2005-09-01から1ヶ月間の記事一覧

熊本大学・集中講義

[日誌] 9月末の熊本大学・集中講義「時間論」より (写真は、熊本大学キャンパスの中央にある旧制第五高校記念館。左側のクスノキ(楠)の大木に注目を。構内には豊かに茂ったクスノキがたくさんある。9月28日撮影。) [今日の日誌は、講義を聴講した院生や学生…

小林よしのり『靖国論』(10)

[読書] 小林よしのり『靖国論』(幻冬舎 05.8.1) (写真は、古代ギリシアの戦死者の墓碑(BC420-410)。戦いに赴くアテナイの二人の若者、カイレデーモスとリュキアース。) 小林氏は、「日本のいわゆる<A級戦犯>は、国内法にも国際法にも一切違反していない」…

小林よしのり『靖国論』(9)

[読書] 小林よしのり『靖国論』(幻冬舎 05.8.1) (写真は、1945年10月7日、日本人に混じって銀座4丁目・三越銀座店前を散歩する米兵たち。丸腰で、くつろいだポーズ。特攻隊員の死からいくらもたっていない頃。) 昨日に続き、東京裁判について考える。勝者の…

小林よしのり『靖国論』(8)

[読書] 小林よしのり『靖国論』(幻冬舎 05.8.1) (写真は、1945年9月21日、軽井沢。米兵にチョコレートをねだる日本の子供たちと、見つめる大人たちの笑顔。玉音放送から僅か1ヶ月後の光景だ。) 小林氏は、東京裁判を激しく批判し、「勝者の敗者に対する復讐…

バーデン市立劇場『魔笛』

[オペラ] バーデン市立劇場公演『魔笛』 市川市文化会館 「どんな田舎芝居でも、フィガロを見ないよりは、見る方がずっとまし」と言った人がいるが(B.ウィリアムズ)、『魔笛』だってそうだ。バーデンはウィーン郊外の、モーツァルトも関係のある町だから、…

映画『亀も空を飛ぶ』

[映画] 『亀も空を飛ぶ』 B.ゴバディ監督 岩波ホール クルド人の監督が、クルド難民の子供たちを描いた、クルド語の映画。今まで見たことのない、不思議な映画だ。イラク戦争を巡る辛く悲しい物語だが、深く吸い込まれるような美しさがある。(写真は、クルド…

小林よしのり『靖国論』(7)

[読書] 小林よしのり『靖国論』(幻冬舎 05.8.1) リア王の三女コーディリアは、家族愛ゆえ自ら軍を率いて参戦したが、戦闘に負けて捕えられ獄死する。広義には戦死であろう。が、その獄死は、敵王エドマンドの命令の行き違いという偶然性に由来する。悔やんで…

小林よしのり『靖国論』(6)

[読書] 小林よしのり『靖国論』(幻冬舎 2005.8.1) 古代ギリシアのポリス、テーバイの王女アンティゴネは、敵軍に加わった「反逆者」である兄ポリュネイケスの遺骸を、埋葬を禁じる国王の命令に背いて埋葬した。それを咎められて、彼女は死に追いやられる。ア…

上毛新聞に書いたコラム(5)

[上毛新聞コラム] 「視点」 9月10日掲載 先祖帰りしたおとぎ話 ― 歌舞伎版『十二夜』 植村恒一郎 (新聞にはないが、写真は、公演パンフより。男装したヴァイオラとオリヴィア姫。) 東京・歌舞伎座の「七月大歌舞伎」は、何とシェークスピアの『十二夜』だっ…

小林よしのり『靖国論』(5)

[読書] 小林よしのり『靖国論』(幻冬舎 05.8.1) 昨日に引き続き、仏教は死者の霊魂を認めないことを再論する。小林氏は、「我々日本人は、神と共に生き、死者の霊魂と同じ空間に存在している」(p42)と、こともなげに述べているが、そんな簡単な話ではない。…

小林よしのり『靖国論』(4)

[読書] 小林よしのり『靖国論』(幻冬舎 05.8.1) 今日は、小林氏の宗教論の誤りを指摘したい。小林氏は、「宗教はすべて死者の霊魂の存在を前提する」と考えておられる。例えば、「墓地がすでに死者の霊魂の存在を前提にしている宗教的施設である」(p169)。「…

映画『せかいのおわり』

[映画] 風間志織監督『せかいのおわり』 渋谷 シネ・アミューズ 気分転換に映画館に行く。1月の『シルヴィア』以来だ。インディペンデント映画で、観客も少なかった。でも、なかなか味のある映画だ。東京で小さな観葉植物店をやっている二人の若者のところに…

小林よしのり『靖国論』(3)

[読書] 小林よしのり『靖国論』(幻冬舎 05.8.1) 小林氏は『靖国論』で繰り返し、慰霊=死者の霊魂の存在の承認=宗教、という等値を述べる。死者の慰霊は、すなわち死後の霊魂の存在を認めることであり、それはとりもなおさず宗教であると言われる。そして、…

小林よしのり『靖国論』(2)

[読書] 小林よしのり『靖国論』(幻冬舎 05.8.1) 小林氏の『靖国論』には、特攻隊員の遺書が繰り返し引用される。どれも、親や兄弟への愛惜の情、生まれ育った故郷の懐かしさなどが、簡潔に綴られている。その真摯な文章を読むとき、本来は生きるべきであった…

小林よしのり『靖国論』(1)

[読書] 小林よしのり『靖国論』(幻冬舎 05.8.1) 高橋哲哉氏の『靖国問題』については、宮崎哲弥氏や福田和也氏の議論を含めて、このブログで合計5回(4月21、23、26日、6月4、9日)論じた。今回、高橋氏とは対極の立場にある小林氏の『靖国論』を読み、色々と…

納富信留『哲学者の誕生』(2)

[読書] 納富信留『哲学者の誕生 −ソクラテスをめぐる人々』(ちくま新書、05.8.10) 本書第6章は、「日本に渡ったソクラテス」と題して、日本におけるソクラテス受容の問題を扱う。ソクラテスは明治初期には、知行合一を唱えた王陽明と重ね合わせて好意的に…

納富信留『哲学者の誕生』(1)

[読書] 納富信留『哲学者の誕生 −ソクラテスをめぐる人々』(ちくま新書、05.8.10) ちくま新書には、田島正樹『哲学史のよみ方』のような名著があるが、本書はまた違った意味で名著といえる。我々はプラトンを読むとき、そこに何か「哲学の理論」を見出そう…