2024-01-01から1年間の記事一覧
[今日の絵] 5月後半 12 Matthias Stom : Young Man Reading by Candlelight 1630 マティアス・ストーム1600-1650はオランダの画家、カラヴァッジオの影響を受けた。ロシアの心理学者ヴィゴツキーは「読書しているとき、人は自分と対話している」と述べた、「…
[今日のうた] 5月ぶん フラスコに指がうつりて涅槃なり (永田耕衣『加古・傲霜』1934、「涅槃」は釈迦入滅の春の季語、「ねはん」という響きが美しい、「フラスコに映った自分の指」が「涅槃」という奇抜な取り合わせが、いかにも耕衣らしい) 5.1 美しきネオ…
[演劇] 木下順二『オットーと呼ばれる日本人』 民藝 紀伊国屋サザン 5.17 (写真↓は、舞台中央が尾崎秀実、右へアグネス・スメドレー、ゾルゲ。そして本人たち、毛沢東、朱徳、スメドレーの貴重な画像も、延安か) 初演が1962年、本上演が4回目で、丹野郁弓演…
[演劇] シェイクスピア『ハムレットQ1』 渋谷PARCO劇場 5.14 (写真↓は、オフィーリア[飯豊まりえ]、ハムレット[吉田羊]、王クローディアス[吉田栄作]、そしてホレーシヨ[牧島輝]、吉田が演じるハムレットは美しい、飯豊まりえはオフィーリアの他にフォーテ…
[今日の絵] 5月前半 1 ヘンドリック・ステーンウェイク : アーヘンの市場広場 街には人がただ存在するのではなく、街で人は生きている、街の絵には必ずその生きざまが描かれ、画家がたくさん「街」を描くのは、そこにいる「人」を描きたいからだ、作者は17世…
[演劇] チェホフ『カモメ』 オスターマイアー演出 静岡SPAC 5.6 (写真[シャウビューネ上演2023も混じる]↓はニーナ[アリナ・シュトレーラー]とトリゴーリン[ヨアヒム・マイアーホッフ]、マイアーホッフはドイツの有名な作家らしいが、今回のトリゴーリンはい…
[演劇] キェシロフスキ『デカローグ1~4』 新国(小) 4.26/5.2 (写真は舞台↓、1988年のワルシャワの巨大な公営住宅に住む人々、舞台は、シンプルでスタイリスティッシュで美しい) 上村聡/小川絵梨子演出で、TV用映画10連作を舞台化した。キェシロフスキは『…
[今日のうた] 4月 行く春や鳥啼(な)き魚(うを)の目は涙 (芭蕉1689『おくの細道』、旧暦三月二七日、芭蕉は、深川から隅田川を船で千住まで行き、そこで見送った人々への別れの挨拶句、芭蕉の句には旅の挨拶句が多く、人と人との出会いと別れが重要な句興の場…
[今日の絵] 4月後半 18 Michelangelo : Sistine Chapel (detail) 人物画で顔が重要なのは、そこに人格が表れるから、つまり人間の内面が一番表れるのが顔、角度や向き、質感、影の付き方、視線の鑑賞者との衝突の有無など、すべて関係する。ミケランジェロの…
[折々の言葉] 3、4月ぶん 趣味とは、些細なことにおいて自分を知る技術に他ならない。人生の楽しさは些細なことから織り成されるのだから、そういうことに心を向けるのは、どうでもよいことではない。(ルソー『エミール』) 3.1 人生の目的は、他者とのよい関…
[折々の写真 3、4月] 3.6 『高慢と偏見』 1995、 BBC制作の6時間もの、ジェニファー・エイル[リジー]、 コリン・ファース[ダーシー]、クリスティン・ボナム=カーター[ビングレイ]、スザンナ・ハーカー[ジェイン]、いずれも人物とキャストがぴったり、『高慢…
[オペラ] ヴェルディ《運命の力》 Metライブ Movixさいたま 4.22 (写真は舞台↓、男女の恋愛と戦争との関係が、本作の通奏低音のような主題となっている、それがとてもよく分る演出だった) 《運命の力》はオペラとしては非常に深みのある作品だが、やや「問題…
[演劇] 井上ひさし 『夢の泪』 こまつ座 紀伊国屋サザンシアター 4.17 (舞台は↓、ミュージカルっぽく、喜劇仕立てだが、内容はド直球の史劇、東京裁判で戦犯とされた日本人被告の弁護人を務めることは、それだけで複雑な政治的圧力の渦巻く中心に置かれるこ…
[演劇] 平田オリザ 『S高原から』 駒場アゴラ 4.15 軽井沢?あたりにある高級サナトリウムの面会室、裕福な若者たちだが、みな自分の死を予感しており、見舞いの友人たちと一緒に明るくふざけ合っているが、孤独は深い↓ アゴラ閉館で「さよなら公演」の一つ…
[今日の絵 4月前半] 1 Bottichelli : 春 1482 「わが世の春」「青春」「春画」など、「春」は俳句の季語だけでなく、絵画でも普遍的主題、「春」は我々にとって何よりもまず「喜び」の季節だろう、女にとっても男にとっても 2 Albert-Emile Artigue : 春の花…
[演劇] 劇団道学先生 『東京の恋~さほどロマンチックでもなく~』 新宿シアタートップス 4月10日 初めて知る劇団だが、素晴らしい舞台だった。岸田國士「頼母しき求縁」1930、別役実「その人ではありません」1981の二作に、現代の深井邦彦「うそぶく」を組…
[展覧会] ホキ美術館「第5回 私の代表作」 ホキ美術館 4月4日 今回見る絵は、何度目かのものが多いのだが、それにしても、〈今、ここに存在する人間〉というものは、ただそれだけで、なぜこれほど美しいのだろう! 野田弘志 「崇高なるもの」OP.9 2023 これ…
[展覧会] 大吉原展 (東京藝大美術館) 3月29日 それにしても、吉原の巨大さには驚いた。375m×280mで10万平米、東京ドーム2個分強はあり、常時3000人以上の遊女がいたという。江戸は、パリもロンドンも及ばぬ世界一の大遊郭都市とは知っていたが、これほど巨…
[私の百人一首] その3 65 眉根よせて眠れる妻を見おろせり夢にてはせめて楽しくあれよ (上田三四二1964『雉』、妻が「眉を寄せて」眠っている、辛い夢を見ているのだろうか、「せめて夢くらいは楽しくあってほしい」と妻をいたわる) 66 あの夏の数かぎりなき…
[今日の絵] 3月後半 16 Sofonisba Anguissola : 本人を描く師のベルナディノ・カンピ1559 ソフォニスバ・アングイッソラ1532-1625はイタリアの女性画家、若くしてスペイン宮廷に招かれた、この絵は、先生が自分を描いているシーンを自分が描いた面白い絵、顔…
[演劇] マックス・フリッシュ『アンドーラ』 文学座 3月22日 (写真↓は舞台、「自分たちは加害者ではない」という自己欺瞞に逃げ込む「アンドーラ国」の人々、そして主人公である、教師と彼の息子、父は「息子は養子のユダヤ人」と嘘をついてきたが、実は愛人…
[今日の絵] 3月前半 1 de Vinci : ラ・ベル・フェロニエール1490 「フェロニエール」とは、額に着けられている金細工の飾り、ミラノのルドヴィコ・スフォルザ公の恋人であるルクレツィア・クリベリか、若々しくて生き生きとしており、とりわけ眼差しが美しい…
[オペラ] プーランク≪カルメル会修道女の対話≫ 新国 研修所公演 3.1 (写真は舞台、下は開幕、左からラ・フォルス侯爵、娘ブランシュ、その兄) これまで3回ほど観た舞台と、今回は大きく印象が違った。その理由は、ブランシュを前景に出して、コンスタンスが…
[私の百人一首] その2 34 楽しみは妻子(めこ)睦まじくうちつどひ頭(かしら)並べてものを食ふ時 (橘曙覧(あけみ)「独楽吟」、作者1812-68は幕末の歌人、国学者、平易な歌を詠んだ、この歌も家族愛がほほえましい) 35 君とわがたゞ身二つのかくれ里かくれはつ…
[哲学] 植村恒一郎:「人生よ、自由な遊びであれ ― 『ラモーの甥』から『推し、燃ゆ』まで」 (『ひとおもい』第5号、2023年7月) 序 ディドロ『ラモーの甥』は、彼の死後、たまたま原稿を読んだゲーテが感動し、自分でドイツ語に訳して出版したことによって日…
[折々の写真] 1、2月 1.3 カトリーヌ・ドヌーブ1943~、『シェルブールの雨傘』1964 ドヌーブは、本作とトリュフォー『終電車』1980が、代表作と思われるが、顔の美しさもさることながら、全身に溢れるエレガンスこそ彼女の魅力、4分間の動画 「シェルブール…
[折々の言葉] 1、2月ぶん 哲学(=知を愛すること)は、その名前を、一方では、愛から、つまりあまねき恍惚という原理から、他方では、その本来の目的である根源的な知から、得ている。(シェリング『自由論』) 1.1 愛というのは単純に肯定し合うことではなく、…
[今日の絵] 2月後半 16 ラファエロ : 聖家族1506 「聖家族」は西洋絵画の長く続く深い主題、聖母マリアと幼子のイエスは、母が子を生み人類は続いてゆくことを象徴するか、父のヨセフはいることもあり、いないこともあり、子どもの洗礼者ヨハネがいることも…
[哲学] 谷口一平:「マイナス内包」としての性自認の構成 『情況』2024冬号 大変に面白い優れた哲学論文。ただし、植村はその主張内容は誤っていると思うので、その部分のみを「反論」として以下に箇条書きにする。(引用数字は『情況』の頁数) (1) 「「性自…
[演劇] 寺山修司『不思議な国のエロス』 新国 2月19日 (写真↓は舞台) 寺山修司が1965年に、浅利慶太の要請で日生劇場のために、アリストパネス『女の平和』をミュージカル化したものらしい(日生劇場では上演されず、2014年にSpace早稲田で初演? 正確には知…