シュトラウス『サロメ』

charis2016-03-12

[オペラ] R.シュトラウス 『サロメ』 新国立劇場 2016.3.12


(写真右はポスター、一緒に写っているのは勤務校の卒業生、元気で活躍しています、写真下は、サロメと洗礼者ヨハネ、踊るサロメ)

エファーディング演出のこの『サロメ』は、新国では人気演目で、これが6回目の上演だが、私は初見。オーソドックスな演出で、原作のイメージがよく伝わってくる。イエス出現の少し前、洗礼者ヨハネをめぐるユダヤ教徒の反発や、イエスを待ちわびるナザレ人との対立など、ぴりぴりした感じがいい。2011年のコンヴィチュニー演出『サロメ』は、現代的演出でとても面白かったのだが、ヨハネだけでなく全員が地下室に閉じ込められているという「閉塞感」を前面に出す演出で、終幕は、ヨハネサロメも死なずに、二人は結ばれて逃亡するという怪演出だった。その点、このエファーディング版は、サロメを伝えるマルコ福音書オスカー・ワイルドの原作に近い。


今回、あらためて気が付いたのだが、『サロメ』は、『ばらの騎士』以降の作品とは違って、音楽がかなり前衛的だということだ。荒々しい不協和音など、1906年5月グラーツ初演に居合わせたマーラープッチーニシェーンベルク、ツェムリンスキー、ベルクなどに甚大な衝撃を与え、「現代音楽」の誕生と目される事件だったのも分かるような気がする。『ばらの騎士』の、あのとろけるように甘美な美しい音楽は、『サロメ』では片鱗を感じさせるだけで、全体の印象はずいぶん違う。


歌手は、サロメを歌ったカミッラ・ニールントと王妃を歌ったハンナ・シュヴァルツがとても良かった。サロメの踊りと声の迫力には、本当に圧倒された。洗礼者ヨハネサロメも、日本人歌手には難しい役だと思う。全体にワーグナー歌手が多いのも、『サロメ』は大音響のオケと渡り合わなければならないからだろう。下の写真は、前回のものだが、ヘロデと渡り合うサロメの凛とした姿が美しい。

下記に1分半の短い映像があります。
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/150109_006151.html