2004-10-01から1ヶ月間の記事一覧

「オニババ化する女たち」

[読書] 三砂ちづる『オニババ化する女たち』(光文社新書) 内田樹氏のHPや反フェミニズム系サイトで絶賛されているので読んでみた。キャリア科目を担当した関係で、フェミ・反フェミ双方の動向に注意しているが、『女はすべからく結婚すべし』(島田裕巳)…

凡兆(1)

野沢凡兆は、蕉門(芭蕉の弟子)の中でもとりわけ優れた感覚の持ち主。繊細で優美な句を選んでみた。 はなちるや伽藍の枢(くるる)落としゆく 市中は物のにほひや夏の月 下京や雪つむ上の夜の雨 [鑑賞] 第一句、彼の代表作。「枢」とは、扉に施錠するために…

モツァルト「愛の女庭師」

[オペラ] 10.23 モツァルト「愛の女庭師」 モツァルト劇場公演 新国・中Hその前に、渋谷に寄って「グッゲンハイム美術館展」を見る。19世紀末から約100年間のモダンアートを時系列に展示。ある時期から突然つまらなくなるのが面白い。「モダン」なる芸術の「…

佐藤佐太郎(2)

9月29日に続いて、佐太郎の短歌。戦後の苦しい生活の中で詠んだ歌を、歌集『立房』(1947)、『帰潮』(1952)から選ぶ。自然の「写生」の中に佐太郎の「心」が映し出されるが、歌の格調の高さは、生活苦によっていささかも損なわれない。 みじかなる焔燠よりた…

親密圏のゆくえ?

[読書] 『親密圏のゆくえ』(青木書店 2004年10月) 佐藤和夫氏と豊泉周治氏の論文は面白かった。ともにハンナ・アーレントを出発点にする。日本では、アーレントのいう公的生活と私的生活のどちらも確立しないまま、「社会的なもの」によって私的生活が侵食…

小沢=ウィーンSO「フィガロ」

[オペラ] 10.14夜 「フィガロの結婚」 小沢征爾 ウィーン国立歌劇場 NHKホール皇太子(真下で見えなかったが)も来て、NHKホールは盛り上がっていた。三階席なので歌手の声がいまいち響かなかったが、オケの音の美しさが素晴らしい。弦のぴったり揃った澄ん…

黒テント「ぴらんでっろ」

[演劇] 10.14昼 黒テント「ぴらんでっろ」 中野光座ノーベル賞作家ルイージ・ピランデッロが、1921年に書いた戯曲「作者を探す六人の登場人物」を新訳で。演出と主演は斉藤晴彦。難解だが面白い作品だ。20世紀の演劇を変えた重要作という。オイディプス王の…

野矢論文を読んで

[哲学] 『思想』10月号の野矢茂樹論文は面白かった。簡単なコメントを。(1) やはりライルと同様に、「二分割」と「アキレスと亀」の違いが明確でないように思われる。「分割の視点」は隠された形で「全体」が先取りされているというのが、ライル=野矢モデル…

西研他『不美人論』

[読書] 藤野美奈子・西研 『不美人論』 (2004.3, 径書房)とても真面目な本で、優れた現代若者論であると同時に、現代社会論でもあり、倫理学でもある。漫画家の藤野は、「いままで、性格のいいブスが、ヤな性格の美女よりも一般に損しているのをみると、どう…

マールイ劇場「三人姉妹」

[演劇] 10.8 チェーホフ「三人姉妹」 ロシア・マールイ劇場公演 アートスフィア「三人姉妹」はたくさんの公演を見たが、一作一作どれも違う。三年前に同じアートスフィアで見たロシア・ポクロフカ劇場の公演は、現代的なスタイリッシュな演出だった。それと…

「恋愛イデオロギー」

新規開講の「キャリア科目」第一回終了。110人ほどが聴講。今の若者は、決められた「人生の型」を与えられておらず、「自分の人生をゼロから自分で設計しなければならない」という話から始める。半年かけて収集したデータ、統計表やグラフが威力を発揮。「国…

後期が始まった!

「美学日誌」という名前にはもとるけれど、まったく美的でない僕の日常生活の雑感や、ぼやき等も少々。後期授業が全面的に始まった。あっという間の夏だったけれど、この三ヶ月で学会誌等の論文を3本書き上げたから、まあ成果があったと納得しよう。上智と…