ITCL公演『Twelfth Night』

charis2017-05-25

[演劇] ITCL公演『十二夜東京女子大・講堂 5月25日


(写真右は、双子の兄妹のセバスチャンとヴァイオラ、写真下は左からトービー、マルヴォーリオ、アンドルー、そして道化フェステを間に挟む双子の兄妹、役者みずからトランペットを吹いたりバイオリンを弾く)


好都合なことに、東京女子大の非常勤の講義を終えてすぐ、大学講堂で行われたInternational Theatre Company Londonの『Twelfth Night』を観ることができた。この劇団は、主宰のP.ステッビングズがポーランドの演出家グロトフスキーから学んだグロトフスキー・メソッドによる上演であるという。リズムのある声が、ときに重唱・合唱を交え、ばねのような身体の動きを特徴としている。科白は原作より少なくなっているが、しゃべりが速すぎないので、ブランク・ヴァースが美しく響く。喜劇ではあるが、ヴァイオラやマルヴォーリオの「悲しみ」を強調する、味わいのある舞台だった。たとえば、通常は道化が歌う底なしに暗い歌をヴァイオラが歌い、終幕のフェステの歌はマルヴォーリオに向けて歌う。伯爵令嬢オリヴィアを黒人女性が演じたり、女中マライアを男性が演じたり、キャラクターそのものに異化効果があり、科白が少ないぶん、切れのよい身体パフォーマンスで面白おかしい仕草で笑わせるのがうまい。役者の表情が実に豊かなのだ。グロトフスキー・メソッドが「持たざる演劇」なので、舞台装置はほとんどないが、穴のあいた一枚の板を「窓」と壁に見立てて縦横に使い、これが実に効果的。マルヴォーリオが閉じ込められる「地下室」も、これで十分表現できるわけだ。役者全員の重唱・合唱で始まる開幕は、一瞬、教会のアカペラを聴いているような錯覚を覚えたが、終幕もフェステの歌で終るわけで、『十二夜』は途中にも歌や音楽が多い。リズム感のある科白が重唱・合唱に移行し、身体パフォーマンスと混じるというのは、全体がうまく「様式化」していることでもある。能や歌舞伎とはまた違った様式化だが、シェイクスピアもやはり何らかの様式にのせられた演劇であることを強く感じさせる。ただ、T.ナンの映画版のような、しみじみと美しいロマンティック・コメディーの側面は弱く、どちらかといえば笑劇の要素が強い。俳優は一人一人が非常にうまい。ヴァイオラ役のレイチェル・ミドルはボーイッシュな顔立ちでヴァイオラにぴったりだし、マリヴォーリオ役のガレス・フォードレッドは劇団の中心役者と思われる名優だ。初演された17世紀初頭には、『十二夜』は「マルヴォーリオいじめ」が非常に受けて、ピューリタンに対する反感が表現されていると言われているが、この上演はそれに通じるところがある。下記の写真は↓、アンドルー、トービー、そしてフェステ。


動画はみつからなかったが、下記に演出P.ステッビングズのプログラムノートがある。
http://stageplay.jp/c/performances/performances/new/#Gareth-Fordred