NTL『お気に召すまま』

charis2017-10-17

[演劇] NTライブ シェイクスピア『お気に召すまま』 TOHOシネマズ日本橋 10月17日


(写真右は、左がシーリア(パッツィー・フェラン)、右がロザリンド(ロザリー・クレイグ)、写真下は、シュールな「アーデンの森」、そして第一幕、レスリングの試合で勝ってしまうオーランド、場所が現代の会社のオフィスというのがいい)


ロンドンのNational Theatreが2015年に上演した『お気に召すまま』を映画に撮影したもの。とにかく、全体が楽しくて、シュールで、生き生きしていて、とても良かった。一番良かったのは、完全に少年化したロザリンドで、ピチピチと水面を跳ねる魚のように元気だ。普通は、「いやだ、私、赤くなってる。こんな男の格好してるからって心までズボンはいてると思うの?あとちょっとでもじらしたら、女の本性丸出しにして南太平洋みたいに荒れ狂うからね」(第3幕)とシーリアに懇願するように、ロザリンドは、少年に化けてはいても、やはりお嬢様で、女性性を感じさせる役なのだが、クレイグ演じるこのロザリンドは、女性性を最小に切り詰めて、ほとんど少年に成り切っているところが魅力。オーランド(ジョー・バニスター)も若々しくていい(写真、中央↓)。ちょっと線が細いけれど、こういう好青年がぴったりだ。女子高校生のようなシーリアの可愛いらしさも格別。(写真、端っこ↓)


冒頭のオフィスの机や椅子がそのまま吊り上ってシュールな「アーデンの森」になるのも素晴らしいが、演出のさまざまな工夫が感じられる。たとえば、科白が、他の役者たちのハミングのような、歌うような声の中に埋め込まれており、誰かの発言に対して、他の役者が揃って掛け声を返したりするので、あたかも音楽の伴奏のような快適な感じになっている。通常ではアミアンズが歌うのが目立つのだが、この舞台では、全員がハミングを歌っているような感じだ。人の動きのテンポが速くて、快適。誰かが引っ込むと同時に、もう奥から役者が走り出て、次のシーンが始まっている。気難しい世捨て人で「ふさぎ屋」のジェイクイズを、やたら明るくて、はしゃぎ屋のオッサンにキャラ変えしたのもいい。ジェイクイズは重要な役なので、彼が変ると全体の雰囲気が変る。羊飼いの娘フィービーも、通常は、田舎くさい非モテ娘なのだが、それがロザリンドやシーリアに負けない美女になっている。フィービーは少年と見間違えたロザリンドに恋するのだから、都会的な美しい娘であってもいいわけだ。(写真↓)

科白は原作をカットした部分もあるようだが、リズムがよくなって、流れがより快適になったような気がする。とにかく、若者の愛を寿ぐ祝祭劇なのだから、全体が若々しいのがとてもいい。演出のPolly Findlayも若い!(写真左↓)、しかもdirector of the National Theatre。

下記に、40秒ほどですが、とても楽しい動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=_tz5YvTqSb0