[オペラ] テレンス・ブランチャード《Fire shut up in my bones》、METライブ

[オペラ] テレンス・ブランチャード《Fire shut up in my bones》、METライブ、Movixさいたま、1月28日

 

タイトルは、『エレミア書20』にある「我が骨の内に閉じ込められた火」。本作では「性的虐待がトラウマとして身体に残る」という意味。7歳の少年が、年長の従兄に性的いたずらをされ、それが青年期に至るまで、ずっとトラウマとして残り続ける。大学生になっても、その夢をよく見る。(写真下)

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アメリカのジャズミュージシャン、テレンス・ブランチャード1962~の2作目のオペラで、2019年初演、MET2021年10月23日の上演映像。プッチーニのような美しい音楽にジャズやゴスペルやブルースが混じり、ダンスや踊りの身体パフォーマンスが加わる↓。

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ただ、私には本作が全体として何を表現しているのか、よく理解できなかった。性的虐待を受けた少年の苦しみは良く分かる。しかしそれが、キリスト教の「罪」と重ね合わさられているのがよく理解できない。エレミア書がタイトルであるだけでなく、教会でも、このトラウマは解消できない↓。

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一番分らなかったのは、少年のこのトラウマが、彼の母親との愛情関係とどう関係しているのか、また、出会った女性グレタとの恋によっても救われなかったのはなぜか、なぜ最後に母親との愛情関係に戻るのか、それも分らない。少年は五男だが、母親は働くのに精一杯で、あまりかまってもらえなかったこと、母親に愛されていないと彼が感じていたこと、それはよく分る。でもそれが性虐待のトラウマとどう関係するのか。性虐待の直後にそれを母親に話せなかったとしても、その時点ではされたことの意味が少年に分からないのだから、話せないのが普通だと思う。母親とは別の一人の女性が三役を兼ね、「運命」と「孤独」のアレゴリーであり、かつ生身の女性グレタでもある、という複雑な構成が、全体を難解にしている。私の鑑賞力が低いのだろうが、難しい主題に挑戦した意欲作ではある。(写真↓は、上二つは、三役を兼ねる女性、下は左が母親)

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動画がありました。

https://www.youtube.com/watch?v=YGo4mSQs3wk