2024-01-01から1年間の記事一覧

[折々の写真 ] 3、4月

[折々の写真 3、4月] 3.6 『高慢と偏見』 1995、 BBC制作の6時間もの、ジェニファー・エイル[リジー]、 コリン・ファース[ダーシー]、クリスティン・ボナム=カーター[ビングレイ]、スザンナ・ハーカー[ジェイン]、いずれも人物とキャストがぴったり、『高慢…

[オペラ] ヴェルディ《運命の力》 Metライブ

[オペラ] ヴェルディ《運命の力》 Metライブ Movixさいたま 4.22 (写真は舞台↓、男女の恋愛と戦争との関係が、本作の通奏低音のような主題となっている、それがとてもよく分る演出だった) 《運命の力》はオペラとしては非常に深みのある作品だが、やや「問題…

[演劇] 井上ひさし 『夢の泪』 こまつ座

[演劇] 井上ひさし 『夢の泪』 こまつ座 紀伊国屋サザンシアター 4.17 (舞台は↓、ミュージカルっぽく、喜劇仕立てだが、内容はド直球の史劇、東京裁判で戦犯とされた日本人被告の弁護人を務めることは、それだけで複雑な政治的圧力の渦巻く中心に置かれるこ…

[演劇] 平田オリザ 『S高原から』 駒場アゴラ

[演劇] 平田オリザ 『S高原から』 駒場アゴラ 4.15 軽井沢?あたりにある高級サナトリウムの面会室、裕福な若者たちだが、みな自分の死を予感しており、見舞いの友人たちと一緒に明るくふざけ合っているが、孤独は深い↓ アゴラ閉館で「さよなら公演」の一つ…

[今日の絵] 4月前半

[今日の絵 4月前半] 1 Bottichelli : 春 1482 「わが世の春」「青春」「春画」など、「春」は俳句の季語だけでなく、絵画でも普遍的主題、「春」は我々にとって何よりもまず「喜び」の季節だろう、女にとっても男にとっても 2 Albert-Emile Artigue : 春の花…

[演劇] 劇団道学先生 『東京の恋~さほどロマンチックでもなく~』

[演劇] 劇団道学先生 『東京の恋~さほどロマンチックでもなく~』 新宿シアタートップス 4月10日 初めて知る劇団だが、素晴らしい舞台だった。岸田國士「頼母しき求縁」1930、別役実「その人ではありません」1981の二作に、現代の深井邦彦「うそぶく」を組…

[展覧会] ホキ美術館「第5回 私の代表作」

[展覧会] ホキ美術館「第5回 私の代表作」 ホキ美術館 4月4日 今回見る絵は、何度目かのものが多いのだが、それにしても、〈今、ここに存在する人間〉というものは、ただそれだけで、なぜこれほど美しいのだろう! 野田弘志 「崇高なるもの」OP.9 2023 これ…

[展覧会] 大吉原展 (東京藝大美術館)

[展覧会] 大吉原展 (東京藝大美術館) 3月29日 それにしても、吉原の巨大さには驚いた。375m×280mで10万平米、東京ドーム2個分強はあり、常時3000人以上の遊女がいたという。江戸は、パリもロンドンも及ばぬ世界一の大遊郭都市とは知っていたが、これほど巨…

[私の百人一首] その3

[私の百人一首] その3 65 眉根よせて眠れる妻を見おろせり夢にてはせめて楽しくあれよ (上田三四二1964『雉』、妻が「眉を寄せて」眠っている、辛い夢を見ているのだろうか、「せめて夢くらいは楽しくあってほしい」と妻をいたわる) 66 あの夏の数かぎりなき…

[今日の絵] 3月後半

[今日の絵] 3月後半 16 Sofonisba Anguissola : 本人を描く師のベルナディノ・カンピ1559 ソフォニスバ・アングイッソラ1532-1625はイタリアの女性画家、若くしてスペイン宮廷に招かれた、この絵は、先生が自分を描いているシーンを自分が描いた面白い絵、顔…

[演劇] マックス・フリッシュ『アンドーラ』 文学座

[演劇] マックス・フリッシュ『アンドーラ』 文学座 3月22日 (写真↓は舞台、「自分たちは加害者ではない」という自己欺瞞に逃げ込む「アンドーラ国」の人々、そして主人公である、教師と彼の息子、父は「息子は養子のユダヤ人」と嘘をついてきたが、実は愛人…

[今日の絵] 3月前半

[今日の絵] 3月前半 1 de Vinci : ラ・ベル・フェロニエール1490 「フェロニエール」とは、額に着けられている金細工の飾り、ミラノのルドヴィコ・スフォルザ公の恋人であるルクレツィア・クリベリか、若々しくて生き生きとしており、とりわけ眼差しが美しい…

[オペラ] プーランク≪カルメル会修道女の対話≫ 新国 研修所公演

[オペラ] プーランク≪カルメル会修道女の対話≫ 新国 研修所公演 3.1 (写真は舞台、下は開幕、左からラ・フォルス侯爵、娘ブランシュ、その兄) これまで3回ほど観た舞台と、今回は大きく印象が違った。その理由は、ブランシュを前景に出して、コンスタンスが…

[私の百人一首] その2

[私の百人一首] その2 34 楽しみは妻子(めこ)睦まじくうちつどひ頭(かしら)並べてものを食ふ時 (橘曙覧(あけみ)「独楽吟」、作者1812-68は幕末の歌人、国学者、平易な歌を詠んだ、この歌も家族愛がほほえましい) 35 君とわがたゞ身二つのかくれ里かくれはつ…

[哲学] 植村恒一郎:「人生よ、自由な遊びであれ ― 『ラモーの甥』から『推し、燃ゆ』まで」

[哲学] 植村恒一郎:「人生よ、自由な遊びであれ ― 『ラモーの甥』から『推し、燃ゆ』まで」 (『ひとおもい』第5号、2023年7月) 序 ディドロ『ラモーの甥』は、彼の死後、たまたま原稿を読んだゲーテが感動し、自分でドイツ語に訳して出版したことによって日…

[折々の写真] 1、2月

[折々の写真] 1、2月 1.3 カトリーヌ・ドヌーブ1943~、『シェルブールの雨傘』1964 ドヌーブは、本作とトリュフォー『終電車』1980が、代表作と思われるが、顔の美しさもさることながら、全身に溢れるエレガンスこそ彼女の魅力、4分間の動画 「シェルブール…

[折々の言葉] 1、2月ぶん

[折々の言葉] 1、2月ぶん 哲学(=知を愛すること)は、その名前を、一方では、愛から、つまりあまねき恍惚という原理から、他方では、その本来の目的である根源的な知から、得ている。(シェリング『自由論』) 1.1 愛というのは単純に肯定し合うことではなく、…

[今日の絵] 2月後半

[今日の絵] 2月後半 16 ラファエロ : 聖家族1506 「聖家族」は西洋絵画の長く続く深い主題、聖母マリアと幼子のイエスは、母が子を生み人類は続いてゆくことを象徴するか、父のヨセフはいることもあり、いないこともあり、子どもの洗礼者ヨハネがいることも…

[哲学] 谷口一平:「マイナス内包」としての性自認の構成

[哲学] 谷口一平:「マイナス内包」としての性自認の構成 『情況』2024冬号 大変に面白い優れた哲学論文。ただし、植村はその主張内容は誤っていると思うので、その部分のみを「反論」として以下に箇条書きにする。(引用数字は『情況』の頁数) (1) 「「性自…

[演劇] 寺山修司『不思議な国のエロス』

[演劇] 寺山修司『不思議な国のエロス』 新国 2月19日 (写真↓は舞台) 寺山修司が1965年に、浅利慶太の要請で日生劇場のために、アリストパネス『女の平和』をミュージカル化したものらしい(日生劇場では上演されず、2014年にSpace早稲田で初演? 正確には知…

[演劇] T・ウィリアムズ『欲望という名の電車』 鄭義信演出

[演劇] T・ウィリアムズ『欲望という名の電車』 鄭義信演出 新国立劇場 2月15日 (写真↓は、ブランチ[沢尻エリカ]、スタン[伊藤英明]、ステラ[清水葉月]、ともに名演) 鄭義信演出が非常にいい。笑わせる滑稽な部分を強調するが、チェホフと同様、笑いが深けれ…

[演劇] 女歌舞伎『小栗判官と照手姫』 Project Nyx

[演劇] 女歌舞伎『小栗判官と照手姫』 Project Nyx 下北沢 ザ・スズナリ 2月13日 (写真↓は舞台、雰囲気が明るくて楽しい) 「女歌舞伎」というのがいい。出雲のお国が歌舞伎を創始した江戸の初期は、「女歌舞伎」だったのだから。とにかく素晴らしい舞台だ。…

[今日の絵] 2月前半

[今日の絵] 2月前半 1 ダヴィンチ : モナリザ1505頃 写真を撮るとき、よく「はい、チーズ」とか言いますね。すこし<笑む>感じの顔が、人間、いちばん<いい顔>なのだろうか。女性の人物画は、「かすかに微笑んでいる」「少し笑っている」顔が多いような…

[オペラ] ダニエル・カターン≪アマゾンのフロレンシア≫ Metライブ

[オペラ] ダニエル・カターン≪アマゾンのフロレンシア≫ Metライブ Movixさいたま 2月7日 (舞台↓、台本は、ガルシア・マルケスの弟子のマルセラ・フエンテス=ベレン、なるほどマジック・リアリズムに溢れている) メキシコ人作曲家によるスペイン語のオペラで…

[演劇] シェイクスピア『オセロー』 こまばアゴラ劇場

[演劇] シェイクスピア『オセロー』 こまばアゴラ劇場 2月2日 (↑オセロ[佐藤滋]とデズデモーナ[伊東沙保]) 何よりもデズデモーナが伊東沙保なので観劇したが、彼女が一人二役でイアゴーも演じているのに驚愕。下記も、みな共役で、三人がそれぞれ、キャシオ…

[オペラ] アンソニー・デイヴィス ≪マルコムX≫ Metライブ

[オペラ] アンソニー・デイヴィス ≪マルコムX≫ Metライブ 東劇 1月29日 (写真は舞台、ニューヨークの空に宇宙船が現れ、そこからマルコムXが降りてくる) このように難しい主題がオペラで表現されることに驚かされた。1986年初演で人気を博したが、2001年の貿…

[私の百人一首] その1

[私の百人一首] その1 1 春の苑(その)紅(くれなゐ)にほふ桃の花下照(したで)る道に出(い)で立つ乙女 (大伴家持『万葉集』巻19、明けましておめでとうございます。今日からは、これまでの「今日のうた」の中から選んだ「私の百人一首」を毎日一つ投稿します) …

[今日の絵] 1月後半

[今日の絵] 1月後半 21 Pieter Bruegel the Elder : 鳥の罠のある冬の風景1565 戸外にいる人間を描く場合、人間の周囲の空間に、道、家、空、木々、畑、山、川などあって、奥行きが全く違う。この絵は右上右下に烏がたくさんいて、右下の板の「罠」が何か可…

[今日の絵] 1月前半

[今日の絵] 1月前半 1 Vermeer : ギターを弾く少女 1672 音楽する人は、絵に多く描かれた主題、人の感情に特有なものが体勢や表情に現れるからだろう、フェルメールの描く少女は曖昧な表情が多いがこれは違う、とても嬉しそうで明るく、恋人が横にいるのか…

[演劇] ホフマンスタール/宮城聡『ばらの騎士』 SPAC

[演劇] ホフマンスタール/宮城聡『ばらの騎士』 SPAC 1月7日 (↑左から、ゾフィー[宮城嶋遥加]、オクタヴィアン[山本美幸]) R.シュトラウスの有名なオペラだが、ストレートプレイにしたのはたぶん世界初。根本卓也の作曲した音楽が少し付いているが、シュト…