[演劇] アリストファネス (ペーター・ハックス翻案)『平和』 うずめ劇場

[演劇] アリストファネス (ペーター・ハックス翻案)『平和』 うずめ劇場 シアターX 10.19

(写真↑、左上から時計回りに、トリュガイオス、ヘルメス、コロスのリーダー?、そして右下の腹の大きい人物が聖職者ヒエロクレス)

 アリストファネスの原作を、ブレヒトの弟子であるドイツの劇作家ペーター・ハックス1928-2003が、ベルリンの壁構築直後の1962年に翻案し、ベルリンで600回上演された。今回の舞台は、来日して「うずめ劇場」を主宰するドイツ人ペーター・ゲスナー1962~演出。私は原作を見たことがないが、おそらく原作にかなり忠実な優れた舞台で、深く感動した。ブレヒト風の音楽劇にしているが、コロスと俳優の入り乱れは原作もそうらしい。

 原作は、ペロポネソス戦争の途中講和成立直前、BC421年に上演された(27年間続いたペロポネソス戦争はBC404にアテナイの敗北で終焉。宇露戦争もミンスク合意前まで含めると全体は長い)。アテナイ側もスパルタ側も自分に有利な局面で講和しようとするので、停戦交渉は二転三転し、講和はなかなか成就しない。まるで現代の宇露戦争のようだ。しかも、武器商人や名誉を欲しがる政治家など、戦争で儲けている職業がたくさんあるので、彼らは停戦に反対する。これも現代の戦争と同じ。本作では聖職者ヒエロクレスが何だかんだ理屈をつけて停戦に同意しないのが面白い。原作でも、停戦に反対する多くの政治家が実名で糾弾されている。

 『平和』は、ブドウ園経営の農民トリュガイオスと、ゼウスと人間を媒介するメッセンジャーボーイの神ヘルメスの人物造形が際立って優れている。トリュガイオスは男だが、『女の平和』の主婦リュシストラテに相当するキャラだ。トリュガイオスはフンコロガシに乗って天上のゼウスに会いにいき、ゼウスには会えないが、洞窟に閉じ込められていた「平和の女神」を救い出し、女神の側近の二人の女性「春の喜び(原作では「祭りのにぎわいの姫」高津訳)」と「秋の勤勉(同「秋のみのりの姫」)」の二人をアテナイに連れて帰り、彼は、「秋の勤勉」を妻にする。めでたしめでたしの「新床入り」で終幕。『女の平和』もそうだが、アリストファネスでは、<性愛>が人間の最高の祝福として、明るく健康に描かれ、寿がれている。たぶん原作ではセックスそのものは観客に見せないのだろうが、この舞台では実際にやっちゃっており、それもまたむべなるかな!