[演劇] モリエール『守銭奴』 SPAC

[演劇] モリエール守銭奴』 ジャン・ランベール=ヴィルド演出、SPAC 12月11日

(写真は、左からアルパゴンの息子クレオント[永井健二]と娘エリーズ[宮城嶋遥加]、全体の半分ぐらいを、語りではなく音楽と踊りにした「コメディー・バレー」形式が楽しい)

モリエールの作品は、ほとんどが宮廷で上演されたもので、音楽と踊りがふんだんにある「コメディ・バレー」形式で、「宮廷祝祭」の楽しい雰囲気に満ちている。この上演も棚川寛子による音楽と踊りがとてもいい。まるでフェリーニの映画を見ているようで、演技も、歌舞伎の一部を取り入れていて楽しい。モリエールは19世紀以降のリアリズム演劇ではないので、今回の演出はむしろ正統的なのではないか。11月に東京芸術劇場で見たプルカレーテ演出『守銭奴』は、狂気を前面に出したホラー仕立てになっていて、ぜんぜん楽しくなかったが、こちらはとにかく祝祭気分が横溢していて、これでこそモリエールだと思う。『守銭奴』の登場人物はすべて、弾けるように生き生きしているのがいい。(写真↓上は、中央がアルパゴン[貴島豪]、左がヴァレール[大高浩一]、下は、マリアンヌ[ながいさやこ]と、見合い斡旋おばさんフロズィーヌ[木内琴])

原作ではアルパゴンも含めて「めでたしめでたし」で終わるところを、終幕、アルパゴンを孤独な淋しさで終わらせるところは、演出家の新解釈なのだろう。科白の半分以上をカットして音楽と踊りに変えたのに、原作の内容はほぼ忠実に再現されている。何といっても『守銭奴』はキャラがとてもいい。アルパゴンは、自分がとんでもない条件で高利貸をしているくせに、その借り手が息子だと分かった瞬間、「そんな条件で借りたら破産しちゃうじゃないか」と「心配」してみせるところなど、矛盾している。ジャック料理長は、上にはペコペコして下には威張り散らすし、我々の周囲に「いるいる」のタイプだ。私が一番感心するのは、見合いを斡旋するフロズィーヌおばさんだ。両方にたくみに旨いことを言って、男女をくっつけ、双方の親から高い金を取る。今の西洋はカップル文化とはいえ、過去の長い間、こういう人が活躍しなければ実際の結婚の多くが成り立たなかったにちがいない。この舞台では腹話術の猿人形?を使っているのがいい。腹話術はこの仕事には必須なのだ。そして、結婚する二組の若いカップルも、それぞれはとてもちゃっかりしていて計算高い。「純愛」という感じでもないのだ。そう考えると、アルパゴンだけでなく誰もが計算高いちゃっかりした人々であることが分かる。モリエール喜劇の「笑い」は、シェイクスピア劇の道化と同様に、批評性があり、原則としてはオヤジ(家父長制)など何らかの「権力」や「権威」を笑い飛ばしているが、『守銭奴』では登場人物の誰もがお互いを笑い飛ばしている感じがあり、それが大きな祝祭性を生み出している。

舞台の音楽(これがとてもいい)が動画で聴けます。

SPAC版 守銭奴 あるいは嘘の学校 | SPAC