科学博物館『ラスコー展』

charis2017-01-05

[展覧会] ラスコー展  上野・国立科学博物館


(写真右は、骨から復元したクロマニョン人の身体模型、2万年前くらいだから、現代人とほとんど変わらない、下は壁画の動物)

とりわけ面白かったのは、有名な「井戸状の空間」だ↓。鳥の頭をした男性が倒れており、その下には鳥の彫刻がある槍のような道具が立てられている。男性を倒したと見られる右側のバイソンは、槍が突き刺さって、はらわたがはみ出している。男性の左側には、尻尾を上げているサイが描かれている。相当に複雑な「物語」がこの絵に描かれているわけで、クロマ二ョン人は高度な言語能力をもっていたはずである。

絵ではないが、石器と石製のランプにも感銘を受けた↓。ハイデルベルク人(60〜30万年前)や、ネアンデルタール人(30〜4万年前)の石器が大きくて粗いのに対して、クロマニョン人の石器(写真は2万5000年〜2万年前)はずっと小さくて、洗練された美しい形をしている。まったく文化が違うという感じだ。また、ラスコー遺跡の「井戸状の空間」にあったランプは赤色砂岩製で、この中で獣油を燃やした。この「井戸状の空間」は特別な祭祀的な意味を持つ空間だった可能性もある。このランプはレプリカではなく実物なので、ガラス箱に顔をすりつけるようにして見入ってしまった。この博物館にデカルトの頭蓋骨が来たときもそうだったが、実物は本当に感動的だ。思わず自分の手で触れてみたくなる。ネアンデルタール人関係の展示が石器以外ほとんどなかったのは残念。S.ミズン『歌うネアンデルタール』を読んで以来、強い関心を持っているのだが、我々のDNAの1.5%がネアンデルタール人由来のものという今回の展示の記事には安心した。戦いに強い現生人類が平和なネアンデルタール人を絶滅させたという単純な話でもないようだから。