[今日の絵] 10月前半

[今日の絵] 10月前半

1 Gauguin : Breton Eve 1889

西洋絵画には、実在ではなく「神話の人物」が多く描かれている、神話に擬するのは、画家が実在のモデルに自分のイメージを重ね描きする楽しみがあるからだろう、この「ブルターニュのイヴ」は苦悩しており、これがゴーギャンのイヴ像か、ヘビ君も少し怖い

2 Hugh Goldwin Riviere : The Garden of Eden 1901

描かれているのはアダムとイヴ、原罪が成立する決定的瞬間、絵は神話をさりげなく描ける、イヴは神話絵の一番の人気者、このイヴは明るく可愛いお嬢さん、彼女が積極的でアダムはやや受け身、彼女はアダムの眼をじっと見ている、リヴィエール1860-1956は英国の画家

 

3 Orazio Gentileschi : Diana leaving for the hunt 1625

アルテミス(ダイアナ)は、アポロンの双子の妹、「処女神」なので恋愛も結婚もしない、鹿を従えて裸足で山野を駆け巡るアスリート系女子で、そこが魅力的、オラツィオ・ジェンテレスキはイタリアの画家で、女性画家アルテミジアの父

 

4 Jules-Joseph Lefebvre : Diane 1879

こちらの「ダイアナ」はヌードが美しい、キリっとした顔と鋭い視線で、表情は女神というよりは人間の女、ルフェーブル1836-1911はフランスの人物画家で、アカデミック派

 

5 Alexandre Cabanel:狩の女神ディアナ1882

こちらの「ダイアナ」は、いかにも強そうな狩人で、顔も男性的、なぜか足は裸足ではなく草鞋を履いている。カバネル1823-89はフランスの肖像画家で、アカデミック派

 

6 van der Weyden : Mary Magdalene , Just sitting there reading her book 1435

イヴと並ぶ神話絵の人気者が「マグダラのマリア」、福音書では「娼婦」らしいことになっているそうだが、本当はよく分らない謎の女、そこが画家の意欲をそそるのだろう

 

7 Carlo Crivelli : Mary Magdalene 1487

この「マグダラのマリア」は、気が強い女のイメージ、香油壺は持っているが、罪を悔い改めているという感じはない、クリヴェッリ1435-90はイタリア・ルネサンス期の画家

 

8 El Greco : Mary Magdalene in Penitence 1577

「悔悛するマグダラのマリア」だが、表情に弱弱しさはなく、むしろ凛とした強さを感じさせる。グレコ1541-1614はスペインの画家だが、この絵には、イタリアのティツィアーノ1490-1576の影響もあるといわれる

 

9 Artemisia Gentileschi : Mary Magdalene

いかにもアルテミジアらしい、劇的な表情の「マグダラのマリア」、深く悔い改めているのか、瞑想しているようでもある

 

10 Edouard Kasparides : The Penitent Mary Magdalene in the Cave

ヴィーナスのように美しい「マグダラのマリア」、「洞穴」にいるが「悔い改めている」感じでもない、凛としてこのうえなく美しい顔は、彼女自体が祝福されているようにみえる、その美でイエスを誘惑しようとしているのか

 

11 フランソワ・ジェラール:アモルの最初のキスを受けるプシュケ1798

「アモル=愛」はアフロディーテの息子の「エロス」、「プシュケ=魂」は人間の王女、恋の何という美しさ!

 

12 Bouguereau : Le Ravissement de Psyche 1895

原タイトルは「プシュケの恍惚」だが、英語タイトル「The Abduction of Psycheプシュケの誘拐」になることもある。人間のプシュケが余りに美しいので女神アフロディーテが嫉妬して、息子のエロスに誘拐させたという神話、でもプシュケは嬉しそう

 

13 Cezanne : The Kiss of the Muse 1860

セザンヌには珍しい神話絵、ミューズが遠慮がちにキスしようとしている、キスの恩寵を受けているのは詩人か、画家ではなさそう、ひょっとしてセザンヌは詩人が羨ましかった?

 

14 Henri Rousseau : The Muse Inspiring the Poet 1909

アンリ・ルソーの「ミューズ」は、「詩人に霊感を与えているミューズ」、でも学校の先生か牧師風のおばちゃんミューズで、美神にはみえない、それでも詩人は嬉しそう

 

15 Antoni Brodowski : Paris in the Phrygian cap 1814

「パリス」はトロイの王子、ギリシアの人妻であった「人間で一番美しい女ヘレネ」を誘惑して国に連れ帰り、トロイ戦争の原因を作った、この絵ではちょっと少年ぽい、フランス革命期に自由の象徴となった「フリジア帽」なのは画家の思い入れか

 

16 Gari Melchers :Penelope 1910

トロイアに出陣した王オデュッセウスの帰りを20年間待った王妃ペネロペ、求婚者たちを退けるために、毎日、編み物を編んでは夜にはそれを解いた。この絵は王妃というより、ごく普通の中産階級の主婦ペネロペさんだが、夫は出征中なのだろう

 

17 Sebastiano del Piombo : a solemn Salome w/ head of John the Baptist 1510

サロメ」も神話絵の人気キャラ、「サロメ」は新約聖書に登場する「ヘロデ王の娘」で、踊った褒美に(イエスに洗礼を授けた)洗礼者ヨハネの首を欲しがった、なるほど気の強い娘のようだ

 

18 Henri Regnault:Salome 1870

これも「サロメ」だが、神話そのものというより、「サロメ」役を踊る踊り子だろう、だから表情も明るく、落ち着いて、少し微笑んでもいる