今日のうた(101)

[今日のうた] 9月分 (写真は小池純代1955~、やや古風な文体の優雅な言葉遊びの歌を詠む人、歌集に『雅族』1991、『梅園』2002などがある) あをくさきわれの胸処(むなど)に落ちしものきみが歌きみが口にせぬ悔い (今野寿美『花絆』1981、「きみ」は、のちの…

雷ストレンジャーズ イプセン『青年同盟』

[演劇] イプセン『青年同盟』 雷ストレンジャーズ 下北沢 シアター711 9月17日 イプセンの初期の作品(1869)で、日本初演。世界的にもほとんど上演されないのではないか。戯曲はかなり長く、多数の登場人物の人間関係と利害関係が複雑にからんだ、ある意味で…

近松門左衛門 『心中天網島』

[文楽] 近松門左衛門 『心中天網島』 国立劇場 9月7日 (写真下は↓「河庄の段」、小春(吉田和生)と、治兵衛の兄の孫右衛門(吉田玉男)) やっと『心中天網島』を通しで見ることができた。この作品は、一人一人の人物造形が細部まで完璧で、感情の揺れ動きが深く…

今日のうた(100)

[今日のうた] 8月分 (写真(1948)は中村汀女1900~1988、虚子門下で活躍した、家庭生活や子どもを詠んだ優しい句が多い) 水脈(みお)の果(はて)炎天の墓碑を置きて去る (金子兜太1946、出征したトラック島からの引き揚げ船で詠んだ句、たくさんの同僚の兵士が…

ケラ 『フローズン・ビーチ』

[演劇] ケラ・サンドロヴィッチ『フローズン・ビーチ』 シアタークリエ 7月31日 (写真↓は舞台、カリブ海のある島の豪華な別荘の一室、1887年、1995年、2003年の三回、友人である4人の女たちがこの部屋に集まる。写真下は、左から市子(ブルゾンちえみ)、千津(…

今日のうた(99)

[今日のうた] 7月分 (下の絵は野沢凡兆(生年不詳~1714)、芭蕉の弟子たちの中でシャープな句を詠んだ人) 立ち読みをしたる心にもち帰る意地悪そうな写真のアリス (杉崎恒夫『パン屋のパンセ』2010、『不思議の国のアリス』の著者ルイス・キャロルは写真家で…

プッチーニ 『トゥーランドット』

[オペラ] プッチーニ『トゥーランドット』 新国立劇場 7月21日 (写真は舞台空間↓、専制政治に抑圧された民衆が一番下にいる「逆ピラミッド」構造、上がトゥーランドット姫、下が求婚者カラフ) 1924年作の『トゥーランドット』は、第3幕の途中まで書いたプッ…

今日のうた(98)

[今日のうた] 6月ぶん (写真↓は馬場あき子1928~、1952年に歌人の岩田弘と結婚し、歌誌「まひる野」に加わる、その後、歌誌「かりん」を牽引) 衣更(ころもがへ)前もうしろも風に満ち (橋本多佳子『海彦』1957、「風に満ち」がいい、夏服になると、それだけで…

植村恒一郎 「人間の身体の美しさについて ― バーク、カント、そしてシラーへ」(群馬県立女子大学紀要・40号)

私の論文「人間の身体の美しさについて ー バーク、カント、そしてシラーへ」(『群馬県立女子大学紀要 第40号』2019年2月)が、レポジトリーにアップされました。下記から、どなたでもPDFでダウンロードできます。ご関心のある方はどうぞ。https://gair.media…

アイスキュロス/R.アイク 『オレステイア』

[演劇] アイスキュロス/R.アイク『オレステイア』 新国立・中劇場 6月26日 (写真↓は、左から、クリュタイメストラ、イピゲネイア、エレクトラ、オレステス、アガメムノン、このメンバーが食卓を囲むことは、アイスキュロスにはなく、ありうるとすればエウ…

ケラ 『キネマと恋人』

[演劇] ケラリーノ・サンドロヴィッチ『キネマと恋人』 世田谷パブリック 6月19日 (写真下は舞台、ダンサーによる舞台装置の入れ替えなど、全編にダンスが溢れている、ダンサーも役者をやり、役者もダンスを踊る、人間の身体は美しい!) ケラを観るのは、『…

プーランク 『カルメル会修道女の対話』

[オペラ] プーランク『カルメル会修道女の対話』 METライブ 東劇 6月12日 (写真下は、開幕冒頭の修道女たち、その下は、新たに修道女となるブランシュ) ジョン・デクスター演出、ネゼ=セガン指揮で、5月11日にMETで上演された舞台。この作品の内容分析につい…

映画 ミキ・デザキ『主戦場』

[映画] 『主戦場』 渋谷・イメージフォーラム 6月7日 (写真は、慰安婦否定派の代表的論客、左から藤岡信勝、杉田水脈、ケント・ギルバート、藤木俊一[テキサス親父のマネージャー]、トニー・マラーノ[テキサス親父]。こうした人々に丁寧なインタヴューを試み…

今日のうた(97)

[今日のうた] 5月1日~31日 (写真は中村草田男1901~83、第三句集『萬緑』1941) 菜の花を挿すか茹でるか見捨てるか (櫂未知子『蒙古斑』2000、「見捨てるか」という選択肢があるのが面白い、ぎりぎり薹(とう)がたっているのだろうか、たしかに菜の花はぐっと…

演劇版 コクトー『恐るべき子供たち』

[演劇] コクトー『恐るべき子供たち』 横浜、KAAT 5月29日 (写真↓は、上が、雪合戦シーン、下が、左からジェラール、ポール、エリザベス、アガート、白い布で作られたシュールな舞台がいい) コクトーの小説(1929)を、ノゾエ征爾が台本、白井晃演出で、演劇化…

文楽 『妹背山婦女庭訓』

[文楽] 近松半二ほか『妹背山婦女庭訓』 国立劇場(小) 5月22日 (写真↓は二つとも、とても美しい「山の段」の舞台、吉野川をはさんで左側が太宰家、右側は清澄家、写真下は、ヒロインの雛鳥(人形遣いは吉田蓑助)の首を、母親の定高(さだか)が刀で切り落とすと…

21世紀音楽の会 第16回演奏会

[音楽] 21世紀音楽の会 第16回演奏会 東京文化会館小ホール 5月8日 主に東京芸大作曲科出身の作曲家たちの新作発表の場なのか、私は初めて聴く人たちだが、6人の新作はどれも興味深いものだった。現代音楽もまた、平均律を基調とする西洋クラシック音楽から…

S.カヴェル「愛の回避 ― 『リア王』を読む」

[読書] スタンリー・カヴェル「愛の回避 -『リア王』を読む」 (『悲劇の構造』所収) 先日、NTライブの『リア王』を見たが、その前後にリア王解釈を幾つか読んだ。アメリカの哲学者カヴェルが1967年に書いた論考が優れたものだったので、忘れないうちに要点…

今日のうた(96)

[今日のうた 96] 4月ぶん (写真は渡辺白泉1913~69、戦前の新興俳句運動の一員であり、「京大俳句」事件で検挙された、非常に鋭く戦争を詠んだ句で知られる) 先の世ものちの世もなき身ひとつのとどまるときに花ありにけり (上田三四二1977『遊行』、作者は医…

マッケラン主演、NTライブ『リア王』

[演劇] マッケラン主演、『リア王』 NTライヴ 4月24日 渋谷ヒューマントラスト (写真下は、開幕冒頭、王国分割のシーン、左からコーディリア、ゴネリル、リア。その下は第4幕6場、リアと、両目をくり抜かれたグロスター、リアはぼろぼろの肉体と狂気の中にも…

鈴木裕美演出、チェホフ『かもめ』

[演劇] チェホフ『かもめ』 4月21日 新国・小劇場 (写真下は、ニーナとトリゴーリン アルカージナとコースチャ) 『かもめ』実演を見るのは6回目。今回の小川絵梨子翻訳、鈴木裕美演出は、リアリズム寄りのオーソドックスな演出でありながら、強い感銘を与え…

シェーンベルク『グレの歌』

[音楽] シェーンベルク『グレの歌』 東京文化会館 4月14日 大野和士指揮、東京都響。この曲は、CDやYou Tubeでしか聴いたことがなかったが、実演では印象がまったく違う。やはり実演で聞かなければダメだと思った。何よりもオケの大編成がすごい。弦楽器だけ…

大池容子作、うさぎストライプ『ハイライト』

[演劇] うさぎストライプ、大池容子『ハイライト』 駒場・アゴラ劇場 4月8日 (写真下は、終幕近く、夜行バスに乗って、東京という寂しい大都会を去る若者たち、だが、彼らは寂しさから逃げるのではなく、寂しさと向き合い、それを引き受けることによって、寂…

今日のうた(95)

[今日のうた] 95 3月ぶん (写真↓は、右側が樋口一葉1876~92、左側は一葉が短歌を教えていた太田竹子、一葉はたくさんの短歌を残し、彼女自身の恋を詠んだものもある) 腹に在る家動かして山笑ふ (高濱虚子、冬は冬眠しているように見えた山も、早春になると…

杉原邦生演出、太田省吾『水の駅』

[演劇] 太田省吾『水の駅』、杉原邦生演出 江東区、森下スタジオ 3月29日 (写真下は、終幕、水場でゆっくりと水を飲む少女、私には「祈り」に見えた、その下の2枚は、水場にやってくる二組の夫婦、二組とも愛を交わすのだが、ぎこちない動きにもかかわらず…

ヘアハイム演出、チャイコフスキー『スペードの女王』

[オペラ] ヘアハイム演出、チャイコフスキー『スペードの女王』 ROHシネマ 有楽町・TOHOシネマズ日比谷 3月20日 (映像は今年1月22日の舞台) (写真の左側は↓、原作にはないチャイコフスキー、その下は、エカチェリーナ二世の登場シーン、巨大な鏡を使って客席…

青木涼子、エトヴェシュ・ペーテル『くちづけ』他

[現代音楽] 青木涼子、エトヴェシュ・ペーテル『くちづけ』他 東京文化会館・小 3月9日 (写真↓は3月9日の公演、青木は中央に立って謡う) 能の要素を導入した現代音楽で、静謐で張り詰めた美しさがとてもいい。能の二つの鼓を多様なパーカッションが代替し、…

オールビー 『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』

[演劇] オールビー『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』 NTライブ ヒューマントラストシネマ有楽町 3月6日 (写真↓は、左から右へ、若い大学講師(生物学者)のニック、中年の大学助教授(歴史学者)ジョージ、ニックの妻ハニー、ジョージの妻マーサ) J.マグ…

小山ゆうな演出 ヴェデキント『ルル』

[演劇] ヴェデキント『LULU』 小山ゆうな演出 赤坂red theater 3月4日 (以下の写真は「ステージ・ナタリー」3月1日の電子記事より転載、上はルル[霧谷大夢]、下は背後に映像も同時に映されるルル、原作では絵画だが、画家のシュバルツ[手前の若い男]を写真家…

平田オリザ 『隣にいても一人』『忠臣蔵・OL編』

[演劇] 平田オリザ『隣にいても一人』『忠臣蔵・OL編』 駒場・アゴラ劇場 2月28日 (写真下は、『隣に・・』と『忠臣蔵・・』、ただし今回の舞台ではない) どちらも、良く出来た劇だ。不条理な状況に突然置かれて、もがいている人間の面白さ、愛おしさが描か…