バーデン市立劇場『魔笛』

charis2005-09-19

[オペラ] バーデン市立劇場公演『魔笛』 市川市文化会館


「どんな田舎芝居でも、フィガロを見ないよりは、見る方がずっとまし」と言った人がいるが(B.ウィリアムズ)、『魔笛』だってそうだ。バーデンはウィーン郊外の、モーツァルトも関係のある町だから、本場からの来日だ。けっして田舎芝居ではない。が、少し田舎風なのは、場の交替がもたついてスピード感がないことだ。真っ暗な舞台でこんなにゴソゴソやっているのも珍しい。(写真は、パパゲーノ役のM.ハヴリチェック)


モスクワ室内歌劇場の記憶がまだ鮮明なせいもあるが、どうも人物の動きが鈍いように思う。第2幕23場、パパゲーノがバケツのような杯でワインを飲みまくり、ぐでんぐでんに酔って座り込む。そりゃないでしょう。ここは魔笛全体で三回しかないグロッケンシュピールが鳴るシーンなんだよ。パパゲーナが老婆から少女に変わる奇跡が起きるんだよ。こちらも固唾を飲んで見てるんだから、ぼーっと座り込んでないで、軽やかに踊ってほしいよ。


今回、気がついたのだが、タミーノは「王子Prinz」と呼ばれるが、パミーナは「王女」や「姫」とは呼ばれていない。面と向かっては「お嬢さんMaedchen」と呼ばれ、三人称的には「娘Tochter」と呼ばれる。第1幕17場のパパゲーノは「Mein Kind(字幕は「お嬢ちゃん」)」と馴れ馴れしく呼んでるじゃないか。「夜の女王」の娘なのに「王女」と呼ばれないのはなぜだろう。面白かったのは、最後「パ、パ、パ・・・」に続くパパゲーノとパパゲーナの結婚のシーン。小さな子供たちがぞろぞろ出てくる代わりに(海外公演では子供は無理だろう)、パパゲーナが鳥の巣を作って卵がたくさん出てくる。なるほど、二人は鳥に戻るのだ。