新国立劇場『ばらの騎士』

charis2007-06-17

[オペラ] R.シュトラウスばらの騎士』 新国立劇場


(写真右は、元帥夫人(ニールント) とオクタヴィアン(ツィトコワ)。写真下は、練習場。左より二人目から右へ、ローゼ(オックス男爵)、ツィトコワ、ニールント。その下は、第二幕の美しい舞台。)


演出は、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニ出身のジョナサン・ミラー、指揮はペーター・シュナイダー。落ち着いたセンスのよい舞台が、際立って美しい。衣装も舞台装置も格調があって、『ばらの騎士』はやはりこのような正統的演出が似合う作品だと思う。


(下の写真は、上から順に、幕開けのベッドシーン。オクタヴィアンと元帥夫人。その下は、第一幕、客人が押しかける元帥夫人の寝室。一番下は、女中のマリアンデルに変装したオクタヴィアンに言い寄るオックス男爵。男装しても女装しても、ツィトコワは美しい。)



歌手では、フィンランド出身のソプラノ、カミッラ・ニールントの元帥夫人は、凛とした気品に溢れ、しかもきわめてデリケートな心の揺れを表現して、素晴しい出来ばえ。17歳の青年伯爵オクタヴィアンを歌うエレーナ・ツィトコワは、ロシア出身の、新進メゾソプラノ。4年前の新国立劇場フィガロ』のケルビーノで、その艶のある声が強く印象に残ったが、今回も声量が豊かで、しかも芯と張りがある。美少年を演じさせたらこの人ほど美しい女性歌手はいないだろう。どーしょーもないHなオヤジのオックス男爵の性欲的な歌には、いつも、とても美しい軽快なワルツが寄り添う。ワルツをこんなに皮肉に使ってみせるシュトラウスは凄い。


ばらの騎士』は、リヒャルト・シュトラウス特有のあの繊細で"とろけるような"美しい旋律をオケが奏でながら、歌手の歌に寄り添う。それに加えて、今回よく分かったのは、元帥夫人やゾフィーのソプラノと、オクタヴィアンのメゾソプラノとで、声質が異なるハーモニーのもつ特有の美しさだ。第三幕終わりの三重唱は、本当に比類のない静かな美しさをたたえていると思う。(下記でその三重唱の動画が見れます。)


下記の新国立劇場HPの中ほどの「舞台の様子 動画2分程度」という項をクリックすると、動画が出ます。
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/10000059.html