英語で読む短歌(1)

[短歌] リービ英雄『英語でよむ万葉集』を読んだ。中から、人麻呂の歌を二首。



あみの浦に 船乗りすらむ をとめらが 玉藻のすそに 潮満つらむか


On Ami Bay, the girls must now
be riding in their boats.
Does the tide rise
to touch the trains
of their beautiful robes?




淡海の海 夕波千鳥 汝が鳴けば 心もしのに いにしへ思ほゆ


Plover skimming evening waves
on the Omi Sea,
when you cry
so my heart trails
pliantly
down to the past.


[鑑賞] 第一首。「あみのうら」「ふなのり」「たまも」、二つの「らむ」。母音の響きの美しさは比類がない。「らむ」は現代日本語の「だろうか」と訳しても、その柔らかな響きは失われる。初めの「らむ」は強めの推量must beに、次の「らむ」は疑問文に訳している。凛とした引き締まった英語なのだろう。脚韻もある。とはいえ、さすがに日本語の母音の美しさは英語にならない。

第二首。漢詩風の「夕波千鳥」を冒頭の一行にうまくまとめている。下の句、「しのに」(=しおれるように)をpliantly(=しなやかに)と訳したのは、なるほどと思う。