2012-01-01から1年間の記事一覧

今日のうた20(12月)

[今日のうた20] 12月(写真は岸上大作1939〜1960、国学院大学生として安保闘争に参加、21歳のときに失恋により自死) ・ たまきはる命(いのち)ひかりて触(ふ)りたれば否(いな)とは言ひて消(け)ぬがにも寄る (斉藤茂吉1913、『赤光』初版、茂吉の愛した女性「お…

ロッシーニ『セビリアの理髪師』

[オペラ] ロッシーニ『セビリアの理髪師』 新国立劇場(写真右は、左下からアルマヴィーヴァ伯爵役のL.ボテリョ、ロジーナ役のR.コンスタンティネスク、二人とも若く初々しい。下の写真は、バルトロ役のB.プラティコとロジーナ、本当に可愛らしいロジーナだっ…

今日のうた19(11月)

[今日のうた19] 11月1日〜30日 (写真は宮沢賢治、賢治の俳句は珍しいもので、生涯に三十句あまりの俳句を作っただけといわれる、でも今月の菊の句は、詩人らしいなかなか味のある俳句) ・ 戸あくれば紙燭(ししょく)のとゞく黄菊かな (正岡子規1894、「戸を開…

今日のうた18(10月)

[今日のうた18] 10月1日〜31日 (挿し絵は江戸時代の俳人、加賀千代女(志村立美画)、「朝顔やつるべ取られてもらひ水」が有名だが、今月のような遊び心のある滑稽句も作った) ・ 白装(びやくさう)の端(はし)ものこさず角曲がる (山口誓子1952、秋祭りだろうか…

今日のうた17(9月)

[今日のうた17] (9月) (写真は高浜虚子、20世紀の日本俳句の隆盛は、彼に負うところが大きい。さりげない、伸びやかな表現の中に深い写実を詠む虚子の句は、やはり近代俳句の最高峰) ・ 限りなき思ひのままに夜も来(こ)む夢路をさへに人はとがめじ (小野小町…

ワーグナー『パルジファル』

[オペラ] ワーグナー『パルジファル』 東京文化会館大ホール (写真はすべて、同じ舞台のバルセロナ、チューリッヒ公演より。右写真は、パルジファルを誘惑する美女たち。下写真は、左端階段中段のパルジファル(腹部の赤い血は、アムフォルタス王の傷を共苦す…

今日のうた16(8月)

[今日のうた16] (8月1日〜31日) (写真は斉藤茂吉。茂吉の歌は、そこに詠まれている言葉や全体の“調べ”がとても美しい。現代の短歌は意味と内容を重視するので、歌うような調べの美がやや希薄になった。) ・ 夏氷挽(ひ)ききりし音地にのこる (山口誓子1940、…

映画『桐島、部活やめるってよ』

[映画] 吉田大八監督『桐島、部活やめるってよ』 (池袋シネ・リーブル) 『コクリコ坂』以来、一年ぶりに映画館に行く。吉田大八監督は、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07、原作は本谷有希子の演劇)という優れた映画を撮った人。本作は、朝井リョウ(198…

シェイクスピア『から騒ぎ』

[演劇] シェイクスピア『から騒ぎ』 (埼玉芸術劇場小H) (写真下2枚は学生役者たち、みな若々しい。左から、ヒーローとクローディオ、次は、左からレオナート、ヒーロー、クローディオ、ベネディック、ベアトリス) オックスフォード大学・演劇部による公演。…

今日のうた15(7月)

[今日のうた15] (7月1日〜31日) (挿し絵は松尾芭蕉、芭蕉の俳句は背景が分からないとよく理解できないものが多く、鑑賞には注釈が欠かせない) ・ 市中は物のにほひや夏の月 (野沢凡兆、作者は芭蕉の弟子の中でもシャープな感覚の人、「蒸し暑い夏の夕べ、街…

翻訳をしました

[翻訳] ロビン・レ・ペドヴィン『時間と空間をめぐる12の謎』(植村恒一郎、島田協子訳、岩波書店、6月27日刊) 久しぶりに翻訳をしました。イギリスの哲学者 Robin le Poidevin氏の『Travels in Four Dimensions ― The Enigmas of Space and Time』(Oxford Un…

今日のうた14(6月)

[今日のうた14] (6月1日〜30日) (写真は山口誓子1901〜94、森羅万象の“質感”を言語化することにかけては、並ぶもののなき天才、言語表現という透明な媒体の中に、ものの“質感”が溢れ出る) ・ 春過ぎて夏来にけらし白栲(しろたへ)の衣ほすてふ天の香具山 (持…

ワーグナー『ローエングリン』

[オペラ] ワーグナー『ローエングリン』 新国立劇場大ホール [写真右は、白鳥の騎士ローエングリンを歌うフォークト、下は第三幕、エルザ姫(左)とローエングリン(右)の婚礼の日の夜、彼女は騎士の名前を尋ねてしまい、すべてが水泡に帰す] ワーグナー第6作…

今日のうた13(5月)

[今日のうた13] 5月1日〜31日 (写真は、フランスにおける与謝野晶子と鉄幹、「君も雛罌粟(コクリコ)われも雛罌粟」と晶子は詠った) ・ あらたふと青葉若葉の日の光 (芭蕉、「青葉」は深い緑、「若葉」は新緑、「陽光を受けて、樹々の緑の濃淡が映えるのが美…

K.ハンター『カフカの猿』

[演劇] K.ハンター主演『カフカの猿』 三軒茶屋シアター・トラム [写真は、ロンドン・ヤングヴィック劇場での同上演より] 『カフカ寓話集』にある短編「ある学会報告」(1917)を、コリン・ティーバンが翻案したもの。イギリスの女優キャサリン・ハンターが一…

今日のうた12(4月)

[今日のうた12] 4月1日〜30日 (写真は紀貫之像。鎌倉時代に描かれた「上畳本三十六歌仙絵」より。今月に挙げた彼の「むすぶ手の雫(しづく)ににごる山の井の・・・」は、古典和歌の鏡とされた彼の代表作。それだけのことはある歌だ。子規の「貫之は下手な歌よ…

ヴェルディ『オテロ』

[オペラ] ヴェルディ『オテロ』 新国立劇場 (写真右はポスター、大量の水を張った凝った舞台。下は、開幕冒頭、沖合いの海戦を見守るヴェネチアの人々、そしてデズデモーナの死) 2009年の初演を見逃したので、今回初めて見る。『オテロ』はヴェルディ晩年の…

今日のうた11(3月)

[今日のうた11] 2012年3月(写真は、昨年12月に出た『山川登美子歌集』岩波文庫。登美子1879~1909は与謝野鉄幹を慕い、晶子の友人であった。晶子とは対照的な清楚な歌を詠んだが、29歳で没す。岩波文庫表紙にある『明星』第6号(1900)表紙は官能的なヌードの絵…

P.ブルック『魔笛』

[オペラ] ピーター・ブルック演出『魔笛』 さいたま芸術劇場(写真下は、同舞台、昨春のロンドン・バービカン劇場公演より。上から、モノスタトスにつかまる直前のパミーナとパパゲーノ、パパパのシーン、そして竹林の中のパミーナ) 『魔笛』を演劇中心に90分…

「相場で儲ける」ということ

[雑] 「相場で儲ける」ということ (朝日新聞2月26日「カオスの深淵」より)2月26日の朝日新聞に、面白い記事があった。コンピュータによる金融や株の「高頻度取引High Frequency Trading」の話である。千分の一秒単位の高速で、コンピュータが自動的に相場…

今日のうた10(2月)

[今日のうた10] 2012年2月 (写真は式子内親王[狩野探幽画]、後白河天皇(法皇)の娘、「玉の緒よ・・」のような絶叫調の歌で名高いが、高度の技巧を持つ歌人でもある、今回の歌も代表作の一つ) ・ 山ふかみ春とも知らぬ松の戸にたえだえかかる雪の玉水 (式子内…

松村禎三『沈黙』

[オペラ] 松村禎三『沈黙』 新国立劇場・中劇場 (写真右は、嘆くロドリゴ司祭。「人間がこんなに哀しいのに、主よ、海があまりにも碧いのです」(長崎の遠藤周作文学館「沈黙の碑」の言葉)。写真下は、海中の磔刑に処されたモキチの昇天と、狂乱して死ぬ恋人…

今日のうた9(1月)

[今日のうた9] 2012年1月(写真は俵万智、デビュー当時のもの。彼女は、啄木のように、日本の短歌に新しい表現の領野をもたらした。その功績は計り知れない。) ・ 去年(こぞ)今年貫(つらぬ)く棒の如きもの (高浜虚子1950、大晦日と元旦、昨日の蕪村の句は両…