[演劇] 野田秀樹『兎、波を走る』

[演劇] 野田秀樹『兎、波を走る』 東京芸術劇場 6月27日 (写真↓は舞台、たくさんの物語が時空をまたいで多重交錯しているので、全体が難解になった、写真上は、左から作家シャイロック・ホームズ、チェーホフ、中央が[不思議の国の]アリスの母、そして右が『…

今日のうた (146) 6月ぶん

今日のうた (146) 6月ぶん ひとつ脱いで後(うしろ)に負ひぬ衣更(ころもがへ) (芭蕉1688、「旅の最中で夏衣をもっていない、この衣を脱いで背中に背負い、衣更とするか」、「衣更」は、高校生の制服の転換のイメージがあったが、芭蕉の頃からあったのだ) 6.1 …

[演劇] 唐十郎『少女都市からの呼び声』

[演劇] 唐十郎『少女都市からの呼び声』 花園神社・紫テント 6月26日 (写真は舞台、おどろおどろしい肉体が乱舞する祝祭性、古代ギリシアのバッコス祭はたぶんこんな雰囲気なのだろう、奥山ばらばの踊りがいい) 新宿梁山泊、金守珍演出。花園神社の紫テント…

[今日の絵] 6月後半

[今日の絵] 6月後半 16 Victor Gabriel Gilbert : Elegance on a rainy day 都市は絵によく描かれる主題だが、雨の光景も多い、光の反射などで人も街も美しいからだろう、ヴィクトール・ジルベール1847~1933はフランスの画家、生涯をパリで過ごしパリの人々…

[折々の写真] 5,6月ぶん

[折々の写真] 5.5トリュフォー『突然炎のごとく』、主人公のカトリーヌ(ジャンヌ・モロー)が男たちをからかうために右側のセーヌ川に飛び込む。予定されたスタントマンが怖気づいてしまい、「じゃ、私がやるわよ!」とJM本人が飛び込んだ、「瞬間よ止まれ…

[折々の言葉]  5,6月ぶん

[折々の言葉] 5,6月ぶん 彼女はその恋を味わって悔いもなく、怖れもなく、悶えもなかった。(フロベール『ボヴァリー夫人』) 5.1 どうか私を想像してほしい。あなたが想像してくれなければ私は存在しないのである。(ナボコフ『ロリータ』) 5 [アルヌー夫人を…

[今日の絵] 6月前半

[今日の絵] 6月前半 1 Morisot : Young Lady Seated on a Bench, 1864 画家はただモデルの身体を描くのではなく、身体の姿勢や体勢を注意深く整える、体の向きや傾きだけでなく、何かを手にしていれば、それが体勢を創りもする、ベルト・モリソはマネの義妹…

[オペラ] ヴェルディ《リゴレット》

[オペラ] ヴェルディ《リゴレット》 新国立劇場 6月3日 (写真↓は舞台、ビルバオ歌劇場のも混じる、下は冒頭の舞踏会シーン) 10年前の、新国のクリーゲンブルグ演出版では現代の東京に場所を移していたが、このエミリオ・サージ演出版は伝統に沿った演出で、…

[演劇] 木ノ下歌舞伎『摂州合邦辻』

[演劇] 木ノ下歌舞伎『摂州合邦辻』 横浜KAAT 5月31日 (写真↓は舞台、糸井幸之介作曲の音楽はまるでミュージカルなのだが、ギリシア悲劇のコロスであるよりは、私には、皆が讃美歌を歌いながら踊っているように感じられ、涙が止まらなかった) 数年前に、木ノ…

[オペラ] ケルビーニ《メデア》

[オペラ] ケルビーニ《メデア》 日生劇場 5月27日 (写真↓は舞台、ゲネプロから、中央はクレオン王の王女グラウケー) 日本初演!こんな凄いオペラがあったのかと驚いた。ケルビーニはモーツァルトより4年後の生れだから、かなり古い。エウリピデスの『メディ…

[今日の絵] 5月後半

[今日の絵] 5月後半 15 children riding a dromedary (Arabian camel) 今日から「子どもたち」の絵を、まずイスタンブールの大宮殿モザイク博物館にある、6世紀のモザイク画、アラブのラクダに乗っている子どもたち、子どもは黒い鳥を抱えているし、どこかこ…

今日のうた(145) 5月ぶん

今日のうた(145) 5月ぶん 佐保姫が俳句の種を播いてゐる (森木道典「朝日俳壇」4月30日、大串章選、「「俳句の種」を播くが言い得て妙。さすがは春をつかさどる女神」と選者評) 5.1 野球部の声出し係風光る (今泉準一「東京新聞俳壇」4月30日、小澤實選、「…

[オペラ] R.シュトラウス ≪エレクトラ≫ サントリーH

[オペラ] R.シュトラウス ≪エレクトラ≫ サントリーホール 5月14日 (写真[12日]↓は、正面緑のドレスがエレクトラ[クリスティーン・ガーキー]、左へピンクがクリソテミス[シネイド・キャンベル=ウォレス]、その左クリテムネストラ[ハンナ・シュバルツ]、左端が…

[今日の絵] 5月前半

[今日の絵] 5月前半 1 Chassériau : Portrait of sister Aline 1835 シャセリオ―1819~56はフランスのロマン主義の画家、この絵は妹のアリーヌ13歳で、画家は16歳、彼の人物画は、体や顔の角度が絶妙で、それによって、当たる光が身体全体の美しい表情を作り…

[演劇] 大池容子『あたらしい朝』 うさスト

[演劇] 大池容子『あたらしい朝』 うさぎストライプ公演 駒場・アゴラ 5月9日 (写真↓は、旅行する若者たち、ほとんどが、うさストの俳優で、何度も見ている私は、親しみを感じる) 大池容子の作品はすべて、不条理劇の形式の中に美しい純愛がスーッと光る。こ…

今日のうた(144) 4月ぶん

今日のうた(144) 4月ぶん 雪山に春の夕焼滝をなす (飯田龍太1951『百戸の谿』、30歳の作者は、故郷の山梨県境川村で妻子と貧乏な暮らし、「ある夕方、夕焼けが春の雪山に映って輝いている、まるで滝のように見える」、「滝をなす」という結句がいい) 1 春の…

[演劇] トニー・クシュナー『エンジェルス・イン・アメリカ』

[演劇] ニー・クシュナー『エンジェルス・イン・アメリカ』 新国 4月25日26日 (写真↓は、エイズに苦しむ若者たち、下の右端がプライアー[岩永達也]) 上村聡史演出、二日間でⅠ部Ⅱ部合わせて合計7時間の大作。小田島創志の翻訳がよく、科白の言葉に耀きと深み…

折々の言葉(8) 3、4月ぶん

[折々の言葉] 3、4月ぶん 長い間たがいに口に出さずに胸に畳んでおける事柄がある。だが、ひとたび口に出されたが最後、それはたえず繰り返されるのだ。(コンスタン『アドルフ』) 3.3 人間の心、地震計のように美しいもの。(ブルトン『ナジャ』) 6 彼女が美…

[今日の絵] 4月後半

[今日の絵] 4月後半 17 Walter Granville-Smith:A cup of tea 1904 ウォルター・グランビル・スミス1870~1938はアメリカの画家、西洋はカップル社会だが、複数の女性が一緒にいる絵も多い、男性を含むよりは女性だけの方がくつろげるのか、この絵は、左の…

[今日の絵] 4月前半

[今日の絵] 4月前半 1 Pissaro : Spring Morning, Pontoise 1874 今日から、少し「春」の光景を、中央の樹の形がよく、全体の構図と色のバランスがとてもいい、ポントアーズはフランス中央部のヴァル=ドワーズ県にある、朝から人々は働いている 2 Monet : S…

[オペラ] R.シュトラウス≪平和の日≫

[オペラ] R.シュトラウス≪平和の日≫ 渋谷・オーチャドホール 4月8日 日本(アジア?)初演と聞いて驚いたが、その主な理由は、戦後、この作品はシュトラウスのナチス協力とみなされて、ほとんど上演されなかったかららしい。この作品は、ミュンヘン講和が成立…

[映画]  ケイコ 目を澄ませて

[映画] ケイコ 目を澄ませて 田端・Cinema Chupki 4月3日 (写真↓はケイコ[岸井ゆきの]とジムの会長[三浦友和]) 見ながら、私は、ロベール・ブレッソンの映画を思い出した。人間が真剣に生きている姿は、ただそれだけで、何と美しいのだろう! 映画という媒体…

[演劇] P.ハントケ『カスパー』 東京芸術劇場

[演劇] P.ハントケ『カスパー』 池袋・東京芸術劇場イースト 3月31日 (写真↓は、寛一郎演じるカスパー) ハントケの戯曲は、カスパー・ハウザーの史実とは違うし、この舞台も、ハントケの戯曲の忠実な上演ではない。バレー・ダンサー出身のウィル・タケット演…

[今日の絵] 3月後半

[今日の絵] 3月後半 17 Vermeer : Lady with Her Maidservant Holding a Letter 1667 「手紙」は絵に多く描かれる主題、その理由は、手紙を読んだり書いたりする人の表情に独特なものがあり、そこに他者との関係が如実に顕れるからだろう、画家はその表情を…

今日のうた(143)  3月ぶん

[今日のうた] 3月ぶん 「樹木葬がいいわ」とママは助手席でパラソルチョコを剥きながら言う (芍薬「東京新聞歌壇」2月26日、東直子選、「埋葬方法を問題にする「ママ」は高齢なのだろう。樹木葬とパラソルチョコを剥くというカジュアルな行為との取り合わせ…

[今日の絵] 3月前半

[今日の絵] 3月前半 1 Boldini : The Laundry 1874 アイロンや乾燥まで含めて、「洗濯」は女性の労働の中で大きな比重を占めているので、19世紀後半以降、繰り返し描かれた、この絵は、主に上流階級の人々を描いたボルディーニには珍しい絵、しかしいかいに…

[演劇] 宮本研『ブルーストッキングの女たち』

[演劇] 宮本研『ブルーストッキングの女たち』 新国立劇場 3月1日 (写真↑は、終幕、左から、虐殺される直前の大杉栄[安森尚]、野枝[伊海実紗]と、甘粕憲兵大尉[宮津侑生]) 新国立劇場演劇研修所第16期生終了公演、俳優は22歳~25歳くらいが中心、とても瑞…

[オペラ] プッチーニ≪トゥーランドット≫ 二期会

[オペラ] プッチーニ≪トゥーランドット≫ 二期会 文化会館 2月26日 (写真↓は舞台、レーザー光線?が交錯する舞台が美しい、下の写真の中央の金色円形の中がトゥーランドット姫、その下がカラフ王子) ダニエル・クレーマー演出で、音楽は、アルファーノ版では…

今日のうた(142) 2月ぶん

[今日のうた] 2月ぶん 山眠る命あるもの眠らしめ (大谷和三「朝日俳壇」1月29日、大串章選、「「眠らしめ」が大らかで佳い。冬になるとさまざまな生き物が冬眠する」と選者評) 1 カーテンの波しずかなり冬日和 (山田知明「東京新聞俳壇」1月29日、石田郷子…

折々の言葉(7)  1、2月ぶん

[折々の言葉] 1月2月ぶん いつも自分たちのことしか考えていない二人か三人の恋人や友達のちっぽけな世界から、何か教わることがあるのかね? いえ、人類を愛することを教わります。大きな社会では人間を憎むことしか教わりませんから。(ルソー『新エロイー…