[今日の絵] 11月前半

[今日の絵] 11月前半

1 Michiel van Musscher :Young girl at a table

「手紙は、人間の交わりの一つの手段、最も美しく最もみのりのある手段の一つである(リルケ『若き女性への手紙』)」、この娘の真剣な表情が印象的だ、返事を待つ使いの者、ムスヘル1645-1705はオランダの画家

 

2 Giovanni Battista Moroni:Portrait of a Man holding a Letter 1570

画家が「手紙と人間」を好んで描くのは、そこに、愛情、秘密の共有、友好、疎遠、敵対など、個人的でデリケートな人間関係が見えるからであろう、この絵はたぶん「敵対」か

 

3 Francesco Hayez : El secreto 1848

タイトルは「秘密」、女性の表情からして、この手紙には人に言えない内容が書かれているのだろう、手もこわばっている、フランチェスコ・アイエツ1791-1882はイタリアのロマン主義の画家

 

4 画家不明 : A man reading a letter 18世紀

手紙を読んだこの男性は、困惑、失望、軽蔑、怒り・・、複雑な表情にみえる

 

 

5フラゴナール : ラヴレター 1770

彼女の顔はやや緊張している、たぶんラブレターは手応えあり、でもまだこの恋を知られたくないのかも、犬も大きく目を見開いている、「意外だね」とでも言っているように

 

6 Joaquín Sorolla :

床に落ちた封筒と手にした手紙、そして彼女は窓の外をそっと見ている、おそらく手紙は本人から直接届けられたのだろう、手紙の内容が予想外だったのか、だから視線で本人を探している?

 

7 画家不詳 : The billet-doux (love letter)  

手紙を受け取るのか、出すのか、よく分らないが、郵便屋に姉妹?二人が対応しているのがいい、ラブレターは秘私的なものではないということか

 

8 Carl Spitzweg :The Letter Carrier in the Rose Valley 1858

タイトルの「薔薇の谷」とは、この裏通りの通称か、そう裕福でもないが、どの家も窓辺に鉢植えの薔薇がある? 郵便屋が大声で呼んだのか、家々の窓という窓から顔が覗き、届いた手紙と贈りものに興味津々、二階のお嬢さんは結婚が近い?

 

9 James Carroll Beckwith(1852–1917) : The Letter 1910

手紙は、よい知らせか、悪い知らせか、どちらでもないかだが、それを確認するだけでも、顔の表情や体勢全体が記号となって、「その手紙を読む」という当の行為の意味が現れる

 

10 Edward Hopper

床に置かれれているカバンなど、ホテルの一室だろうか、手紙を読んでいる女性は浮かぬ顔をしている、悪い知らせなのかも、ひょっとして別れを告げる手紙が届いたのか

 

11 Joseph Wright of Derby : A Girl reading a Letter with an Old Man 1768

18世紀の絵だが、描かれているのは貴族ではないだろう、少女の手紙を後ろからのぞいているのは父親か、仕事の上司か、ジョセフ・ライト1734-97は英国の画家、産業革命期の人々をたくさん描いた、光の当て方に特徴が

 

12 ヤン・トーロップ : 花園と三姉妹1886

明らかに三人で手紙を読んでいる、三姉妹はそれぞれに来た手紙でも一緒に読むのだろう、表情からして、何か悪い知らせだったのか。ヤン・トーロップ1858-1928は、ジャワ島生れのオランダの画家

 

13 Jessie Willcox Smith : They All Drew to the Fire 1915

小説『若草物語』に描かれた挿絵、母と四人姉妹が戦場の父からの手紙を読んでいるのだろう、いかにもアメリカの家族らしい、スミス1863-1935は挿絵をたくさん描いた米国の女性画家

 

14 Salomon Konick : The Rabbi

「ラビ」を描いたサロモン・コーニンク1609-56はオランダの画家、下は現代の絵。手紙を読む時と、スマホの画面を見る時とは、体勢や表情が似ている、紙や画面の小さな二次元空間を介して遠い他者と繋がるのは、やはり不思議なことだ

 

15フェルメール : 手紙を書く婦人と召使 1670

フェルメールには、手紙を読み/書きする絵が6枚ほどある、いずれも、手紙という小さな二次元平面を介して遠い他者と繋がる不思議さを感じさせる、横の召使はおそらく、手紙の相手のことを想いながら窓の外を見ているのだろう