[今日の絵] 2月前半

[今日の絵] 2月前半

1 Lorenzo di Credi : Portrait of a Young Woman 1490–1500

ロレンツォ・ディ・クレディ1459~1537はイタリアの画家、ダヴィンチと影響を与え合った、彼の「カタリーナ・スフォルツァ」はダヴィンチの「モナリザ」にそっくり、この絵はクレディの兄弟の未亡人、喪服だろうか、やや悲しみの表情だが静かな気品がとても美しい

 

2 Cranach : Portrait of Princess Elisabeth of Saxony 1564

優れた人物画は、類型的にならず、当の個人にだけあるものが必ず描かれている、クラーナハの絵の多くは、眼がやや細目で、視線は斜めだか、この王女の目はしっかりと正面を見据えている、この眼や広い額に強い個性が感じられる、12歳だそうだが、しっかりした大人の顔だ

 

3 Jane Austen1775~1817の唯一といわれる肖像画

姉のカサンドラ1810年頃に描いた原画と、下は、それから作られた銅版画、姉は素人だから上手い絵ではないが、この「きっつーい」感じといい、おそらくオースティンらしさがよく描かれているのだろう、銅版画はプロの画家によるから、穏やかな「愛され顔」に修正されている、さすがだ。

4 Degas : パウリーネ・フォン・メッテルニヒ侯爵夫人 1865

彼女1836~1921はウィーンとパリの社交界の花形だった人、ワーグナースメタナ等のパトロンであり、サン=サーンス、グノー、リストや、メリメ、デュマ等とも交際、画家ヴィンターハルターは彼女を美人に描いたが、ドガはそうでもない、だが権力と圧倒的な存在感を感じさせる

 

5 Bouguereau : During the Storm 1872

ブグロー1825~1905の描く女性は「甘美で耽美的」と言われるが、基本は写実の画家だと思う、急に降って来た雨を避けて木蔭に佇んでいる女性、表情がとても細かく描き込まれている

 

6 Alexey Venetsianov

アレクセイ・ヴェネチアノフ1780~1847はロシアの画家、普通の人々をたくさん描き、初めて農民の生活を描いた画家と言われる、この絵はタイトル不明だが顔立ちからして貴族ではないだろう、生き生きとした農民の少女の画も多い

 

7 Makovsky : 若いボヤール女性 1884

「ボヤール」とは中世ロシアに存在した支配階級の名称、この女性はその子孫でその衣装を着けているのか、マコフスキー1839~1915はロシアの画家、「ボヤール」の人たちの絵を幾つも描いた、人物画はどれも個性的で「濃い」感じがする

 

8 Pissarro : Portrait of Jeanne 1898

描かれているのは、ピサロの7人目の子のジャンヌ=マルグリット16歳、「ココット」というあだ名で呼ばれていたのは、美女だったからだろう、少女ではなく堂々とした大人の女性を感じさせる、ピサロの人物画は家族の描写など数少ないが、どれも表情に特有の魅力がある

 

9 John William Godward :タイトル不明(20世紀初頭)

ゴッドワード1861~1922はイギリスの新古典主義の画家、古代ギリシアやローマの衣装を着けた女性を多く描いた、この絵のモデルは「ピラリス」と題された絵とおそらく同一人物で、ローマ滞在中に画家が恋した女性らしい、衣装や石の背景との調和が美しい

 

10 19世紀ドイツの名前不明の画家 : Lorgnonをもつ女性の肖像

誰が描いたのか分からない絵だが、この女性のちょっと「きつい」感じもする個性がうかがえる、Lorgnonというのは柄の付いた眼鏡のこと、肩幅を大きく超える服が全体とうまくバランスしている、貴族か少なくとも上流の婦人だろう

 

11 Matisse : The Bulgarian Blouse 1920

ブルガリア製のブラウス」を着ているのは、マティスが数多く描いたアンリエットだと思われる、彼にとって、背景はもちろんブラウスの模様まですべて含めて「女性の姿」なわけで、この絵もそうした全体の均衡がすばらしい