声出し係風光る (今泉準一「東京新聞俳壇」4月30日、小澤實選、「…

[オペラ] R.シュトラウス ≪エレクトラ≫ サントリーH

[オペラ] R.シュトラウス ≪エレクトラ≫ サントリーホール 5月14日 (写真[12日]↓は、正面緑のドレスがエレクトラ[クリスティーン・ガーキー]、左へピンクがクリソテミス[シネイド・キャンベル=ウォレス]、その左クリテムネストラ[ハンナ・シュバルツ]、左端が…

[今日の絵] 5月前半

[今日の絵] 5月前半 1 Chassériau : Portrait of sister Aline 1835 シャセリオ―1819~56はフランスのロマン主義の画家、この絵は妹のアリーヌ13歳で、画家は16歳、彼の人物画は、体や顔の角度が絶妙で、それによって、当たる光が身体全体の美しい表情を作り…

[演劇] 大池容子『あたらしい朝』 うさスト

[演劇] 大池容子『あたらしい朝』 うさぎストライプ公演 駒場・アゴラ 5月9日 (写真↓は、旅行する若者たち、ほとんどが、うさストの俳優で、何度も見ている私は、親しみを感じる) 大池容子の作品はすべて、不条理劇の形式の中に美しい純愛がスーッと光る。こ…

今日のうた(144) 4月ぶん

今日のうた(144) 4月ぶん 雪山に春の夕焼滝をなす (飯田龍太1951『百戸の谿』、30歳の作者は、故郷の山梨県境川村で妻子と貧乏な暮らし、「ある夕方、夕焼けが春の雪山に映って輝いている、まるで滝のように見える」、「滝をなす」という結句がいい) 1 春の…

[演劇] トニー・クシュナー『エンジェルス・イン・アメリカ』

[演劇] ニー・クシュナー『エンジェルス・イン・アメリカ』 新国 4月25日26日 (写真↓は、エイズに苦しむ若者たち、下の右端がプライアー[岩永達也]) 上村聡史演出、二日間でⅠ部Ⅱ部合わせて合計7時間の大作。小田島創志の翻訳がよく、科白の言葉に耀きと深み…

折々の言葉(8) 3、4月ぶん

[折々の言葉] 3、4月ぶん 長い間たがいに口に出さずに胸に畳んでおける事柄がある。だが、ひとたび口に出されたが最後、それはたえず繰り返されるのだ。(コンスタン『アドルフ』) 3.3 人間の心、地震計のように美しいもの。(ブルトン『ナジャ』) 6 彼女が美…

[今日の絵] 4月後半

[今日の絵] 4月後半 17 Walter Granville-Smith:A cup of tea 1904 ウォルター・グランビル・スミス1870~1938はアメリカの画家、西洋はカップル社会だが、複数の女性が一緒にいる絵も多い、男性を含むよりは女性だけの方がくつろげるのか、この絵は、左の…

[今日の絵] 4月前半

[今日の絵] 4月前半 1 Pissaro : Spring Morning, Pontoise 1874 今日から、少し「春」の光景を、中央の樹の形がよく、全体の構図と色のバランスがとてもいい、ポントアーズはフランス中央部のヴァル=ドワーズ県にある、朝から人々は働いている 2 Monet : S…

[オペラ] R.シュトラウス≪平和の日≫

[オペラ] R.シュトラウス≪平和の日≫ 渋谷・オーチャドホール 4月8日 日本(アジア?)初演と聞いて驚いたが、その主な理由は、戦後、この作品はシュトラウスのナチス協力とみなされて、ほとんど上演されなかったかららしい。この作品は、ミュンヘン講和が成立…