映画 『パラサイト ― 半地下の家族』

[映画] 『パラサイト ― 半地下の家族』 TOHOシネマズ日比谷  1月7日

(写真はキム一家の住む半地下の家、朝鮮戦争時に作られた防空壕だが、現在でも住居として低所得の人々が住んでいるらしい、水圧の関係で水洗トイレが部屋の天井近くにあるのが悲しい、兄のギウと妹のギジョン、ギジョンがすごくいい!)

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 どういうジャンルにも入れにくい映画だが、私には、非現実が現実とコインの表裏のように一体になったシュールな不条理劇に見えて、ゴダール的な映画だった。嘘っぽさがどんどん重なっていった末に、まさかと思うとんでもないことが起こるのだが、この「まさか」の方に現実味があり、嘘っぽさが見事に回収されてしまう。そしてまた終幕にまた別の「まさか」があり、この「まさか」が抒情的で美しい終幕になっている(父と息子のモールス信号の会話)。つまり、「まさか」だったものが、いつのまにか必然に感じられる。そう、映画の作りが抜群に上手いので、偶然が必然になるのだ。そして描かれている家族愛が、この作品をこのうえなく美しいものにしている。二つの家族が登場し、主人公のキム一家は、詐欺で生きている貧困層だが、強い家族愛で結ばれていて『万引き家族』とよく似ている↓。

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 全員が失業中だったキム一家が、IT企業の社長で大富豪のパク一家に、家庭教師、運転手、家政婦などとして次々に全員「就職」し、いわばパク一家を乗っ取ってしまうのが「パラサイト」の意味だが、この「パラサイト」は嘘っぽい。「話がそんなうまくいくわけないじゃん、この後、どういう筋にするつもりなんだろう」と心配しながら私は見ていた。つまり「パラサイト」そのものがとても薄っぺらでシュールなのだ。だが、その後に来る「まさか」の出来事が「まさか」ではなくなるので、われわれは夢なのか現実なのかが分からなくなり、ここがまさにゴダール的。

 キム一家の四人が一人一人とても個性的に造形されているのがいい。大富豪のパク一家もよく造形されているが、キム一家が深い家族愛で結ばれていて、全員が以心伝心でとっさの危機に対処するのに対して、パク一家はどこか凡庸でぼんやりしており、危機管理能力がまったく欠如している。この違いも本作を面白くしている。『万引き家族』『家族を想うとき』『パラサイト』は、どれも貧困家族が主題になっていた。映画というものは、世界的な経済格差という現代の最大の問題としての現実を、どんなにシュールにしても、デフォルメしても、不条理化しても、やはり描いてしまうのだ。『パラサイト』は俳優が素晴らしい。特に妹のギジョン(パク・ソダム)!彼女が死んだのがとても悲しい。(写真↓は富豪のパク一家、妻は若くて可愛い(チョ・ヨジョン↓は韓国の石田ゆり子かな)、なるほどと納得)

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冒頭3分半の映像が↓。便器のすぐ上にだけ電波がきてスマホが繋がる!

https://www.youtube.com/watch?v=XbBWQYSiBrY