「恋愛イデオロギー」

新規開講の「キャリア科目」第一回終了。110人ほどが聴講。今の若者は、決められた「人生の型」を与えられておらず、「自分の人生をゼロから自分で設計しなければならない」という話から始める。

半年かけて収集したデータ、統計表やグラフが威力を発揮。「国民生活白書」「男女共同参画白書」や「家族論の各種統計」などを使う。女子学生だから「結婚」の話は興味津津だ。大卒女性の平均初婚年齢が28歳を越えた、未婚率の大幅増加、日本の非嫡出子出産が先進国で極端に低い等々、数字の意味を考える。

恋愛と見合いの統計分析は面白い。「見合い結婚」と答えた人も、見合いはきっかけにすぎず、そこから発展した「恋愛にもとづく結婚」なのだと77%が回答。「恋愛」にこだわっているのだ。出会いの場所と結婚までの年数の統計によれば、「学校の友達」「職場の同僚」「友人の友人」等と並ぶ最後に「見合い」という項目がある。これだけが他の項目より年齢がずっと高く、年齢グラフの離れた位置に孤立しており、交際期間もずっと短い。女は二十代の最後、男は三十代の前半。要するに、恋愛できなかった人があきらめて見合いすることが、統計から歴然。統計がこんなに面白いとはね。哲学の授業でも使ってみたい。

ところで、これほど「恋愛イデオロギー」が支配的で、皆が恋愛を希求しているとしても、十人が十人フランス映画のような恋愛をするとも思えない。美男美女は一部だし、人は誰でも恋愛できるというのは幻想で、性格的に恋愛に向かない人も三割(?)はいるのではないか云々。話がここに及ぶと、学生の表情は、明るく笑う、苦笑い、深刻な暗い顔になる等、さまざま。こちらも色々と勉強になった。