ヴァン・ホーヴェ演出『イヴの総て』

[演劇] ヴァン・ホーヴェ演出『イヴの総て』NTlive 恵比寿ガーデンシネマ 1月21日 (写真は↓、イヴ(L.アンダーソン)とマーゴ(G.アンダーソン)、そして舞台、マーゴの自宅の居間、台所、楽屋が舞台の上で一体の空間になっている) ホーヴェは『オセロ』『ヘッダ…

美と愛について(3) ― 愛の受動性、デカルト『情念論』

美と愛について(3) ― 愛の受動性、デカルト『情念論』 デカルトは『情念論』(1649)において、「愛amour」について論じている。ここでは「情念les passions」という言葉が使われているが、それは情念そのものが「受動的passif」であるがゆえに付けられた名で…

映画  ウォン・カーウァイ『欲望の翼』

[映画] ウォン・カーウァイ『欲望の翼』 恵比寿ガーデンシネマ 1月14日 (写真↓は主人公ヨディ[レスリー・チャン]、そして冒頭、「今夜、夢で会おう」と売り子の少女スー[マギー・チャン]を誘惑するシーン) 1990年の作だが、1960年の香港に生きる「怒れる若者…

美と愛について(2) ― 愛の受動性、ピーパー『愛について』

美と愛について(2) ― 愛の受動性、ピーパー『愛について』 たとえば、私たちは生れてきた赤ん坊を愛する。そのとき、私たち親が赤ん坊に愛を与え、贈っているのだろうか? 否、愛を贈るのは赤ん坊の方であり、私たちは愛を贈られるのである。 ドイツのカトリ…

映画 『パラサイト ― 半地下の家族』

[映画] 『パラサイト ― 半地下の家族』 TOHOシネマズ日比谷 1月7日 (写真はキム一家の住む半地下の家、朝鮮戦争時に作られた防空壕だが、現在でも住居として低所得の人々が住んでいるらしい、水圧の関係で水洗トイレが部屋の天井近くにあるのが悲しい、兄の…

美と愛について(1) ― はじめに

美と愛について(1) ― はじめに 皆さん、明けましておめでとうございます。今年は私のブログ「charisの美学日誌」に、「美と愛について」というテーマで週に一回くらい連載したいと思います。一年くらいは続けられそうです。 (フィガロの結婚) 私はモーツァル…

今日のうた(104)

[今日のうた] 12月ぶん (写真は山中智恵子1925~2006、前川佐美雄に師事し、幻想的で前衛的な歌を詠んだ) わが額を天狼星に覗かせて夜々くだけ散る恋の思ひは (山中智恵子『夢之記』、作者1925~2006が67歳のときの歌、亡くなった夫の思い出だろうか、熱い「…

ラジブ・ジョセフ『タージマハルの衛兵』

[演劇] ラジブ・ジョセフ『タージマハルの衛兵』 新国立劇場・小H 12月21日 (写真は↓、二人の衛兵、左がバーブル(亀田佳明)、右がフマユーン(成河)、二人は性格が非常に違うので、それが面白い) 演出の小川絵梨子が設定した「ことぜん(個と全)」というシリー…

ヘンデル『リナルド』

[オペラ] ヘンデル『リナルド』 北とぴあ 11月29日 (写真は舞台、左から総大将ゴッフレート、英雄リナルド、ゴッフレートの弟エウスターツィオ、そして誘惑するサイレンたち) オケは、寺神戸亮指揮のレ・ボレアード。1711年、ヘンデル26歳の作品。男性はバリ…

今日のうた(103)

[今日のうた] 11月ぶん (写真は吉屋信子1896~1973、少女小説で名高い作家だが、俳句や短歌も詠んだ) 秋しんしんからだの奥に霧ながれトランクはわが紺いろの馬 (小島ゆかり『六六魚』2018、作者にしては難解な歌だが、詩的な美しさがある、駅か空港で、お気…

杉原邦生演出『グリークス』

[演劇] 杉原邦生演出『グリークス』 横浜KAAT 11月21日 (写真↓はコロス、今回の舞台はコロスが素晴らしく、全体の主人公であるように感じた、コロスはすべて登場人物が兼ねていて、中央がエレクトラ、その左テティス、左端イピゲネイア、右から二人目アンド…

映画『マチネの終わりに』

[映画] 平野啓一郎原作『マチネの終わりに』 11月16日 熊谷シネティアラ21 (主人公の二人は、卓越した人物で素晴らしい魅力をもっているが、彼らの恋は人生で3回しか会えなかった、そしてその後、4回目は別れの出会いであり、ニューヨーク・セントラルパー…

今日のうた(102)

[今日のうた] 10月ぶん (写真は原石鼎1886~1951、虚子門下で、大正期の「ホトトギス」で活躍した) 秋晴れの日本は首相をヒトラーに喩へようとも罰せられぬ国 (栗木京子『ランプの精』2018、作者はデモに参加して、そして詠んだ歌の一つ、表現の自由は、人間…

(手話による)チェホフ『三人姉妹』

[演劇] (手話による)チェホフ『三人姉妹』 池袋・東京芸術劇場 10月20日 (写真下↓は三姉妹、左からイリーナ、マーシャ、オーリガ、第四幕最後の「さあ、生きていきましょう」のシーン、手話だから身振り手振りが豊かだが、実はこのシーンはとても悲しい、下…

今日のうた(101)

[今日のうた] 9月分 (写真は小池純代1955~、やや古風な文体の優雅な言葉遊びの歌を詠む人、歌集に『雅族』1991、『梅園』2002などがある) あをくさきわれの胸処(むなど)に落ちしものきみが歌きみが口にせぬ悔い (今野寿美『花絆』1981、「きみ」は、のちの…

雷ストレンジャーズ イプセン『青年同盟』

[演劇] イプセン『青年同盟』 雷ストレンジャーズ 下北沢 シアター711 9月17日 イプセンの初期の作品(1869)で、日本初演。世界的にもほとんど上演されないのではないか。戯曲はかなり長く、多数の登場人物の人間関係と利害関係が複雑にからんだ、ある意味で…

近松門左衛門 『心中天網島』

[文楽] 近松門左衛門 『心中天網島』 国立劇場 9月7日 (写真下は↓「河庄の段」、小春(吉田和生)と、治兵衛の兄の孫右衛門(吉田玉男)) やっと『心中天網島』を通しで見ることができた。この作品は、一人一人の人物造形が細部まで完璧で、感情の揺れ動きが深く…

今日のうた(100)

[今日のうた] 8月分 (写真(1948)は中村汀女1900~1988、虚子門下で活躍した、家庭生活や子どもを詠んだ優しい句が多い) 水脈(みお)の果(はて)炎天の墓碑を置きて去る (金子兜太1946、出征したトラック島からの引き揚げ船で詠んだ句、たくさんの同僚の兵士が…

ケラ 『フローズン・ビーチ』

[演劇] ケラ・サンドロヴィッチ『フローズン・ビーチ』 シアタークリエ 7月31日 (写真↓は舞台、カリブ海のある島の豪華な別荘の一室、1887年、1995年、2003年の三回、友人である4人の女たちがこの部屋に集まる。写真下は、左から市子(ブルゾンちえみ)、千津(…

今日のうた(99)

[今日のうた] 7月分 (下の絵は野沢凡兆(生年不詳~1714)、芭蕉の弟子たちの中でシャープな句を詠んだ人) 立ち読みをしたる心にもち帰る意地悪そうな写真のアリス (杉崎恒夫『パン屋のパンセ』2010、『不思議の国のアリス』の著者ルイス・キャロルは写真家で…

プッチーニ 『トゥーランドット』

[オペラ] プッチーニ『トゥーランドット』 新国立劇場 7月21日 (写真は舞台空間↓、専制政治に抑圧された民衆が一番下にいる「逆ピラミッド」構造、上がトゥーランドット姫、下が求婚者カラフ) 1924年作の『トゥーランドット』は、第3幕の途中まで書いたプッ…

今日のうた(98)

[今日のうた] 6月ぶん (写真↓は馬場あき子1928~、1952年に歌人の岩田弘と結婚し、歌誌「まひる野」に加わる、その後、歌誌「かりん」を牽引) 衣更(ころもがへ)前もうしろも風に満ち (橋本多佳子『海彦』1957、「風に満ち」がいい、夏服になると、それだけで…

植村恒一郎 「人間の身体の美しさについて ― バーク、カント、そしてシラーへ」(群馬県立女子大学紀要・40号)

私の論文「人間の身体の美しさについて ー バーク、カント、そしてシラーへ」(『群馬県立女子大学紀要 第40号』2019年2月)が、レポジトリーにアップされました。下記から、どなたでもPDFでダウンロードできます。ご関心のある方はどうぞ。https://gair.media…

アイスキュロス/R.アイク 『オレステイア』

[演劇] アイスキュロス/R.アイク『オレステイア』 新国立・中劇場 6月26日 (写真↓は、左から、クリュタイメストラ、イピゲネイア、エレクトラ、オレステス、アガメムノン、このメンバーが食卓を囲むことは、アイスキュロスにはなく、ありうるとすればエウ…

ケラ 『キネマと恋人』

[演劇] ケラリーノ・サンドロヴィッチ『キネマと恋人』 世田谷パブリック 6月19日 (写真下は舞台、ダンサーによる舞台装置の入れ替えなど、全編にダンスが溢れている、ダンサーも役者をやり、役者もダンスを踊る、人間の身体は美しい!) ケラを観るのは、『…

プーランク 『カルメル会修道女の対話』

[オペラ] プーランク『カルメル会修道女の対話』 METライブ 東劇 6月12日 (写真下は、開幕冒頭の修道女たち、その下は、新たに修道女となるブランシュ) ジョン・デクスター演出、ネゼ=セガン指揮で、5月11日にMETで上演された舞台。この作品の内容分析につい…

映画 ミキ・デザキ『主戦場』

[映画] 『主戦場』 渋谷・イメージフォーラム 6月7日 (写真は、慰安婦否定派の代表的論客、左から藤岡信勝、杉田水脈、ケント・ギルバート、藤木俊一[テキサス親父のマネージャー]、トニー・マラーノ[テキサス親父]。こうした人々に丁寧なインタヴューを試み…

今日のうた(97)

[今日のうた] 5月1日~31日 (写真は中村草田男1901~83、第三句集『萬緑』1941) 菜の花を挿すか茹でるか見捨てるか (櫂未知子『蒙古斑』2000、「見捨てるか」という選択肢があるのが面白い、ぎりぎり薹(とう)がたっているのだろうか、たしかに菜の花はぐっと…

演劇版 コクトー『恐るべき子供たち』

[演劇] コクトー『恐るべき子供たち』 横浜、KAAT 5月29日 (写真↓は、上が、雪合戦シーン、下が、左からジェラール、ポール、エリザベス、アガート、白い布で作られたシュールな舞台がいい) コクトーの小説(1929)を、ノゾエ征爾が台本、白井晃演出で、演劇化…

文楽 『妹背山婦女庭訓』

[文楽] 近松半二ほか『妹背山婦女庭訓』 国立劇場(小) 5月22日 (写真↓は二つとも、とても美しい「山の段」の舞台、吉野川をはさんで左側が太宰家、右側は清澄家、写真下は、ヒロインの雛鳥(人形遣いは吉田蓑助)の首を、母親の定高(さだか)が刀で切り落とすと…