[今日の絵] 5月後半

[今日の絵] 5月後半

12 Matthias Stom : Young Man Reading by Candlelight 1630

マティアス・ストーム1600-1650はオランダの画家、カラヴァッジオの影響を受けた。ロシアの心理学者ヴィゴツキーは「読書しているとき、人は自分と対話している」と述べた、「読む」ことは人間の心の深部の対話であり、それは必ず身体の外見に表れる

 

13 Gustave Caillebotte : Interior Woman Reading 1880

カイユボット1848-94はフランス印象派の画家、描かれた人物に強い存在感がある、この絵では、手前の女性の、くい入るように見詰める真剣な表情と、後方の夫?のややリラックスした状態の差が、顔だけでなく手指からも分る

 

14 ホセ・フェラス・デ・アルメイダ・ジュニア : 本をもつ少女

作者1850–1899はブラジルの画家。夢中で物語を読んでいる人は、物語の世界の中に入り込み、さらには自分も物語の中の人物になってしまうことがある、それが物語を読む人の独特の体勢と表情になるから、画家が好んで描く

 

15 William Meritt Chase : Morning News 1886

チェイス1849-1916はアメリカの印象派画家、フランスで学んだ、チェイスの描く女性は、どれも姿勢がよく、視線を絵の鑑賞者にまっすぐ向けている、この絵は新聞を読んでいるが、新聞を顔からしっかり離し、上半身全体で読んでいる

 

16 James Sant:A portrait of young woman

ジェームズ・サント1820-1916はイギリスの肖像画家、「読んでいる」女性をたくさん描いた、この絵も、顔の光の陰影で、表情に深みが出ている

 

17 Michael Ancher:Mrs. Brøndum reading the Bible 1909

この老婦人は聖書を「読んで」いるが、自然に両手を組み、祈りの体勢になっている、アンカー1849 -1927はデンマークの画家

 

18 Thomas Benjamin Kennington : Lady Reading by a Window 1900

ケニントン1856-1916は英国の画家、社会的リアリズムでホームレスや孤児などを描いているが、これは上流階級の女性だろう、読み耽っているうちに頭が重くなるのか、しっかり「頬杖をついて」支えている

 

19 František Brunner Dvořák 1896

読書のとき、手の位置は皆それぞれだ、この絵は昨日の絵のような頬杖ではなく、頭の前方を押さえている、頭を「抱える」感じで、手も一緒に考えているのだ。フランチシェク・ドヴォルザーク1862-1927はチェコの画家

 

20 Anders Zorn : Study of a Nude 1892

アンデシュ・ソーン1860-1920はスウェーデンの画家、タイトルは「ヌードの習作」だが、読書をしている、画家はヌードをたくさん描いているが、どれも何かをしている。左手をぐっと伸ばして足元の小さな布のようなものを握っている、手も一緒に考えているのだ

 

21 A.C.W.Duncan:読書する若い女性 1896

ダンカン1884-1932はスコットランドの画家、この女性は両手を「軽く頬にあてて」いるが、頭の重さを支えているというのではない、穏やかに流れる時間、彼女は、考えるというよりは、物語の中の人物に寄り添っているのだろう

 

22 Felice Casorati : Girl with book Reading 1958

昨日の絵と同様、両手を頬に当てているが、受ける印象がだいぶ違う、こちらは読み終わって、本を閉じる直前、何か真剣に考え込んでいる、フェリーチェ・カゾラーティ1883-1963はイタリアの画家

 

23 Guy Rose : Marguerite 1909

ガイ・ローズ1867-1925は米国の印象派画家、描く女性像はどれも構図が卓越している、この絵も、壁に掛かったレリーフを含め、花、クッション、身体のバランスがいい、手が頭の後方を押さえているので袖が大きく広がる

 

 

24 Harold Knight : Alfred Munnings reading 1910

ハロルド・ナイト1874-1961は英国の肖像画家、室内が多いが、これは珍しく戸外、小さな椅子に座っている自分の体のバランスを取らなければならないので、無意識にこの体勢に。庭の緑がいい

 

25 Pierre Pivet : 読書

ピエール・ピヴェ1948~はフランスの画家、色彩感のある画を描く、この女性は夢中で読んでいるのだろう、知らず知らずむき出しになった太ももが、全体の色彩バランスに貢献している

 

26 Nick Botting : 読む人

ニック・ボッティング1963~は英国の画家、戸外のスポーツなどを描く人だが、これは室内、でもエスカレータは動いている、今なら、本の代りにスマホを見ている人が多い

 

27 Silvana Cimieri : 読書の午後 1993

シルヴァーナ・チミエリ1964~は現代イタリアの女性画家、この女性、やや姿勢が悪い、眼が近く、顎が手首に触れている、やや気だるい「読書の午後」だからか、花も少し萎れている

 

28 Joseph Lorusso

ジョセフ・ルロッソ1966~は現代アメリカの画家、抱擁するカップルをたくさん描いており、人間のさまざまな体勢を上手く捉えている、ソファーに横たわって読書するこの女性も、折った膝と両手の位置など体勢に張りと力があり、身体の幾何学的美しさが

 

29 John Michael Carter

ジョン・マイケル・カーターは現代アメリカの画家、政治家の肖像画などで名高い、女性もたくさん描いているが、どれも動きのある体勢だ、この絵は読書、「ゴロンと寝そべっている」感じがよくでている

 

30 Catrin Welz-Stein : 読書の午後

カトリン・ヴェルツ=シュタインは現代ドイツの女性画家、夢想する女性をたくさん描いている、この絵は、彼女が読んでいる文字、そこに書かれている内容、つまり彼女の心の中が外観と重ね合わされている

 

31 Frederick Serger : Der Talmud

フレデリック・ゼルガー1889-1965はチェコ生まれのユダヤ人画家、骨太な人物画や風景画を描いた、これはユダヤ教聖典「タルムード」、女性の後ろの人物はラビかもしれない、何となく雰囲気がシャガールに似ている