[今日の絵] 1月前半

[今日の絵] 1月前半

1 Jan Mateyko : スタンチク1862

「道化」は多く絵に描かれている、シェイクスピア劇にあるように、道化は最も知性的な人である、当然、道化を描いた絵には、その内面も表現されているだろう、マティコ1838~93はポーランドの画家、これはポーランドの有名な道化「スタンチク」で、哲学者のように沈思している

 

2 Degas : Two harlequins, 1886

アルルカン」は、本来は、中世の即興喜劇に登場した道化役のこと、この道化師は舞台から楽屋に引き上げた直後だろうか、仕事に疲れたようだ、ドガの描く踊り子は、動きの頂点ではなく、動き終わって疲れているところを描いたものがかなりある、道化師もそうなのか

 

3 Joaquín María Herrer

ホアキン・マリア・ヘラー1839~1916はスペインの画家、タイトルは不明だが道化師だ、ベラスケスの絵にもこのような小人の道化師があったが、ひょっとして愛嬌が売りの道化師には小人もそれなりにいたのだろうか、上流階級の婦人たちを楽しませている感じがよく分かる

 

4 Picasso : Harlequin with his hands crossed (Jacinto Salvado) 1923

「手を組んだアルルカン」の名はジャシント・サルヴァド1892~1983、彼もスペインの画家だが、なぜか道化の衣装を着けてモデルになっている、ピカソは、直線を主とした僅かな線のみで完璧な造形をしており、さすがだ

 

5 Jean-Claude Desplanques

ジャン・クロード・デスプランク1936~はフランスの画家、女性の道化師をたくさん描いているが、これが代表作だろうか、たしかに道化師は男性である必然性はなく、20世紀になって実際に女性道化師が登場したのかもしれない、この女性道化師は猫とよく似合う

 

6 Tiziano : Violante, 1518

人物画で一番数が多いのは女性だろう、しかし女性のどこにどのような魅力を感じるかは、画家によって違う、逆に、ある画家が異なる女性を描いても似たようになる、ティツィアーノでも、これはヴィオランテという女性だが、彼の描く「サロメ」もこういう顔だ(下↑)、ふっくらと優美な女性が好み

 

7 Cranach : Portrait of a Woman

クラーナハの描く女性はどれも目がやや細く、少し下向きで、視線が鋭い、ティツィアーノの女性の顔に比べると、微妙に「きつい」が、それが好みのタイプなのだろう、ネックレスや背景のゆるやかな曲線の中で独特の視線が浮かび上がる

 

8 Rubens : Portrait of a Young Woman 1620-30

ルーベンスは痩せた女性は描かない、どの女性もふっくらとした豊満な美しさがある、この女性は、最初の妻イザベラとも言われるが、正確には分かっていない、しかし誰であろうと、この女性はルーベンスにとっての理想の女性美を備えているのだろう

 

9 Jean-Marc Nattier : アンタン侯爵夫人1738

ジャン=マルク・ナティエ1685~1766はルイ15世に仕えた宮廷画家、宮廷の女性をたくさん描いた、この女性はAntin侯爵夫人Mathilde de Canisy、まだ若いのだろう、ふっくらした笑顔が可愛らしい、犬を描いた名画としても有名

 

10 Ingres : オダリスクのための習作

オダリスク」とはオスマン帝国の王のハーレムにおける女奴隷、たくさん絵に描かれた、美女が多かったのだろう、全身像の「グランド・オダリスク」はアングルの代表作、彼は背中を描くのが好きだったようで、この習作(21㎝×21㎝)のモデルは同じ女性と思われる、端正で美しい

 

11 Chassériau : Portrait of Alice Ozy 1849

シャセリオー1819~56はフランスの画家。トクヴィル(政治家で思想家)の友人でもあった、アリス・オジー1820~97はシャセリオーの愛人で、当時パリでもっとも美しいと言われた女性、ユゴー父子もまた彼女を手に入れようとシャセリオーと争った

 

12 Franz Winterhalter : Varvara Rimskaya-Korsakova 19Ce半ば

フランツ・ヴィンターハルター1805~73はドイツの画家、王侯貴族をたくさん描いた、リムスカヤ・コルサコヴァ1833~78はポーランドの伯爵夫人で、その美しさを謳われた人、ポーランドの貴族はよくヨーロッパの小説に登場するが、なるほどと思わせる、胸に手をあてている仕草が美しい

 

13 Philip Alexius De Laszlo : 1912

フィリップ・ドゥ・ラースロー1869~1937はハンガリー出身のイギリスの画家、王侯貴族をたくさん描いた、少女時代のエリザベス2世の絵もある、この絵はタイトル不明だが、優美な感じからして貴族の女性だろう、両手を肩に軽くあてている仕草が素敵だ

 

14 Makovsky : 夏の花輪を掛けたロシア美女

コンスタンティン・マコフスキー1839~1915はロシアの写実主義の画家、優れた肖像画を描いた、彼の描く女性は、大きな帽子や頭巾を被って髪の毛があまり見えないものが多いが、顔はどれも、内側から耀き出る生命力にあふれている

 

15 Bouguereu : Aphrodite 1879

ブグロー1825~1905はフランスのアカデミー派の画家、アングルら新古典主義の流れをくんでいる、印象派台頭以後には忘れられていったが、20世紀末に再評価され始めた、この絵をみても、精密な写実の画であることが分かる、顔を真正面から描くのは難しいのだから

 

16 Serebriakova : Portrait of a young Woman 1915

ジナイーダ・セレブリャコワ1884~1967はウクライナ生まれの画家、彼女の描く人物画は家族や友人知人など普通の人だが、どれも一人の人間がそこにそのように存在することの静かな美しさがある、特に目がいい、どれも鑑賞者としっかり「目が合う」感じだ