[折々の言葉]  11、12月ぶん

[折々の言葉] 11、12月ぶん 崇高においては、感性的な無限が真の無限によって克服される。一方、美においては、有限は無限と根源的な形で融和されている。・・ある像が美としてあるための、その限定が少なければ少ないほど、それは崇高へ近づくが、だからと…

今日のうた(152) 12月ぶん

今日のうた(152) 12月ぶん 透かしみるレントゲン写真の影のやうなつめたい月が窓にはりつく (睦月都『Dance with the invisibles』2023、胸の中を映すレントゲン写真は、黒い闇に骨が白く浮かびあがる、窓に重なって見える細い月をレントゲン写真に見立てる…

[オペラ] ジェイク・ヘギー≪デッドマン・ウォーキング≫ Metライブ

[オペラ] ジェイク・ヘギー ≪デッドマン・ウォーキング≫ Metライブ Movixさいたま 12月11日 Met上演2023年10月21日 (写真↓は舞台、死刑囚収容刑務所の暴力的雰囲気の中で立ち尽くす修道女ヘレン、そしてヘレンと愛で結ばれる死刑囚ジョセフ) 21世紀の今日、7…

[今日の絵 12月前半]

[今日の絵 12月前半] 1 森本草介 : 若いヌード(習作) 2009 ルネサンス以降の西洋画では女性のヌード絵は多数描かれているが、体勢はさまざまで、後ろ姿も多い、もっとも美しい女性画を描く一人である森本草介1937-2015にも多数の後ろ姿がある、滑らかさと曲…

[オペラ] ラモー≪レ・ボレアード≫ 寺神戸亮企画・指揮

[オペラ] ラモー≪レ・ボレアード≫ 寺神戸亮企画・指揮 北とぴあ 12月8日 (写真↑は舞台、右から3、4、8、12番目が4人のバロックダンサー[ケンプカ、ジャンカーキ、ドレ、松本]、中央2人が、寺神戸と演出のロマナ・アニエル) バロックダンスが全体の3割を占め…

今日のうた(151) 11月ぶん

今日のうた(151) 11月ぶん 郷里(ふるさと)に住む人の無く天の川 (宮田隆雄「朝日俳壇」10月29日、大串章選、「過疎化が進み住む人の居なくなった故郷。同郷の人たちはいま何処(どこ)で如何(どう)しているのだろう。「天の川」が効果的」と選評) 1 雲梯(うん…

[今日の絵]  11月後半

[今日の絵] 11月後半 19 Pieter Bruegel : 農民のダンス 1568 西洋絵画には広義の「社交」がたくさん描かれている、お祭り、舞踏会、各種祝宴、食事会、お茶会、学会など、人々が集まり出逢う機会は重要だった、西洋のカップル文化も、こうした社交の長い歴…

[今日の絵] 11月前半

[今日の絵] 11月前半 1 Cranach : Saint Elizabeth 1514 何かを「読む」とき、人は特有の美しい表情になる、他者の声に心を開くからだろう、古くは聖書を読む聖人から、近代では小説を読む女性まで、「読む人」は繰り返し絵に描かれた、この聖エリザベスが読…

[今日の絵] 10月後半

[今日の絵] 10月後半 17 Velázquez : Head of Child 1650 子どもが絵の主題になるのは、大人と違う美しさをもっているからだ。だが子供を描くのは、大人以上に難しい。おとなしく座っていないし、類型化されない「その子だけの美しさ」は、大人の美以上に捉…

今日のうた(150)  10月ぶん

今日のうた(150) 10月ぶん 太陽がうまく見えないこの部屋でわたしたちだけの神話を記す (奥山いずみ「東京新聞歌壇」10月1日、東直子選、「太陽の当たらない部屋と神話の組み合わせは、「古事記」の天岩戸を彷彿させる。暗い部屋での「わたしたち」の特別な…

[演劇] ムヌーシュキン 太陽劇団『金夢島』

[演劇] ムヌーシュキン 太陽劇団『金夢島』 東京芸術劇場 10月24日 ムヌーシュキンは、映画『モリエール』、『堤防の上の鼓手』2001新国の二つしか見たことないが、今回、83歳になる彼女の最新作を観られた。宮崎駿『君たちはどう生きるか』が、この世の終り…

[折々の言葉]  9.10月ぶん

[折々の言葉] 9.10月ぶん 運命というものは、気まぐれもので、ここかしこと跳び回りたがるのだから、私たちが自分一人だけは無関係で、幸せでいられるなんて、思ってはダメ。(エウリピデス『トロイアの女たち』)9.1 ほしいものを手に入れようと学問にいそ…

[美術展] 国立西洋美術館 「キュビズム展」

[美術展] キュビズム展 国立西洋美術館 10月18日 「キュビズム」というと狭義には「立方体」のように、平面でバッサリ切り通るピカソやブラックの絵を思い浮かべるが、広義の「キュビズム」には前史があり、量感のある肉体を描いたセザンヌ、プリミティブな…

[美術展] ホキ美術館 「瞳の奥にあるもの」

[美術展] ホキ美術館 「瞳の奥にあるもの」 10月16日 コロナ中は少し間隔が空いたこともあり、久しぶりに、千葉のホキ美術館へ。毎回、見るたびに、<人間という存在そのものの美しさ>に、魂が揺さぶられる。今回、初めて見る新作を6点ばかり挙げる。 ・五…

[オペラ] ヴェルディ《ドン・カルロ》 ロッテ・デ・ベア演出

[オペラ] ヴェルディ《ドン・カルロ》二期会 東京文化会館 10月14日 (写真↓上は第3幕、歌うエボリ公女[手前]、下は同、粛清の場面、後方に立っているのは囚人たち) ロッテ・デ・ベア演出の非常に斬新な舞台。2019年シュトゥットガルト歌劇場で初演されたもの…

[今日の絵] 10月前半

[今日の絵 10月前半] 1 John Singer Sargent : Portrait of Alice Brisbane Thursby 1897 男性より女性の人物画の方が多いのは、女性は美しいと画家が考えるからだろうか。この絵は、画家サージェントのパトロン的立場の女性を描いた可能性があるが、「凝視…

[折々の写真] 9・10月

[折々の写真 9・10月] 9.6『はちどり』2018 私が観た韓国映画の中では最高傑作。14歳のウニ(パク・ジフ)は家族愛に恵まれずグレかけたが、漢文塾の教師ヨンジ(キム・セビョク)と出会い救われる、ヨンジはソウル大院生のエリートだが学生運動で挫折した、彼女…

[演劇] モリエール『女学者たち』

[演劇] モリエール『女学者たち』 新ゆりシアター 10月7日 五戸真理枝演出が非常によかった。シモン・エーヌ演出のコメディ・フランセーズ版DVDで何度か見ているのだが、この作品の<面白さ>という点では、本上演が上ではないか。その理由の一つは、演出…

[演劇] 劇作家女子会『クレバス2020』 シアター風姿花伝

[演劇] 劇作家女子会『クレバス2020』 シアター風姿花伝 9月29日 (写真↓は舞台、コロナ禍で、東京では人間関係がもみくちゃに揺さぶられた、が主題) 文学座の稲葉賀恵演出。面白い群像劇だ。コロナ禍では、我々の日常生活で思いもしない色々な出来事が起きた…

[今日の絵] 9月後半

[今日の絵] 9月後半 13 デューラー : メランコリアⅠ 1514 「もの思いに耽る人」は絵画の大きな主題、人は思いに耽るとき、自分に閉じこもり自閉的になり、「瞑想している」ように見える、古来「メランコリー=憂鬱」という名で描かれたのは「もの思いに耽る…

今日のうた(149)  9月ぶん

今日のうた(149) 9月ぶん 涼しさは淋しさに似て夜(よ)の港 (石川星水女、「ようやく夜が涼しくなり、しのぎやすくなった、夜の港は気持ちがいい、でも、少し淋しくもある」、作者1918~?は「ホトトギス」系の俳人) 1 きみ嫁(ゆ)けり遠き一つの訃(ふ)に似た…

[演劇] チェホフ『三人姉妹』 自由劇場

[演劇] チェホフ『三人姉妹』 9月23日 浜松町・自由劇場 (写真↓は終幕、左からイリーナ[平体まひろ]、オーリガ[保坂知寿]、マーシャ[霧矢大夢]、保坂は劇団四季、霧矢は宝塚出身で、ともにスラリとした姿勢の立ち居振舞いが美しく、軽くワルツを踊る姿もうっ…

[文楽] 近松門左衛門『曽根崎心中』

[文楽] 近松門左衛門『曽根崎心中』 9月20日 国立劇場 劇場建て替えのため「さよなら公演」。人形遣いは、二人とも人間国宝の、吉田和生(お初)と吉田玉男(徳兵衛)。これまで、『曽根崎心中』は『心中天網島』に比べると、心中する必然性が弱いと感じていたが…

[オペラ] ヴェルディ《ルイザ・ミラー》 アーリドラーテ歌劇団

[オペラ] ヴェルディ《ルイザ・ミラー》 アーリドラーテ歌劇団 大田区民ホール 9月10日 アーリドラーテ歌劇団を初めて知ったが、東大出身の弁護士・山島達夫が創立したヴェルディのオペラのみを上演する団体。指揮もすべて山島。今回の舞台は、演出が木澤譲…

[今日の絵] 9月前半

[今日の絵] 9月前半 1 Andrea Mantegna:聖マルコ1448 マンテーニャ1431~1506はイタリア・ルネサンス期に、パドーヴァで活躍した画家、この絵は残された絵で一番若い時のもの、窓の欄干に左肘をついており、親指は顎を押さえている、「聖人」にしては意外な…

[演劇] 加藤拓也 『いつぞやは』

[演劇] 加藤拓也 『いつぞやは』 シアター・トラム 8月29日 (写真↓は大腸ガンで死期も近い一戸(平原テツ)と高校時代の同級生真奈美(鈴木杏)、下は手術で切り取った大腸を見せる一戸。急遽代役で主役の一戸を務めた平原は、一戸という一人の男を「必然性のあ…

[今日の絵] 8月後半

[今日の絵] 8月後半 16Paris Bordone :ヴェネツィアの恋人1527 「恋」を描いた絵は多いが、平安時代の和歌と同様、恋の難しさ辛さが主題になっている場合が多く、ラブラブの絵は少ない、パリス・ボルドーネ1500~1571はイタリア・ルネサンス期のヴェネチア派…

今日のうた(148) 8月ぶん

[今日のうた] 8月ぶん 七夕や夢が欲しいと書きました (土居健悟「東京新聞俳壇」7月30日、石田郷子選、作者は男性だが何歳くらいの人なのか、「夢が実現しない」ではなく「夢そのものが持てない」のは、たしかに現代の日本だが) 8.1 甚平着て太郎冠者めく物…

[折々の言葉]  7,8月ぶん

[折々の言葉] 7,8月ぶん キリスト者は真の神を知って、この世を愛さない。(パスカル『パンセ』) 7.3 人間はもはや芸術家ではない、[人間そのものが]芸術作品となったのである。(ニーチェ『悲劇の誕生』) 7 より気にかかることがあると、記憶の力はしばしば奪…

[折々の写真]7、8月

[折々の写真]7、8月 7.5ブレッソン『やさしい女』1969、ドミニク・サンダ17歳はこれが映画初登場、こんなに可愛いのに、氷のように冷たく暗い女、原作はドストエフスキーの中編小説で非常な傑作、彼の最初の妻がモデルとも言われる、動画が↓ 映画『やさしい…