折々の言葉(2) 3,4月ぶん
生きることの目的は、生きることそれ自体にあります。(ゲーテ「J.H.マイヤー宛書簡」) 3.4
生きているということは誰かに借りをつくること、生きてゆくということはその借りを返してゆくこと。(永六輔) 3.7
風立ちぬ、いざ生きめやも (ヴァレリーの詩の堀辰雄訳) 原詩はLe vent se lève, il faut tenter de vivre.「風が吹いた、生きることを試みなければならぬ」だから、「風が吹いた、さあ生きるのだろうか、生きないかもしれない」という意味になる堀辰雄訳は、誤訳ではあるが(「やも」は反語)、結核患者の節子との愛の物語なのだから、これでよい 3.11
死とは、モーツァルトを聴けなくなることです。(アルバート・アインシュタイン) 3.14
太陽の光が届かないところにも、音楽は入ってゆく。 (キルケゴール) 3.18
君自身音楽なのに、なぜ音楽が君に悲しく聞こえるのか (シェイクスピア『ソネット』) 3.21
記憶の中では、あらゆるものが音楽とともに現れる。だからヴァイオリンの音が聞こえる。(テネシー・ウィリアムズ『ガラスの動物園』) 3.25
わたしが一番きれいだったとき だれもやさしい贈物をささげてくれなかった 男たちは挙手の礼しか知らなくて きれいな眼差だけを残し皆発っていった (茨城のり子「わたしが一番きれいだったとき」) 3.28
男たちが女に自分の言うことを聞かせるには技巧が必要というならば、私たち女も、男のいう言葉を聞かないでいられるために技巧が必要です。その技巧が男の技巧より少なくてすむとでもお思いなの? (ルソー『新エロイーズ』) 4.1
恋以外の他のすべての愛情は、[現実の]過去を必要とする。だが恋は、あたかも妖術のように、一つの過去を創造し、その過去でわれわれを包む。(コンスタン『アドルフ』) 4.4
思春期は人生の重要な一期間というだけではない。人生というものを、完全に字義通りに論じることのできる唯一の期間だ。(ウエルベック『闘争領域の拡大』) 4.8
ああ嫌だ嫌だ嫌だ、どうしたら人の声も聞こえない物の音もしない、静かな、静かな、自分の心も何もぼうつとして物思ひのない処へ行かれるであらう、つまらぬ、くだらぬ、面白くない、情けない悲しい心細い中に、いつまで私は止められて居るのかしら、これが一生か、一生がこれか (樋口一葉『にごりえ』) 4.11
吾々は、かならず卑屈なる言葉と怯懦(きょうだ)なる行為によつて、祖先を辱(はずか)しめ、人間を冒涜してはならぬ。そうして人の世の冷たさが、何(ど)んなに冷たいか、人間を勦(いた)はる事が何(な)んであるかをよく知つてゐる吾々は、心から人生の熱と光を願求礼讃(がんぐらいさん)するものである。人の世に熱あれ、人間に光あれ。(水平社宣言) 4.21
すべての蓋然的推論は、一種の感覚(sensation)に他ならない。我々が自分の好みや感情に従うほかないのは、たんに詩や音楽においてばかりではなく、哲学においても同様なのである。(ヒューム『人間本性論』) 4.25
しかし[哲学は]、一つの表示法にたまらなく惹きつけられたり反感をもったりすることがあるのは事実である。(ウィトゲンシュタイン『青色本』) 4.29