2018-01-01から1年間の記事一覧

今日のうた(92)

[今日のうた] 12月ぶん (写真は葛原妙子1907〜85、現実と幻視が混淆したような、前衛的でモダニズムあふれる短歌を詠んだ) ・ 初冬(はつふゆ)や訪(とは)んとおもふ人來り (蕪村、「相手のところへ行こうと思っていたら、向こうから来てしまった」、きっと、…

原美術館 『Lee Kit 展』

[美術展] 原美術館 『Lee Kit 展』 品川・原美術館 12月16日 (写真右は、展覧会のタイトル「僕らはもっと繊細だった We used to be more sensitive」、下は展示、写真は原美術館ブログからの借用が中心だが、それ以外は記す) 原美術館が2年後に閉館するとい…

ヤエル・ロネン『コモン・グラウンド』

[演劇] ヤエル・ロネン『コモン・グラウンド』 東京芸術劇場・地下アトリエ 12月13日 (写真右はポスター、それ以外はマキシム・ゴーリキー劇場の舞台写真、下は、今はベルリンで働く難民の若者たちが故郷のボスニア・ヘルツェゴビナへ一緒に行った5日間の旅…

風姿花伝、ジュネ『女中たち』

[演劇] ジュネ『女中たち』 東京・下落合 風姿花伝シアター 12月12日 (写真右は、姉のソランジュ(那須佐代子)と奥様(コトウロレナ)、原作とは違って奥様は若い、写真下は、妹のクレール(中嶋朋子)とソランジュ、手前の丸い輪のようなものは少し傾いたり回転…

斎藤憐、民藝『グレイクリスマス』

[演劇] 斎藤憐作、民藝『グレイクリスマス』 三越劇場 12月8日 (写真右はポスター、下は、五條伯爵家の人々、右端の階段にいるのが伯爵、その下は、伯爵の後妻の華子と日系人将校のジョージ伊藤) 劇団・民藝の久しぶりの再演。私は、1999年2月1日、5日と、渡…

勅使河原三郎/シェーンベルク『月に憑かれたピエロ』

[ダンス] ベルク『抒情組曲』・シェーンベルク『月に憑かれたピエロ』 東京芸術劇場 12月4日 (写真右はポスター、下は、『月に憑かれたピエロ』の勅使河原三郎と佐東利穂子) 勅使河原三郎と佐東利穂子が、二つの曲にダンスをつける。とても美しい舞台だった…

宮藤官九郎演出『ロミオとジュリエット』

[演劇] 宮藤官九郎演出『ロミオとジュリエット』 下北沢、本多劇場 12月2日 (写真右は、舞踏会での一目惚れシーン、palm to palm is holy palmer’s kissのところ、ジュリエット(森川葵)は若々しく初々しいが、ロミオは、引き籠りのグズ男ダメ男くん、しかも…

うさぎストライプ『空想科学Ⅱ』

[演劇] うさぎストライプ『空想科学Ⅱ』 駒場・アゴラ劇場 11月30日 (写真右はポスター、下は舞台、70歳近くまで生きて死んだ妄想少女と彼女の服) 大池容子作、うさぎストライプ公演は、『バージンブルース』が傑作だったが、今回の『空想科学Ⅱ』もとてもいい…

今日のうた(91)

[今日のうた] 11月ぶん (写真は松本たかし1906〜56、能楽師の家に生まれたが病を得て、能楽師は断念、虚子に師事して「ほととぎす」で活躍し、美意識の高い句を詠んだ) ・ パーティーにわれらはわらふ誰とゐても貿易風のやうに笑へる (睦月都「十七月の娘た…

平田オリザ『ソウル市民/ソウル市民1919』

[演劇] 平田オリザ『ソウル市民/ソウル市民1919』 駒場アゴラ劇場 11月3日 (写真はすべて『ソウル市民1919』、ただし今回ではない上演も含む、写真右は、客として来ている日本人力士、「ごっつあんです」とドスの効いた声を出すコワモテだが、実はとても弱…

藤倉大『ソラリス』

[オペラ] 藤倉大『ソラリス』 演奏会形式 池袋、東京芸術劇場 10月31日 (写真右は今回の日本初演の舞台、写真残りはすべてヨーロッパ劇場版から、↓下はシャンゼリゼ初演から、今回は演奏会形式でダンスがない、これではこの作品のよさは失われてしまう) スタ…

今日のうた(90)

[今日のうた] 10月ぶん (写真は高野素十1893〜1976、虚子の高弟の「4S」の一人、簡素で即物的な句を特徴とする、血清学、法医学を専門とする医学者でもあり、新潟医大学長などをつとめた) ・ 野分やんで人ごゑ生きぬこゝかしこ (原石鼎1886〜1951、「台風…

D.ジャンヌトー演出、『ガラスの動物園』

[演劇] テネシー・ウィリアムズ『ガラスの動物園』 東京芸術劇場 10月28日 (写真右は、引き籠りの少女ローラが、高校で片想いだったジムとつたないダンスを踊るシーン、下は、ローラのタイプ用紙を破る母アマンダ、手前はガラスの動物たち) 『ガラスの動物園…

ケラ・サンドロヴィッチ『修道女たち』

[演劇] ケラ・サンドロヴィッチ『修道女たち』 下北沢、本多劇場 10月20日 (写真右と下は、舞台、6人の修道女と一人の知恵遅れの村娘) 2006年に観たケラの『労働者M』は、カフカ的な寓話をナンセンス劇仕立てにしたもので、物語を作る構想力に感心した覚えが…

ケントリッジ演出、『魔笛』

[オペラ] モーツァルト『魔笛』 新国立劇場 10月14日 (写真右は舞台、タミーノとパミーナの試練の場、黒板にチョークで絵を描くように、黒い地と白い光線で舞台全体が構成される。写真下も舞台、舞台全体が蛇腹カメラの内側にあるという想定なので、奥行き感…

NTlive ロルカ原作『イェルマ』

[演劇] ロルカ原作、S.ストーン翻案『イェルマ』 TOHOシネマズ日本橋 10.3 (写真右は、終幕、夫と争うイェルマ(本作ではただ「彼女」とだけ呼ばれている)、写真下は、パーティーでの孤独なイェルマ) ロンドンで非常に話題になった『イェルマ』(ロルカの原作…

今日のうた(89)

[今日のうた] 9月のぶん (写真は東直子1963〜、歌誌「かばん」同人、早稲田大学教授もつとめる、ニューウェーブ短歌を代表する歌人の一人) ・ みずからの灯りを追って自転車は顔から闇に吸われてゆけり (大森静佳『てのひらを燃やす』2013、自転車のライトは…

ウースター・グループ『タウンホール事件』

[演劇] ウースター・グループ『タウンホール事件』 横浜・KAAT 9月29日 (写真右は舞台、右端はイギリスのフェミニストであるジャーメイン・グリア、中央左のジーンズジャケットの女性はレズビアン活動家のジル・ジョンストン、彼女の左の男性は二人とも…

河合祥一郎訳・演出『お気に召すまま』

[演劇] シェイクスピア『お気に召すまま』 シアター・トラム 9月9日 (写真右は、ロザリンド[太田緑ロランス]、男装して叔父の宮廷を脱出する前の彼女は暗い、写真下は舞台、奥の方にレスリング試合に負けて退出するチャールズが見える) 「お気に召すまま」は…

ミキエレット演出・プッチーニ「三部作」

[オペラ] プッチーニ「三部作」 二期会 新国立劇場 9月7日 (写真右は、同内容の2012年ヨーロッパ公演『外套』、大きなコンテナの使用がとても効果的、下は同『ジャンニ・スキッキ』だが、部屋の部分に同じコンテナが使われており、終幕、蓋が閉じてコンテナ…

今日のうた(88)

[今日のうた] 8月のぶん(挿絵は杉崎恒夫1919〜2009、戦後長い間、東京天文台に勤めた、歌誌「かばん」に属し、口語短歌を詠んだ、『パン屋のパンセ』が代表歌集) ・ 炎昼いま東京中の一時打つ (加藤楸邨1953『まぼろしの鹿』、炎暑の東京の午後1時、屋外の人…

サルトル『出口なし』

[演劇] サルトル『出口なし』 新国立劇場小H 8.29 (写真右はポスター、下は舞台、左からエステル(多部未華子)、ガルサン(段田安則)、イネス(大竹しのぶ)) この作品は、死んだ三人の男女が、ある部屋に閉じ込められ、ここが地獄なのだという話だが、サルトル…

OUDS シェイクスピア『十二夜』

[演劇] OUDS公演 シェイクスピア『十二夜』 さいたま芸術劇場小ホール 8月5日 (写真右はポスター、下はオリヴィア役のChloé Delanney、もう一枚はセバスチャンを口説くオリヴィア) オックスフォード大学の学生が上演する『十二夜』を観ました(さいたま芸術劇…

今日のうた(87)

[今日のうた] 7月10日〜31日(写真は、飴山實1926〜2000、朝日俳壇選者をつとめ、化学者でもあり山口大学教授) ・ 金魚屋のとどまるところ濡れにけり (飴山實『少長集』1971、こういう金魚屋は今もいるだろうか、大きめのリアカーに水槽をたくさん載せて、水…

コンヴィチュニー演出『魔弾の射手』

[オペラ] コンヴィチュニー演出・ウェーバー『魔弾の射手』 東京文化会館 7.22 (写真右は、悪魔のザミエルに扮する大和悠河、下も同じだが、天使の姿をしたり、狼の仮面をつけたりしている) コンヴィチュニー演出を見るのは、『皇帝ティト』『サロメ』『マク…

今日のうた(86)

[今日のうた] 6月1日〜30日 (写真[の左]は石川不二子1933〜、歌誌「心の花」選者、東京農工大学農学部在学中の1954年[当時農工大に女子学生はほとんどいなかった]、『農業実習』にて第1回短歌研究賞に二席入選) ・ 道のべの低きにほひや茨(いばら)の花 (黒柳…

てがみ座『海越えの花たち』

[演劇] 長田育恵作、てがみ座『海越えの花たち』 6月26日 新宿・紀伊國屋ホール (写真右はポスター、下は舞台から、韓国の慶州駅でもの売りをして生きている日本人妻たち、左から二人目が主人公の風見千賀(石村みか)) てがみ座はこれが初見だが、本当に奇蹟…

井上ひさし『父と暮せば』

[演劇] 井上ひさし『父と暮せば』 俳優座劇場 6月13日 (写真右は、娘の美津江[伊勢佳世]と父の竹造[山崎一]、下は、雷を怖がって押し入れにこもる二人、市内で原爆の直撃を受けた二人は雷の「ピカッ」にも体が怯える) 24年間、繰り返し再演されてきた有名な…

今日のうた85(5月)

[今日のうた] 5月1日〜31日 (写真は日野草城1901〜56、「ホトトギス」出身だが、若い頃は女性のエロスをたくさん詠んだ人、新婚初夜を詠んだ「ミヤコ ホテル」10句が虚子の逆鱗に触れて「ホトトギス」を除名された) ・ ライラックの莟(つぼみ)ひそやかにまだ…

シェイクスピア『ヘンリー五世』

[演劇] シェイクスピア『ヘンリー五世』 新国立劇場 5月31日 (写真右は、フランスのキャサリン王女に求愛するヘンリー五世、写真下は舞台、支配階級である王や諸侯(貴族)、中級兵士、下級兵士などがそれぞれとても個性豊かに生き生きしている、兵士たちが話…