今日の絵(14) 8月

今日の絵(14) 8月ぶん

1 中山忠彦 : モラヴィアの装い、1975

中山1935~は、生涯、ほぼ妻だけを描き続ける、この絵も妻、気品があって美しい、中山は、女性は裸体より衣服を着けた方が美しいと考えるので、裸婦は描かない、夫婦でヨーロッパでアンティーク・コスチュームを収集し、それを妻が着て絵にする、8月は「今日の絵」を時々休みます

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4 森本草介 : えんじ色の帽子、2008

森本1937~2015は戦後日本の写実画の領導者の一人、森本の人物画は(いや風景画もだろうか)、裸婦像も含めて広義の「茶色」を基調としている、「茶色」という色がかくも静謐で美しいことに驚かされる

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5 生島浩 : 《5:55》2010

生島1958~は写実の画家、この絵はホキ美術館で最も人気のある絵の一つ、暗がりの時計が5時55分を指しているのか、夕刻なのだ、フェルメールのように左側から差し込む光の静謐な感じが人をより魅力的にしている、モデルの個性と顔の表情が人気の理由では、と画家の自註

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6 藤田貴也 : 《Eiko》2014

藤田1981~は写実派の若手、彼は《Eiko》を何枚か描いている、プロのモデルではなく普通の少女だろう、藤田は「存在の露呈という方向性」を自分は見つけたと言う、「美に対する通俗的なモチーフから離れる」とも、指を合わせる仕草に少女らしさがあり、自然で、シンプルで、美しい

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10 野田弘志 : 掌を組む、1998

野田1936~は戦後日本の写実画の領導者の一人、今紹介している一連の女性人物画は、中山忠彦から明日以降も含めて、いずれも「手」や「指」が画全体で重要な位置を占めている、「手」「指」は顔に劣らず身体の表情を作るのだ、この絵も大きな「掌」が身体の美しい均衡を生み出している

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11 島村信之 : 憧憬、2012

モデルは来日14年のロシア人研究者の女性、たまたま島村の個展を見にきたら、画家が彼女をぜひ描いてみたいと感じて依頼し、OKされたとのこと、画家は、描きたい人を選びに選んで絵に描くわけだ、知的で意志の強そうな彼女の内面が見事に表現されている

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12 塩谷亮 : 行く秋、2008

ふっとと動きが止まり、顔に表情ができる、憂いだろうか、その眼は何かを考えている。画家は「日常生活の中で心の琴線に触れるものを描きたい・・、特に意識しているのは目の表情、すべての作品で目にテーマ性を持たせています」と自註。(明日から山籠りのため二週間休みます)

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25 Jan Van Scorel : 少年の像

人物画を眺めていると、人間という存在は何と美しいのだろうと思う、女性や子どもは特に美しい、今日から一週間は少年少女を。ヤン・ファン・スコーレル1495~1562はオランダの画家、1531年のこの少年は「12歳」とある、画家を見詰める澄んだ眼差しが美しい 

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26 Velazquez : 小さな少女、1640

数あるベラスケスの人物画の中でも、もっとも魅力的な作品の一つとして知られる、少女の何という自然な表情、見れば見るほどこの少女に親しみを感じてしまう、美術史家の研究にもかかわらず、この少女が誰であるか分っていない、画家の孫という説もあるが未確定 

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27 Hals : 読書する少年

たぶんフランス・ハルス(1580~1666)の息子のニコラス(1628~86)と言われている、息子も画家になったが、この絵は何を読んでいるのか、画家が自分の家族を描いた絵は依頼される肖像画と違って売れないわけだが、昨日のベラスケスといい、画家の当人への愛が感じられる

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28 Rembrandt : 読書するティトゥス、1656

私はこれがレンブラントの絵の中で一番好き、レンブラントの無事に育った唯一の子ティトゥスは15歳、しかし病弱で27歳で父より先に死去、父にとってティトゥスの存在そのものが恩寵なのであろう、息子の絵は10枚あり、このティトゥスはどこか天使に似ている

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29 Renoir : 赤い羽根の帽子の少女、1876

ルノワール1864年、23歳のとき初めての依頼注文『ロメーヌ・ラコーの肖像』で幼い少女を描いて以来、子どもの少女を多く描いている。本作はすでに印象主義的な画風で、少女の静かで落ち着いた感じが美しい、帽子は、被っているというより、後頭部に貼り付いている感じがする

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 30 Monet : Jean Monetの像、1880

ジャン(1867~1914)は、クロード・モネ(1840~1926)の最初の妻カミーユとの子、「日傘をさす女」などカミーユと一緒に描かれることが多い、この絵では12歳のはずだが、やや幼く見える、あまりに可愛がっていたので、父には幼く見えたのかもしれない

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31 Degas : Portrait of Rene De Gas, 1855

ルネ・ドガ(1845~1926)は、エドガー・ドガ(1834~1917)の弟。21歳の兄が10歳の弟を描いたのが、この絵、弟はモデルになって少し緊張しているが、それでもやはり、兄に描いてもらうことが嬉しいのだ

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