今日の絵(10) 6月前半

 

[今日の絵] 6月前半

1 Hals : Two Boys Singing, 1625

「子ども」は絵画の重要な主題、大人とはまた違う存在感がある、今日からは子どもの絵を少し、フランス・ハルスの絵は表情がとても生き生きしている、これは兄弟だろう、伴奏を付けて一緒に歌う前に、歌を兄が弟に教えている、「ちょっと待って、そこは・・」と

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2 Vasily Perov : Troika. Apprentice Workmen Carrying Water, 1866

子どもがみな学校で学ぶのは20世紀になってからで、19世紀の絵には働く子どもの姿が多い、ヴァシリー・ペロフ1834~82はロシアの画家、村人たちの生活を描き、働く子どもたちもたくさん描いた、この絵のタイトルは「三頭だてのソリ、水を運ぶ見習い中の労働者たち」

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3 Degas : The Ballet Class, 1874

ドガは踊り子をたくさん描いたが、これはバレエを習う少女たち、老先生が棒を持って怖い顔で指示している、仲間のレッスンを観ている少女たちは、お行儀が悪いようだ、まだ注意を集中できない年頃か

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4 Victor Vasnetsov : At a Bookseller, 1876

ヴィクトル・ヴァスネツォフ1848~1926はロシアの画家、神話、宗教、歴史を画材の絵を多く描いた、この絵はタイトルは一応「本屋」だが、新聞やプロマイドや文具、雑貨などを売る村の小さな店か、子どもは大人とは関心が違うので見ているものが違う、もちろん見るだけで買わない

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5 Nikolay Bogdanov-Belsky : Virtuoso, 1891

ボグダノフ=ベリスキー1868~1945はロシア出身の画家、農村で生きる人々をたくさん描いた、この絵は「ヴィルトーゾ=名人」というタイトルがいい、ちょっと楽器が弾ける男の子が「演奏」して見せているが、子どもたちがみな彼を「名人」と認めているわけでもないようだ

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6 Tetyana Yablonska : In the Forest Glade, 1959

昨日の絵もそうだが、ロシアの絵では、森の中で遊ぶ子どもがよく描かれ、子どもの服の色が森に映えている、タチアナ・ヤブロンスカヤ1917~2005はウクライナの画家、この「森の空き地」は明るく光に溢れている、子どもたちは草むらに何か発見したようだ

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7 Otto Mueller : Drei Mädchen Im Profil, 1918

「三人の少女」だが、ハイティーンだろう、ちょっと不良っぽい中に、あどけなさもあり、少女に固有の“野生のエネルギー”がよく表現されている、日本でも一時期コギャルがもてはやされたが、どこか似ている、オットー・ミュラー1874~1930はドイツ表現主義の画家

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 8 Pissarro : Bathing Goose Maidens, 1903

「ガチョウ飼いの少女の水浴び」というタイトルだが、二人の少女はあくまで仕事としてガチョウの群れの番をしている、そして自分たちもついでに水浴びをしている、フランスの画家カミーユピサロ1830~1903は、街や郊外をたくさん描いた

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9 Elin Danielson=Gambodi : title unknown

エリン・ダニエルソン=ガンボージ1861~1919はフィンランド出身の女性画家、写実主義のスタイルで、家族や子供、友人たちの生活を描いた、夫はイタリア人画家なので、この絵は夫婦が活動したイタリアのアンティニャーノで描かれたのかもしれない、木漏れ日の光が明るい

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10 Joaquin Sorolla : Running along the beach, 1908

ホアキン・ソローリャ1863~1923はスペインの画家、一緒に遊んでいる子どもたちの絵がたくさんある、スペインの海岸の明るい海と太陽光のもとで、子どもたちはいつも走ったり泳いだりしており、とても活動的だ

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11 Cezanne : Self-Portrait, 1895

自画像は顔や体をアップで描くので、絵全体の空間を分割する構図の微妙な作りが必要だ、色の差異だけでなく、顔の向きや視線の力が重要で、セザンヌの自画像の多くは頭を左に回し、背景はみな異なり、表情も微妙に違う、彼は数多の人物を描いたが自画像は特にいい

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12 Matisse : Self-Portrait in Shirtsleeves, 1900

アンリ・マティス1869~1954はフランスの画家、ピカソデュシャンとともに20世紀絵画に大きな影響を与えた人、大胆な色彩を用いる「野獣派」と呼ばれたが、画風は生涯でかなり変わる、この「ワイシャツ姿の自画像」は初期の作品だが、「野獣派」と言われればそんな気もする

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13 Gabriele Münter : Self-Portrait,1908

ガブリエレ・ミュンター1877~1962はドイツで活躍した表現主義の女性画家、ヴァシリー・カンディンスキーのパートナーでもあった、この絵は、原色に近い明るい色彩を使うようになる以前のもの、少ない筆致ながら人物の内面まで深く捉えられている

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14 Serevriakova : 髪をすく自画像、1909

セレブリャコワ1884~1967はロシア出身で1924年にパリに移住、この自画像は結婚の一年前、彼女の自画像の多くは何かをしている、彼女は今、いつもは絵筆を握るそのたくましい腕で、髪と櫛をぎゅっと握りしめ、髪を梳かしている、自由でのびのびとして、とても美しい

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15関根正二 : 自画像、1918

関根正二1899~1919は二十歳で夭折。この自画像は19歳、そもそも芸術としての自画像の使命は、「今、ここ」に、このように存在する人間の現存在を、肯定し、祝福しつつ、未来の時間のために再現することにある。その意味で、これは自画像のこのうえない傑作だ、後にいるように見えるのはたぶん彼女、とすればこの自画像は、この世との別れ、彼女との別れの挨拶でもあるのか

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16 Modigliani : Self-Portrait, 1919

モディリアーニ1884~1920、35歳の自画像だが、当時の写真ではもっとやつれて見えるそうだ、すでに健康を害していたのかもしれない、この絵を自己を理想化して描いたものという見方もあるが、表情にはどこか諦観のようなものが感じられる

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17 Rene Magritte : The magician (Self-portrait with four arms), 1952

マグリット1889~1967はベルギー出身のシュールリアリズムの画家、「魔術師(四本の手をもつ自画像)」というタイトルは、本人のものかどうかは分からないが、彼は自分の絵に不思議な題名を付ける人でもあった、「絵は目に見える思考である」とも言っている

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