2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

今日のうた5

[今月の歌5] (挿絵は、伊勢。三十六歌仙の一人で美女として名高い。勅撰集に採られた数多の歌には、今回挙げたような、初々しい官能の歌もある) ・ 彼一語我一語秋深みかも (虚子1950、「かも」は断定でない詠嘆、虚子の句は簡潔にして余韻が深い) 10.6 ・ …

ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』

[オペラ] イル・トロヴァトーレ 10月17日新国立劇場 ヴェルディ中期の傑作オペラ『イル・トロヴァトーレ(=吟遊詩人)』を観ました。ヴェルディといえば、英雄、王、軍人などが勇ましく活躍する「マッチョのオペラ」が多く、軟派へたれ系の私は、どちらかとい…

今日のうた4

[今日のうた4] (写真は上田三四二(1923〜89)、佐藤佐太郎と上田三四二は私の最も好きな歌人なので、これからたくさん挙げることになると思う。今回もそうだが、三四二には「光」を詠んだ秀歌が多い。) ・ 秋の野や花となる草ならぬ艸(くさ) (加賀千代女、千…

ヌスバウム『感情と法』(4)[男子の病理としての羞恥]

[読書] ヌスバウム『感情と法』(慶応大学出版会) (4) (承前) 今日は「細やかなやりとり」ができない男の子という問題。 「羞恥」の感情は、ナルシシズムの乗り越えに関る問題を抱えている。ヌスバウムによれば、「羞恥」は、自分の貪欲さを反省するという「…

ヌスバウム『感情と法』(3)[羞恥について]

[読書] ヌスバウム『感情と法』(慶応大学出版会) (3) (承前) 今日は「羞恥」についてです。 嫌悪が、人間の動物性にストレートに関る感情であったのに対して、「羞恥」は、動物的なレベルとは異なる人間固有の「自我のあり方」に基づく感情である。羞恥とは…

ヌスバウム『感情と法』(2)[嫌悪について]

[読書] ヌスバウム『感情と法』(慶応大学出版会) (2) (承前) 今日は「嫌悪」について。 >嫌悪感は、ほとんどの人間の生活の中に強く働いている感情である。嫌悪感によって、私たちの親密さの度合いは決まってくる。身だしなみに気を配るというような日常の…

ヌスバウム『感情と法』(1)[感情は認知的価値を持つ]

[読書] ヌスバウム『感情と法』(慶応大学出版会) (1)(写真は原書表紙。Hiding from Humanity というタイトルだが、Humanityという語の意味が通常とは違う。「おぞましさ」や「弱さ」を持つ「人間であること」の意味で使われている。邦訳ではこの絵は使われて…