[オペラ] ベッリーニ《カプレーティとモンテッキ》

[オペラ] ベッリーニ《カプレーティとモンテッキ》 日生劇場 11月13日 

(写真は舞台、主題はロミオとジュリエットの純愛である以上に、キャプレット家とモンテギュー家の対立だから、剣がつねに舞台にある)

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グノー《ロミ・ジュリ》、ヴェルディ《オセロ》《マクベス》《ファスルタッフ》はすべてシェイクスピア原作だが、ベッリーニの本作は違う。シェイクスピアは、(1)ダンテに由来する民話群→(2)フランス語訳→(3)英訳の、(3)をもとに演劇『ロミ・ジュリ』を創作したが、ベッリーには(1)から本作を創った。だから物語は大きく違い、ロミオはモンテギュー家の当主であり、家と家との対立を収拾するために敵一家のジュリエットに結婚を申し込み、断られる。ジュリエットは体が弱く、自分の死を予感しているので、ロミオのことが好きだが、「父親は裏切れない」と従弟?のティボルトと結婚しようとする。だから、ダンスパーティの出会いも、バルコニーの対話も登場しない。物語としては、両家の対立が主題なのだ。(写真↓は、ロミオ[メゾソプラノの山下裕賀]とジュリエット[ソプラノの佐藤美枝子])

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ベッリーニを見るのは初めてで、最初は、オケの音楽が単調に聞こえたが、歌が美しいのに感嘆した。アリアも二重唱もすばらしい。そもそもロミオを男性歌手ではなくメゾソプラノにしたのがいい。宝塚的な魅力というか、とにかくロミオが瑞々しいのだ。歌った山下裕賀は藝大博士課程に在籍する新人の若手。私は前から二列目の席だったので、最初から最後までロミオに見とれてしまった。物語の展開はシェイクスピアとは大いに違うが、最後は同じというのは面白い。ロミオに促されて、最初は嫌がっていた駆け落ちをジュリエットも承諾し、キャプレット家の医者であるロレンスの調合した仮死状態になる薬を飲む。しかしロミオは、そのことをロレンスから聞いていないので(ロレンスは謀反を察知され、キャプレット家に幽閉された)、墓場の仮死状態のジュリエットを見て絶望し、自分がつねに持参した毒薬を飲む。幸い、すぐジュリエットは眠りから覚めたので、二人の悲しく美しいデュエットになり、ジュリエットも力尽きて死に、終幕。とても自然な展開なので、台本を書いたフェリーチェ・ロマーニの段階で、物語はここまで出来ていたのか。民話からのシェイクスピアの修正とはまた違う。(写真左↓はロミオ)

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