2020-01-01から1年間の記事一覧

今日のうた(116)

[今日のうた] 12月ぶん (写真は長谷川櫂、朝日俳壇選者をつとめる) 冬の日の白堊かがやく灯台を十年(ととせ)へて今日見つる親しさ (上田三四二1970『湧井』、三浦半島の観音崎にて、灯台というのは独特の趣があるが、それは海という自然の中に人工物が突出し…

[美術展] 第45回・白日会会員選抜展

[美術展] 第45回・白日会会員選抜展 日本橋三越・美術特選画廊 12月25日 (写真↓は、河野桂一郎1966~「My No.6」と、伊勢田理沙1988~「ひだまり」) ホキ美術館で写実の絵に惹かれたので、今日は、やはり「写実の絵」を標榜している美術団体「白日会」の会員…

[美術展] ホキ美術館ベストコレクション展

[美術展] ホキ美術館ベストコレクション展 千葉・ホキ美術館 12月21日 (写真↓は、渡抜亮「照らされた影」2010) キケロは「人間にとって人間以上に美しく見えるものはない」(『神々の本性について』)と言った。ホキ美術館の絵を見るのは今年の6月以来、これが…

[演劇] ニコラス・ライト 『ミセス・クライン』

[演劇] ニコラス・ライト『ミセス・クライン』 シアター風姿花伝 12月19日 (舞台↓は、左からポーラ、メラニー・クライン(那須佐代子)、メリッタ、3人とも実在の女性、その下の写真は、メラニー・クラインと娘のメリッタ、息子のハンス) 1934年のロンドン、ド…

[演劇] ソン・ギウン(チェホフ)『外地の三人姉妹』

[演劇] ソン・ギウン(チェホフ)『外地の三人姉妹』 横浜KAAT 12月16日 (写真は舞台、アンドレイと結婚するナターシャは一家の中で「浮いている」) チェホフ『三人姉妹』を韓国のソン・ギウンが翻案、演出は多田淳之介。1936~43年の日本の植民地、朝鮮の羅南…

[演劇] ロスタン『シラノ・ド・ベルジュラック』 NTライブ

[演劇] ロスタン『シラノ・ド・ベルジュラック』 NTライブ TOHOシネマズ日本橋 12月13日 (写真↓は、プレイハウス・シアター外観、そして第1幕) ジェイミー・ロイド演出、ジェームズ・マカヴォイ主演で、2019年、ロンドンのプレイハウス・シアターで上演。188…

[演劇] 長田育恵/瀬戸山美咲『幸福論―現代能楽集Ⅹ』

[演劇] 長田育恵/瀬戸山美咲『幸福論―現代能楽集Ⅹ』 シアター・トラム 12月8日 (写真↓は、『隅田川』終幕、左から、母になれない女、息子が自殺した老女、赤ん坊を産んで捨てた少女、三人が、少女の死んだ赤ん坊を追悼し、隅田川に祈る。その下は『道成寺』…

[演劇] 杉原邦生・瀬戸山美咲『オレステスとピュラデス』

[演劇] 杉原邦生・瀬戸山美咲『オレステスとピュラデス』 KAAT 11月30日 (写真↓は、オレステスとピュラデス、そして巡礼たち) ギリシア悲劇を現代に翻案した上演は多いが、本作は、舞台はあくまでギリシアのままで、内容を大きく発展させた二次創作といえる…

今日のうた (115)

[今日のうた] 11月ぶん まぶしいと言えないままにすぎてゆく日々へわたしを運ぶ地下鉄 (高山由樹子「灯台を遠く離れて」、『歌壇』2019年2月号、作者1979~は第30回歌壇賞受賞、通勤途上の地下鉄車内で揺られているのか、もうすぐ駅に着いて明るい地上に出る…

[演劇] 唐十郎『唐版・犬狼都市』

[演劇] 唐十郎『唐版・犬狼都市』 梁山泊公演 下北沢・紫テント 11月21日 (写真下は、紫テントの内側から見える下北沢(私の生まれ育った町)、中央高い所が下北沢駅、上演中も換気は十分なので8時過ぎには座席は寒くなってきた) 唐十郎を見るのは『秘密の花園…

[オペラ] 藤倉大 《アルマゲドンの夢》

[オペラ] 藤倉大 《アルマゲドンの夢》 新国立劇場 11月18日 (写真↓は、ダンスパーティのシーン、その退廃した雰囲気に、私はリリアーナ・カヴァーニ『ナイト・ポーター』のナチス将校たちを一瞬思い出した) 藤倉大は、2年前に東京芸術劇場で演奏会形式の《…

今日のうた (114)

[今日のうた] 10月ぶん (挿絵↓は藤原定家、百人一首で名高いが、古今集から新古今集までの八代集から好みの歌を選んだ『定家八代抄』もある、私の「今日のうた」では、『定家八代抄』から見つけた歌も多い) 切り株のうえに木があるように抱く 望まなくても夕…

[演劇] 大池容子作、うさぎストライプ『あたらしい朝』

[演劇] 大池容子作、うさぎストライプ『あたらしい朝』 アトリエ春風舎 10月28日 (写真は↓、スケッチブックを掲げてヒッチハイクする女を車内から見つけた主人公たち、その下は、ドライブする若い夫婦、二人に愛はあるのだが、何となくすれ違いがち) 大池容…

[美術展] ホキ美術館「森本草介展」ほか

[美術展] ホキ美術館「森本草介展」ほか 千葉市 10月23日 (写真↓は、森本草介の「光の方へ」と「休日」、彼の描く女性は気品があって美しい) 写実の絵のみを展示するホキ美術館へ行った。森本草介の代表作が展示されているほか、「第3回ホキ美術館大賞展」…

[演劇] プルカレーテ演出・野田版『真夏の夜の夢』

[演劇] プルカレーテ演出・野田版『真夏の夜の夢』 東京芸術劇場 10月21日 (写真↓は、今回の舞台と、その下は1992年初演の野田演出の舞台) シェイクスピアの原作を野田秀樹が改作し、それをルーマニアのプルカレーテが演出。野田版は、『夏夢』の物語をかな…

[演劇] シェイクスピア『リチャード二世』

[演劇] シェイクスピア『リチャード二世』 新国 10月14日 (写真↓は、左からボリングブルック(=ヘンリー四世)浦井健治、リチャード二世(岡本健一)、その妃イサベラ(中嶋朋子)、その下は舞台、リチャード二世は左端後ろに隠れている) 鵜山仁演出の史劇シリー…

[オペラ] ブリテン『夏の夜の夢』

[オペラ] ブリテン『夏の夜の夢』 新国 10月4日 (写真↓上は、二組の恋人たち、下は、ロバになったボトムと妖精の女王、そして妖精を演じるボーイソプラノたち、マクヴィカー演出はいつも空間構成が斬新、「夜」がとても幻想的に表現されている) 『夏夢』は、…

今日のうた (113)

[今日のうた] 9月ぶん (写真は、野見山朱鳥1917~70、虚子に師事し「ホトトギス」同人となる、絵の才能もある人だったが、胸を病み病床詠も多い) はいよ、って渡せば何も言われずに持ち去られた思い出が作られる (平出奔『短歌研究』2020年9月号、第63回短歌…

[演劇] 長田育恵『ゲルニカ』

[演劇] 長田育恵『ゲルニカ』 パルコ劇場 9月8日 (写真上は↓、スペイン内戦を取材に来たジャーナリストのクリフ(中央)とレイチェル(右)、下は、ゲルニカ市旧領主の娘で主人公サラ(中央)) 長田育恵は、あまりにも素晴らしかった『海越えの花たち』(2018)に次…

[オペラ] ヘンデル 《アグリッピーナ》

[オペラ] ヘンデル《アグリッピーナ》 METライブ 東劇 9月2日 (写真↓は舞台、演出のマクヴィカーは斬新な空間造形をする、下はアグリッピーナと夫のローマ皇帝クラウディオ) METで2月29日上演の映像。1709年、ヘンデル24歳の作品。それにしても、オペラにか…

今日のうた (112)

[今日のうた] 8月ぶん (写真は涌田悠1990~、8月30日の歌の作者で、第63回短歌研究新人賞・次席、職業はダンサーで、自分の踊る身体を詠んだ) 霧はすき人がひかりに見えるから呼吸をするみたいに手をのばす (高山由樹子「灯台を遠く離れて」、『歌壇』2019…

[オペラ] ベルク 《ヴォツェック》

[オペラ] ベルク《ヴォツェック》 METライブ 東劇 8月25日 (写真↓上は、第二幕、酒場のシーン、下は第一幕冒頭、大尉の髭を剃るシーンだが、ヴォツェックはカメラを操作しており、スクリーンにはヴォツェックの幻覚や妄想が映し出される) 今年1月11日のMET上…

[オペラ] グラス 《サティアグラハ》

[オペラ] グラス《サティアグラハ》 METライブ 東劇 8月18日 (写真は舞台、アリアも合唱も、全篇「バガヴァッド・ギーター」がサンスクリット語で歌われ、意味は英語字幕で) 珍しいオペラを見た。東劇のアンコール上映、2011年MET上演の映像。フィリップ・グ…

今日のうた (111)

[今日のうた 111] 7月ぶん (挿絵は、志太野坡1662~1740、芭蕉の弟子で、蕉門十哲の一人) 噴水の立ち上がりざまに見えているあれは噴水のくるぶしです (杉崎恒夫『パン屋のパンセ』2010、噴水の水が立ち上がり始める瞬間、もこもこもこっと盛り上がってくる…

[映画] キム・ボラ 『はちどり』

[映画] キム・ボラ 『はちどり』 渋谷ユーロスペース 7月27日 (写真は↓、主人公ウニと、漢文塾の教師ヨンジ、彼女は14才のウニが初めて心を開き、人と人とが繋がることができることを知った初めての人である、だがヨンジはソンス大橋の崩落であっけなく死ぬ)…

[演劇] エンデ『願いがかなうぐつぐつカクテル』

[演劇] エンデ『願いがかなうぐつぐつカクテル』 新国・小劇場 7月21日 (写真下は、ポスターと舞台、左が魔女ティラニア、右が魔術師イルヴィッツァー、舞台では二人とも可愛いキャラになっているが、それがいい) M.エンデ『魔法のカクテル』をエンデ自身が…

[演劇] NTライブ シェイクスピア『夏の夜の夢』

[演劇] NTライブ シェイクスピア『夏の夜の夢』 シネ・リーブル池袋 7月18日 (写真↓、平土間を広くして、その中央に小さな可動舞台があり、妖精たちは空中ブランコで接近、舞台を囲む観客は森の木々に見立てられ、全面的に観客が参加する祝祭劇に) 上演は201…

[演劇] 三好十郎 『殺意 ストリップショウ』

[演劇] 三好十郎『殺意 ストリップショウ』 シアター・トラム 7月14日 (写真は舞台、彼女がストリップの踊りで表現するのは、激しい怒り、そして否定が肯定に変様するカタルシスである) 4か月ぶり、やっと演劇を生(き)で観賞。鈴木杏の一人芝居、演出は栗山…

[読書]  落合陽一『働き方5.0』(小学館新書)

[読書] 落合陽一『働き方5.0』(小学館新書、6月8日刊) アリストテレスによれば、この世界に実在するのは運動と変化であり、時間や空間は、そこから抽象された関係性に過ぎない。まず時間や空間があり、次にその中に運動や変化が存在するわけではない。私とい…

今日のうた(110)

[今日のうた 110] 6月ぶん (画像は、杉山杉風(さんぷう)1647~1732、芭蕉の高弟で、家業は江戸の魚屋、深川の芭蕉庵を提供するなど、芭蕉の身辺を経済的に支えた一人) つばくろよ翻るたびにくらくらと雲がひっくり反るならずや (杉崎恒夫『パン屋のパンセ』2…