2008-01-01から1年間の記事一覧

古市剛史『性の進化、ヒトの進化』(3)

[読書] 古市剛史『性の進化、ヒトの進化』(朝日選書 1999) (写真:ボノボの集団は、メスと子供たちがつねに中心にいる。ボノボの群れでは、高位のオス同士がケンカすると、ただちにそれぞれの母親がかけつけて加勢し、ときには母親同士が戦いを代わって引き…

古市剛史『性の進化、ヒトの進化』(2)

[読書] 古市剛史『性の進化、ヒトの進化』 (朝日選書 1999) (写真右は、1974年にエチオピアで発見された300〜350万年前の女性の全身の骨。「ルーシー」と呼ばれている。写真下は、1978年にケニアのラエトリで発見された、360万年前のヒトの足跡。腕を組んで…

古市剛史『性の進化、ヒトの進化』(1)

[読書] 古市剛史『性の進化、ヒトの進化』(朝日選書 1999) (写真はボノボ。チンパンジーに近いが別種。20世紀の発見で、アフリカのコンゴに約2万匹が生息。生殖と無関係なコミュニケーションとしての多様な性行動が、人間とよく似ている。そのことが、ヒトの…

南アフリカの『魔笛』

[オペラ] 南アフリカのモーツァルト『魔笛』 東京国際フォーラムCホール (写真右は踊り、下は、パミーナを囲む三童子(=精霊)、とっても可愛い女の子たちでした。そしてタミーノ) 南アフリカで活動するイギリス人、ドーンフォード=メイが、黒人のさまざまな…

コルネイユ『舞台は夢』

[演劇] コルネイユ『舞台は夢』 新国立劇場・中ホール (写真右は、クランドール(堤真一)とイザベル(秋山菜津子)。写真下は、イザベル、マタモール(段田安則)、リーズ(高田聖子)) モリエール、ラシーヌ、コルネイユなどのフランス古典主義演劇は、あまり上演…

演劇版『ドン・キホーテ』

[演劇] 原田一樹脚本・演出『ドン・キホーテ』 静岡芸術劇場 (写真右は、ギュスターブ・ドレの、下は、ピカソの絵) セルバンテスの長編小説『ドン・キホーテ』を演劇化する試み。上演は2時間。原作『ドン・キホーテ』は、風車に突っ込むドン・キホーテの冒険…

新国『ドン・ジョバンニ』

[オペラ] モーツァルト『ドン・ジョバンニ』 新国立劇場 (写真右はジョバンニ、下は、全体がベネチアへ移された舞台光景。左側の人物はドンナ・エルヴィラとレポレロ。) 視覚的にも美しい古典的な演出で、『ジョバンニ』のデモーニッシュな側面が印象に残る…

山口二郎『若者のための政治マニュアル』(3)

[読書] 山口二郎『若者のための政治マニュアル』(講談社現代新書 08年11月刊) (下記は、非正規雇用者の割合。全体で3分の1強、男性で2割に達した) 前回見たように、「リスクへの対応」という視点に立つと、現代の政治の数多くの争点の必然性がよく分かる。…

山口二郎『若者のための政治マニュアル』(2)

[読書] 山口二郎『若者のための政治マニュアル』(講談社現代新書 08年11月刊) 今日は第3章の、リスク論を見てみよう。山口氏によれば、人間には、多くの人々に共通する苦労、必ず遭遇しなければならない試練や難題が存在する。これが「リスク」の基本である。…

山口二郎『若者のための政治マニュアル』(1)

[読書] 山口二郎『若者のための政治マニュアル』 (講談社現代新書 08年11月刊) 北海道大学の山口二郎氏の近著。読みやすく、分かりやすく、重要なことが書かれているので、その論点を紹介したい。私は今、勤務先の大学で、来年の4月に開設する総合教養学科の…

安部公房『友達』

[演劇] 安部公房作/岡田利規演出『友達』 三軒茶屋・シアタートラム (写真右は練習風景、下は俳優たち。なかなかの豪華陣) 1967年作の戯曲を、劇団チェルフィッチュを主宰する若手の劇作家、岡田利規が演出。戯曲を読んだときは、こんなつまらない作品がな…

宮城聰『ハムレット』

[演劇] 宮城聰演出『ハムレット』 静岡芸術劇場(写真右はポスター、写真下は2008年夏のRSC公演におけるハムレットとガートルード) 劇団クナウカを主宰する演出家の宮城聰の新演出。通常なら上演に5時間を要する『ハムレット』を、1時間40分に再構成した。人…

スパイアーズ『エミリ・ディキンスン家のネズミ』

[読書] エリザベス・スパイアーズ『エミリ・ディキンスン家のネズミ』(長田弘訳、みすず書房、07年9月)(写真右は、ディキンソンの、残っているたった一枚の写真。下は彼女の生家) 勤務先のディキンソン専攻の大学院生に薦められて読んだ。著者はアメリカのデ…

内田樹・鷲田清一『大人のいない国』

[読書] 内田樹・鷲田清一『大人のいない国』(プレジデント社、08年10月刊)(写真は、韓非子)なかなか面白い本だ。内田氏と鷲田氏の対談と、それぞれの論考からなる。私には、序論にあたる二氏の対談(第1章)と、ネット言論を「呪いの言葉」という人類学的視点か…

本谷有希子『幸せ最高ありがとうマジで!』

[演劇] 本谷有希子作・演出『幸せ最高ありがとうマジで!』 渋谷・パルコ劇場 本谷有希子(もとやゆきこ)は1979年生まれの若い劇作家。私は今回初めて見たが、なかなか良くできた面白い舞台だった。本谷は、自ら劇団を主宰して、2000年に自作『腑抜けども、悲…

『騎士オルランド』

[オペラ] ハイドン『騎士オルランド』 北とぴあ(写真右はポスター、写真下は2007年11月Theater an der Wienの舞台) バロックオペラはあまり日本で上演されないので、貴重な機会だった。もっとも『騎士オルランド』(1782)は、厳密にはバロックオペラではなく…

ディドロ『修道女』

[演劇] ディドロ『修道女』 劇団昴公演 板橋・サイスタジオ大山(写真右はポスター。写真下は、リヴェットによる映画版『修道女』(1967)のアンナ・カリーナ(右)と、ディドロ原作の小説のコミック版。修道女シュザンヌが、上半身裸にされ縄を鞭にして自分の背…

モーツァルト『愚か娘になりすまし』

[オペラ] モーツァルト『愚か娘になりすまし』、モーツァルト劇場公演、浜離宮朝日ホール (写真右は、2003年アメリカのフレッチャー・オペラ公演。中央の女性はヒロインのロジーナ。「(両側の)お二人と結婚したいわ」という「困ったちゃん娘」。写真下は、200…

フェルメール展

[美術館] フェルメール展 東京都美術館 (「手紙を書く婦人と召使」 今回、一番気に入りました) 世界で30数点しかないフェルメールの絵を、7つ一緒に並べて見られるのは嬉しい。とりわけ、聖書やギリシア神話を題材にした初期の作品が見られたのは収穫だった…

野田秀樹『The Diver』

[演劇] 野田秀樹『The Diver』 三軒茶屋・シアタートラム(写真右は、六条御息所を演じるキャサリン・ハンター、源氏「葵」の車争いの場より。写真下は、能『海人』の一場から題材を取ったもの。手前が海女に扮するキャサリン・ハンター、後方が野田秀樹。) …

ワーグナー『トリスタンとイゾルデ』

[オペラ] ワーグナー『トリスタンとイゾルデ』 飯守泰次郎指揮 東京シティフィル ティアラ江東(写真右はポスター、左はパリオペラ座の『トリスタン』。今年7月、東京でも上演。) 自分の原稿締切と重なり、パリオペラ座公演を観られなかったので、東京シティ…

『崖の上のポニョ』

[映画] スタジオ・ジブリ『崖の上のポニョ』 熊谷シネ・ティアラ (写真左は、海の中のポニョと妹たち。ポニョの本当の名前は「ブリュンヒルデ」。宮崎駿はワーグナーの『ワルキューレ』から採った。写真右は、ポニョを救う男の子、宗助。) 宮崎駿の最新作を…

オペラ「小さな魔笛」

[オペラ] モーツァルト:小さな「魔笛」(両国 シアター・カイ)(右はポスター。下の写真は、12月に来日する南アフリカの劇団による「魔笛」。こちらも楽しみだ。↓は、案内とロンドン公演の動画) http://www.mateki2008.jp/ モーツァルトの「魔笛」は、最近、…

池本美香『失われる子育ての時間』

[読書] 池本美香『失われる子育ての時間――少子化社会脱出への道』(勁草書房 2003年7月)(写真は、イタリアの時間銀行のイラストの一つ。)新刊ではないが、評判になった本なので。著者は1966年生れ、銀行勤務を経て、現在、日本総研研究員。先進国で起きている…

「出生率」を考える(4)

[読書] 河野稠果『人口学への招待』(中公新書 2007年8月) (写真は、Henry Heringの「走るダイアナ」。ギリシア神話のアルテミスは、ローマでは「ダイアナ」と呼ばれた。こちらもアスリート美少女で、母性的ではない。) 今日は、合計特殊出生率と、女性の未…

「出生率」を考える(3)

[読書] 河野稠果『人口学への招待』(中公新書 2007年8月) (写真は、鹿狩りをするアルテミス。アスリート美神だが、なぜ出産や多産の守り神なのか、この像からは分からない。) 今日は、なぜ「合計特殊出生率」という概念が作られたのかを考えてみたい。「総…

「出生率」を考える(2)

[読書] 河野稠果『人口学への招待』(中公新書 2007年8月) (挿絵は、やはりアルテミス像。ただし、ギリシア神話の古い層を表しているといわれるエペソス地方の像。多数の乳房が多産の守り神を表現しているのか。) 今書いているのは、あくまで、河野氏の本を…

「出生率」を考える(1)

[読書] 河野稠果『人口学への招待』(中公新書 2007年8月) (挿絵は、ギリシア神話のアルテミス。彼女はいわゆる処女神で、野山を駆け巡り、鹿狩りに明け暮れているが、しかし他方では、出産、多産の守り神でもある。) 少子化問題が語られるときに、必ず登場…

『ナクソス島のアリアドネ』

[オペラ] リヒャルト・シュトラウス『ナクソス島のアリアドネ』 鵜山仁演出 二期会公演 東京文化会館(写真右は、2002年ロンドンのロイヤル・オペラハウス公演。右から三人目が浮気な娘ツェルビネッタ。左から二人目が悲劇の王女アリアドネ。あとは道化たち。…

ヘブライ語上演『アンティゴネ』

[演劇] ソフォクレス『アンティゴネ』 ハナン・スニル演出 静岡芸術劇場(写真右は、アンティゴネ(右)と妹のイスメネ。下は、コロスを構成する4人の長老と、預言者テイレシアス(右手前)。風雪を感じさせる老俳優たちが素晴らしい。彼らが胸に付けているのは、…