[今日の絵] 10月後半

[今日の絵] 10月後半

 

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20 Holbein : Portrait of Thomas Cromwell, 1533

トマス・クロムウェル1485~1540は、ヘンリー8世の側近で副首相などを務めた政治家、ピューリタン革命のオリヴァー・クロムウェル1599~1659とは別人、強い表情、書類を握りしめる手など、権力の側にある人物がみごとに描けている

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21 Rubens : スペイン王カルロス5世と王妃イザベラ1628

ティツィアーノが100年近く前に描いた絵を、ルーベンスが模写した、神聖ローマ皇帝を兼ねる夫がヨーロッパ中を回っている間、知性と美貌で知られる妻は摂政を勤めた、若くして妻は死んだが、死後に夫は、一度も妻を見たことのないティツィアーノに妻を描かせた

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22 Hals : ヤスパー・シャーデの肖像 1645

シャーデ(1623~1692)は、ユトレヒト裁判所長官などを勤めた貴族、この絵では若干22歳、やや神経質そうだが風格ある美しい貴公子、リボンのついた黒いフェルト帽など、おしゃれだったのか、デカルトの肖像もそうだが、ハルスの肖像画には「いかにもその人らしさ」がある

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23 Degas : ウジェーヌ・マネの肖像(習作) 1875

ウジェーヌ・マネ(1833~92)は、エドゥアール・マネの弟で、女性画家ベルト・モリゾの夫。自分も画家で、よく兄や妻の絵のモデルになっているが、彼自身の画家としての評価は高くない、この絵は友人のドガが描いた習作だが、ウジェーヌは神経質で気難しい人だったのか

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24 Manet : Portrait of Georges Clemenceau, 1879

クレマンソー(1841~1929)はフランス首相を二度務めた政治家、マネとは友人だったが、この絵について、「マネの描いた私の肖像画だって? 全然よくない、自分の所有ではないから気にならないが、どうしてルーヴル美術館にあるのか、聞いてみたいものだ」と言った

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25 Boldini : Portrait of Guiseppe Verdi (1813-1901), 1886

イタリア人のボルディーニ(1842~1931)は1872年からパリ在住、パリでヴェルディの弟子の指揮者ムツィオと知り合い、彼を介して、ちょうどパリに来ていたヴェルディの肖像を二度描いた、最初1886年3月の絵は二人とも気に入らなかったが、4月に描き直したこの絵は二人とも大満足とか

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26 Renoir : Portrait of Stephane Mallarme, 1892

1892年、リュクサンブール美術館の展示依頼に応えた5点の油彩画の一つ、この展示依頼にはマラルメも助力した、マラルメ(1842~98)は、マネなどサロンで落選した画家たちを支持し、批評を書き、励ましてきた詩人、ルノアール(1841~1919)とはほぼ同い年の友人だ

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27 高橋由一 : 小幡耳休之肖像1872

日本人洋画家による肖像画としては、最も初期のもの、「小幡耳休君寿齢八十」と由一の裏書き、モデルは有名人ではないだろう、老人らしい口元だが、視線は鋭い、明暗表現による立体感など、絵具もまだ不自由する頃で、傑出した肖像画といえる

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28 黒田清輝 : 東久世伯肖像 1894

前年フランスから帰国した黒田(28歳)が描いた本格的な肖像画、モデルは貴族院副議長を務めた伯爵東久世通禧、大礼服姿の伯爵は新聞を片手に腕を組み遠くを見ており、風格を感じさせる、モデルを長時間立たせるわけにいかないので一気に描かれたという

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29 浅井忠 : 中沢岩太博士像 1903

風景画を多く描いた浅井は、人物画をあまり得意としなかったが、これは数少ない肖像画、モデルは京都高等工芸学校(現在の京都工芸繊維大学)の初代校長、浅井はパリで中沢と意気投合し、帰国後、東京美術学校教授を辞任して京都高等工芸学校に移った、中沢は骨のある人物なのだろう

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30 岸田劉生 : バーナード・リーチ像 1913

陶芸家のリーチは1909年に来日し、エッチングなどを教えた、柳宗悦志賀直哉、里見弴などとも親交があった人、この絵では26歳、岸田は22歳、セザンヌの影響を感じさせる絵

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31 中村彜 : 田中館愛橘博士像 1916

中村は、物理学者の田中舘の東京帝大在職25年記念の肖像画を頼まれた、田中館はじっとしていない人で、研究室にもしじゅう誰かが訪れる、中村には不満の作だったが、第十回文展で特選を得た、ルノアールの影響があるが、人物の把握が深く、肖像画の傑作だ