RoMT.  シェイクスピア『十二夜』

[演劇]  シェイクスピア十二夜』 劇団RoMT. 横浜・若葉町ウォーフ 1月31日

 (写真下は、冒頭、船長に男装を頼む難破したヴァイオラ、その下は、トービーと道化フェステ、フェステが女性なのもいい)

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客席44の小部屋だが、熱のこもった『十二夜』だった。さまざまな場面で演出の工夫が感じ取れた。『十二夜』は、主筋の切なく美しいしみじみとした恋と、副筋のドタバタ喜劇とを、どう平行させ、どう接合するかがとても難しい。トレヴァー・ナンの映画版が、切なく美しい恋をうまく表現できたのは例外的な傑作で、ほとんどの舞台は、どうしてもファース(=笑劇)中心になる。そのポイントは、激しい感情と誇張した身体表現を、どこでぎりぎり寸止めにして、ドタバタの滑稽さに陥らないようにするかにある。マルヴォーリオやサーアンドルー関係を限りなくドタバタにし、ヴァイオラは滑稽にしないのは、どの上演も同じで、それでよいのだが、問題はオリヴィアである。彼女は「私もマルヴォーリオと同じでmadよ」と言うことから分るように、男装のヴァイオラに恋するあの舞い上がりぶりは滑稽なのだが、でも、観客の我々は、「こんな美少年なら恋しちゃうよね、分かる分かる!」と共感し、彼女に感情移入するのでなければならない。そのバランスがとても難しい。昨夏のオックスフォード大学学生公演(OUDS)は、ヴァイオラ、オリヴィア、マライアを女子高校生のように可愛らしく、60年代ファッションに仕立てていたので、成功していた。しかし今回のオリヴィアは、少女ではなく成熟した大人の女性。(下記は↓、OUDS公演の私のブログ記事、その下の今回の写真は、左からオリヴィア、マライア、ヴァイオラ、少女マライアが可愛い!)

https://charis.hatenadiary.com/entry/20180805

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今回の舞台で、演出が工夫し、感情と身体表現を強調した成功箇所は幾つもある。まず第1幕、ヴァイオラがオリヴィア邸を訪問したとき、ヴェールを被ったマライアがあわててエプロンを捲し上げ、膝を開いて座ってしまう(普通の上演は、マライアはもっと冷静)。第2幕、ヴァイオラがオーシーノ公爵に「女の恋」を激しく訴え、感動のあまりヴァイオラとオーシーノがしっかり抱き合う(これは初めて見た)。第3幕、ヴァイオラが、「あの人、今、私をセバスチャンと呼んだ、まさか、お兄様は生きているのだわ、ああ、この想像よ、当たってね!」と叫んで走り出すシーン等々。でも、全体にオリヴィアはちょっと滑稽にし過ぎたように思った。あと、終幕のヴァイオラの最重要シーン、「お兄様、私を抱きしめるのはちょっと待って、まもなく時と所と運命が、声を一つにして叫ぶでしょう。そうよ、私がヴァイオラよ!」のところ、そさくさとやらず、ゆっくりとやってほしかった。今回は、二人が駆け寄って、すぐに抱き合ってしまったので、この科白がちゃんと言われなかったではないか!それから第3幕、オリヴィアに「To bed !」と言われてマルヴォーリオが舞い上がるシーン。ケンブリッジ・高校生版テクストでは、ここは「amorous invitation(=性愛の誘い)」と註が付いているくらいで、もっと大げさにやらないと、知らない人には分からない。それでも、今回の舞台は、熱演がとても良かった。大いに楽しめた。写真下は、マルヴォーリオ、サーアンドルー、フェビアンなども)

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