シュニッツラー『緑のオウム亭』

charis2017-03-04

[演劇] シュニッツラー『緑のオウム亭』 雷ストレンジャーズ公演 下北沢、小劇場B1


(写真右はポスター、写真下は、2015年ドイツの町ガイゼンハイムの高校生による上演)

オーストリアの作家シュニッツラーが1899年に書いた作品。ドイツ語圏ではよく上演されるようだ。日本でも、近代古典劇を上演する新しい劇団「雷ストレンジャーズ」の上演で見ることができた。1789年のフランス革命のとき、パリの怪しげな地下の居酒屋を舞台にした物語。非常によくできた作品で、面白い。外の世界では、バスティーユ襲撃が行われ、貴族が殺されたり大混乱が起こっているのだが、その居酒屋の中では、革命派の市民たちとなじみ客の大貴族たちが、「虚構」の演劇に打ち興じている。客を楽しませる芝居だと思っていたのが、実は現実だったり、また、演技なのにそれを現実と「誤解した」者による反作用があったりして、皆が混乱していくうちに、楽しんで見物していた大貴族の公爵が殺されて、酒場の中でも実際に革命が「成就」してしまう。


もと劇団座長が経営する居酒屋「緑のオウム亭」には、もと座員がよく飲みに来て即興劇が行われ、それが評判になって貴族もよく来る店になった。しかし、もと座員ではなく実際に殺人を犯した浮浪者など、いかがわしい人物もいろいろやって来て、実際の犯罪を「リアルに」演じてみせるので、それがまた面白いのだ。もと座員の一番上手な役者は、前日結婚したやはり役者の妻の浮気に怒って、その情人の公爵を殺す「芝居」を真に迫った演技でしてみせる。ところがオウム亭の亭主は、客の一人からのタレこみ情報をもとに、役者の妻は本当に公爵と浮気をしているのだと役者に教えて、役者は呆然となったところに、その公爵当人が酒場へ戻ってくる。カッとした役者は、発作的にその公爵を殺す。演技ではなく本当の殺人が起こってしまったのだが、見物していた別の侯爵夫人は、「まあ、本物の公爵が本当に殺されるなんて、めったに見られないわよ」と、芝居を楽しんでいるかのように反応して、現実感がなくなっている。客の一人の警部は、外で革命が起きたことがまだ呑み込めず、「お前たちを逮捕する」などと威嚇して、革命派の客たちに嘲笑される。小さな居酒屋という閉ざされた空間で、交錯する情報に踊らされると、芝居と現実の区別がつかなくなってしまうのだ。革命期の混乱においては、自分たちが何をやっているのか分からないという、このような現実感覚の喪失が実際に起こったのだろう。


ストレンジャーズの上演は非常にうまい。下北沢の区役所地下にある小劇場B1は小さくて、パイプ椅子の観客席にいる我々は、まるでその居酒屋の客のような感じだった。雷ストレンジャーズは、昨年12月のイプセンを観て以来これが二度目だが、来年はストリンドベリの「父」を上演するという。ぜひ観たいものだ。