[今日の絵] 11月前半

[今日の絵] 11月前半

1 Boldini : パリ、クリシー広場1874

今日からはパリの街を、パリはヨーロッパの都市でも、もっとも多く絵に描かれた街、クリシー広場は大きな通りが幾つも交差する珍しい場所、この当時も大勢の人が行き交っている、まだ馬車の時代、荷車もたくさんいて、何かほのぼのとした感じがする

 

2 Bonnard : ウェプレールの店からのクリシー広場1912

ピエール・ボナール1867~1947はフランスの画家で、「ナビ[=預言者]派」と呼ばれ、ポスト印象派とモダンアートの中間と言われる、昨日のBoldiniの1874年と比べると、約50年後の同じクリシー広場は、馬車が自動車に代ったが、行き交う人々の生き生きした感じは同じ

 

3 Jean Béraud : キャピュシーヌ大通り1875

ジャン・ベロー1849~1935はフランスの画家、ベル・エポック時代のパリの人々の日常生活を描いた、特に大通りの絵はどれも女性が目立つ、これは割と初期の絵、キャピュシーヌ通りはオペラ座とマドレーヌ寺院の間にある大通り、最初の印象派展1874は、この通りの建物でひっそりと行われた

 

4 Charles Courtney Curran : 夜のパリ1889

チャールズ・コートニー・カラン1861~1942はアメリカの画家、女性をたくさん描いた、この絵はパリ留学中のもの、まだ夕方で空はやや明るいが、灯火や雨水の路面に反射する光が美しい、人や車にはぬくもりがあり、パリの街を描いた名画の一つ

 

5 Luigi Loir : パリ 共和国広場1880

ルイジ・ロワール1845~1916はスロバキア生れで、フランスの画家、風景画を多く描いた、この広場には、フランス共和国を擬人化した「マリアンヌ像」があるが、描かれてはいないようだ、空がまだ明るく灯がほとんど灯っていない夕方、行き交う人々は落ち着いて美しい

 

6 Marcel François Leprin : Montmartre

マルセル・ルプラン1891~1933はフランスの画家、パリのモンマルトルをたくさん描いた、この絵もその一枚、パリの空が晴れ始めて、光が美しい、そして建物も人も美しい

 

7 Marguerite Nakhla – La Seine, Paris

マーガレット・ナクラ1908~77は、フランスで学んだ現代エジプトの画家、パリの絵もたくさん描いている、これは「パリ、セーヌ川」との題だが、戦前のパリの川近くの裏通りだろう、二階以上は人の住居で、木の雨戸や洗濯物など生活の匂いがする

 

8 Edouard Cortes : Quai Saint Michel

パリのサン・ミシェル河岸通り、ノートルダム聖堂が見える、雨上りだが露店が出ているのがいい、そして雲が少し高い位置に地平線のようになっている。エドゥアール・コルテス1882~1969はフランスの画家、パリの街並みをたくさん描き、「パリの絵の詩人Le Poète Parisien de la Peinture」とも呼ばれた

 

 9 Velazquez : スペイン王妃イザベル 1632

人物画の原点は、依頼されて描く肖像画、今日からは有名人を少し、スペインのフィリペ四世の妻イザベル1602~44、もとはフランス王アンリ四世の娘、ベラスケスは何枚か描いており、これは彼女が30歳の時の立像、眼光と表情に凛としたものがあり、立ち姿に威厳

 

10 François Boucher : ポンパドゥール公爵夫人の肖像1756

フランソワ・ブーシェ1703~70はフランスのロココを代表する画家、ポンパドゥール夫人はルイ15世の「公の」愛人、政治的権勢もふるったが、学芸的才能があり、ヴォルテールディドロや、芸術家のパトロンになった、この絵では書斎?のベッドにくつろぎ、本を手に、足元にも本が散らばっている

 

11 Élisabeth-Louise Vigée Le Brun : 薔薇を持つマリー・アントワネット1783

エリザベート=ルブラン1755~1842はフランスの女性画家で、十代前半から職業画家で、ヴェルサイユ宮殿に招かれ宮廷画家に、とりわけマリー・アントワネット1755~93を多く描いた、二人は同年生まれで、この絵はともに27~8歳、王妃らしく凛とした威厳がある

 

12 Ilya Repin : Leo Tolstoy 1887

イリヤ・レーピン1844~1930はロシアの画家、トルストイ1828~1910の領地ヤースナヤ・ポリャーナに滞在して、生活をともにして彼を何枚も描いた、レーピンの絵は人物の表情に強い力がある、このトルストイもほぼ60才だが、精悍で充実している

 

13 Odilon Redon : Joan of Arc 1900

オディロン・ルドン1840~1916はフランスの画家、同時代の印象派の画家たちと違って、幻想的なものを描き、「キュクロプス」など怪物やグロテスクなものを好んだ、この「ジャンヌ・ダルク」も、アングルやミレーのような女神風の戦闘美少女ではなく、不気味な感じがある

 

14 Munch : Friedrich Nietzsche 1906

ムンク1863~1944とニーチェ1844~1900は、互いに面識はなかっただろう、この絵(左)はニーチェの妹の依頼で描かれたと言われる。写真か、あるいはルドルフ・ケセリッツの描いた肖像画1883(右)をもとにムンクが描いたのだろう、背景など不気味だが、はたして妹は気に入ったのだろうか

 

15 アンリ・ルソー : ピエール・ロティの肖像1910

アンリ・ルソー1844~1910はフランスの画家、くっきりした形と美しい色彩の絵を描いた、ピエール・ロティ1850~1923はフランスの作家で海軍士官、世界中を航海し、各地の女性と恋をし、日本の鹿鳴館のパーティにも参加、『お菊さん』は日本の現地妻、顔からして面白そうな人

 

16 Martios Sarian : Shostakovich 1963

サリアン1880~1972は旧ソ連アルメニアの画家、絵筆のタッチも荒い簡素な描き方だが、写真と比べてみても、ショスタコービッチ1906~75の顔が驚くほど的確に描写されている