[今日の絵] 1月前半

[今日の絵] 1月前半

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3 Velazquez : アポロンの頭部の習作1630

ベラスケス30歳の作、「アポロン」は、もっとも美しい肉体をもつ男性神、プラクシテレスの彫像もそうだが、多くのアポロンは少年の姿に造形されている、この絵も、斜め後ろからにもかかわらず、顔の輪郭が明瞭で、頬が柔らかく、ソフトな感じの美少年であることが分る

 

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4 Degas : ジョセフ・アンリ・アルテスの肖像 1868

アルテス(1826-1895)はフルートの奏者かつ教師、フルート界のバイエルと呼ばれる『アンリ・アルテス フルート教則本』は日本でも使われている、ドガ(1834~1917)と同時代だが少し年長、友人だったのか、目に優しさがあり、子供にフルートを教えるのが好きだったのだろう

 

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5 Klee : 小さな旗のあるマスク1925

この「マスク」とは「ピエロの仮面」だろうか、あるいは丸いガラス板に線を描いた仮面なのか、単純化と抽象化がなされているが、実はこの人の顔の特徴がよく表現されているのではないか

 

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6 Modigliani  : アリス 青いドレスを着た黒髪の少女1918

モディリアーニ(1884~1920)の描く女性は、妻のジャンヌ・エビュテルヌなど長い顔が多いが、この「アリス」は普通で、首も曲げずに、瞳も描かれている、落ち着いた感じの可憐な少女、青を中心とした色調が非常に美しい

 

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7 Mattisse  : ピンクとブルーの顔の肖像画1936

マティスは、伝統的な陰影を使わずに立体感を出すために、顔の両側を別の色にして、中央に分割線を引いたが、1905年の「夫人像」では緑色の太い線だったので不評だった、この絵では色のある太い分割線はない、絵の全体の色のバランスがとてもよい、気の強そうな女性なのか

 

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8 Picasso  : 女性の胸像1936

異なる視点から見た面を重ねて描くのが「キュビズム的」ならば、この絵は口以外はそうでもない、同じ年に女性の胸像をもっとキュビズム的に描いた絵もあるから、色々な描写が平行的に試みられている、初期ピカソと同様、この絵も単純な線と色だけで見事な立体感を出している

 

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9 Magritte : Anne-Marie Crowet, 1956

マグリット(1898~1967)はシュールリアリズムの画家だが、この絵は特にシュールでもない、アン=マリー・クロウエは父ピエール・クロウエがマグリットの友人でパトロンだった、この絵はこれが全体で、ここまで大きく顔をアップしたのがシュールなのかもしれない

 

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10 廣戸絵美 : 画家 2011

廣戸絵美1981~は写実の画家、広島市立大と卒業後も北海道で野田弘志に師事した、ここに描かれているのは師の野田弘志、「この「画家」との出会いは、私にとって最高の幸運であり、同時に最大の試練であると感じている」と、彼女は絵に自註している

 

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11 Velazquez : 朝食 1618

ベラスケス(1599~1660)の十代の作品、宮廷に仕える前、彼は庶民の生活を生き生きと描いた、左の老人や中央の少年は他の絵にも登場、右側の青年がベラスケスその人という説もある、それにしてもこれらの人物たちは生き生きしている、人間の生をこのように描くのが画家の使命、ネットで指摘があったが、現代のスマホの自撮りのよう

 

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12 Rubens : ヤン・ブリューゲルとその家族 1614

左上のヤン・ブリューゲルは、画家でルーベンスの友人、ルーベンスと共同制作もした、その息子のヤン・ブリューゲルも画家、この絵の子供のどちらかだろう、ルーベンスの描く「家族」はどれも素晴らしく、親密さと幸福感にあふれている

 

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13 Manet : アルジャントゥイユの庭でのモネ一家 1874

1871年、まだ不遇だった31歳のモネはパリ郊外のアルジャントゥイユに転居、そこで多くの絵を描いた、友人の画家たちもしばしばアルジャントゥイユを訪問、これはマネが描いた、庭作業をするモネ、妻のカミーユ、息子のジャン、絵の全体の調和がすばらしい幸福な家族

 

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14 Goch : ジャガイモを食べる人々 1885

ゴッホ(1853~1890)の最初の本格的な絵画作品、彼の画家の活動は以後わずか5年間だ、彼はこの絵に満足したが周囲からは評価されなかった、食事はジャガイモとお茶だけ、幸福な家族という感じでもない、だが、この絵をじっと見つめていると、貧しい食事をする彼らの真剣に生きている姿が限りなく愛おしい

 

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15 Renoir : ベルヌヴァルでの朝食 1898

ベルヌヴァルは北フランスの海岸の町、ルノワールはそこで幾つも絵を描いている、この絵は、夫人?と二男ジャン(4歳)、そして手前はたぶん長男ピエール(14歳)か、家族のふだんの「朝食」光景だが、幸せな雰囲気が漂っている

 

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16 Benson : 森の中の子供たち1905

ベンソン(1862~1951)はアメリカの画家、家族をたくさん描いた、この絵は彼の三人の娘たち、夏の避暑をメーン州ノース・ヘヴンで過ごした時のもの、15歳の長女エレノアと妹二人は何か遊びをしているのか、森の中にも明るい光が射して、白い服が美しい

 

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17 Picasso : 軽業師の家族と猿 1905

1905年からピカソの画風はガラリと変る、彼は毎晩サーカスに行き、曲芸師たちを描いた、「薔薇色の時代」と言われ全体が明るい、アポリネールは「スラリとした道化師たち・・・本物の庶民の若者がいる」と書いた、何という繊細な体の線! 愛に満ちた家族を羨ましそうに見る猿もいい

 

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18 Matisse : 画家の家族 1911

「交響楽的アトリエ風景」と呼ばれる4点の絵の一つ、左の夫人は刺繡に励み、息子のピエールとジャンはチェスを、右の長女マルグリットは本持っている、この絵は、花模様など装飾が主人公で、人物は付け足しにすぎないという意見もあるが、そうなのだろうか

 

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19 Schiele : 家族 1918

1918年にスペイン風邪で死んだエゴン・シーレ(1890~1918)が最後に描いた絵、彼は捻じれのある独特の肉体性を描いた、この絵も当初「しゃがみカップル」と呼ばれ話題になった、夫はシーレ本人だが妻はエディスではなく元カノらしい、子供はまだいなかったので甥のトニがモデルに

 

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20 Kuzma Petrov-vodkin : 1919アラーム, 1934

クズマ・ペトロフ-ヴォドキン(1878~1939)はロシア・ソ連の画家、この絵はロシア革命後の内戦で、ユデーニチ将軍の反革命軍がペテルブルクを包囲した時、労働者階級の家族が警報を聞いて光が外に漏れないように警戒している、壁紙など貧しいが、家族というものの原点が描かれている