[今日の絵] 7月前半

[今日の絵] 7月前半 1 Jules Breton : 崖 1874 ブルトン1827-1906はフランスの写実主義の画家。彼女はこの姿勢からして、海の何かに「あこがれて」いるのだろう。「海に来れば海の向こうに恋人がいるようにみな海をみている(五島諭)」、海の前に来ると人は心…

[演劇] キェシロフスキ 『デカローグ9・10』 新国

[演劇] キェシロフスキ 『デカローグ9・10』 新国 7.11 (写真↑は9話「ある孤独に関する物語」の外科医ロマン[伊達暁]と妻のハンカ[万里紗]、妻の愛人の大学生マリウシュ[宮崎秋人]) 40才の敏腕な心臓外科医ロマンは、医学的な理由で性的不能になってしまっ…

[演劇] キェシロフスキ 『デカローグ7・8』 新国

[演劇] キェシロフスキ 『デカローグ7・8』 新国 7.5 (写真↑は「デカローグ7、ある告白に関する物語」、マイカ[中央]は16歳のとき若い高校の国語教師[右]との間に子供ができてしまった、でも校長であった彼女の母はスキャンダルを恐れ、「自分の子」と偽って…

[演劇] シェイクスピア『オセロー』 文学座

[演劇] シェイクスピア『オセロー』 文学座 紀伊国屋サザン 7.3 (写真↓は舞台、シンプルでスタイリッシュで美しい、最初から空間がコスモロジーになっている) 非常に驚くべき、そして素晴らしい『オセロー』だった。7年前のヴァン・ホーヴェ演出と並ぶ、上…

[折々の写真] 5,6月

[折々の写真] 5,6月 5.1ルネ・ファルコネッティ1892-1946は、ドライヤー『裁かるるジャンヌ』1928で主演、端正な美女で、もともとは喜劇系映画や舞台の人、1927年に描かれた絵が、日本のポーラ美術館にある。4分の動画、裁判中のジャンヌがすばらしい The Pa…

[折々の言葉] 5,6月

[折々の言葉] 5,6月 ぼくはデーミアンの顔を見る。少年の顔じゃない。一人前の男の顔。しかも男の顔にとどまらないなにかが見えたような気がした。女の顔らしきものがそこに見えたのだ。つまり、彼の顔はほんの一瞬、男っぽくもなければ、幼くもなく、年齢を…

[今日の絵] 6月後半

[今日の絵] 6月後半 17 Pieter Bruegel : 収穫する人たち1565 今日からは「働く人」を、16世紀にはまだ工業は未発達だから、労働といえば農業だ、ブリューゲルは農民をたくさん描いた 18 Gustave Courbet : The Stone Breakers 1850 19世紀には「働く人」が…

[今日のうた] 6月

[今日のうた] 6月 うち竝び鏡にむかふ衣替 (高濱虚子1897、衣替えの日、昨日までとは違うので、出かける前に鏡に向かう時間がどうしても長くなってしまう、二人一緒になってしまった) 1 扇風器大き翼をやすめたり (山口誓子1929、扇風機と扇風器は違うのかど…

[オペラ] ヴェルディ《シチリアの晩鐘》 アーリドラーテ歌劇団

[オペラ] ヴェルディ《シチリアの晩鐘》 アーリドラーテ歌劇団 新国 6.22 初見だが、素晴らしい作品だ。ヴェルディには珍しく、戯曲や文学からではなく、「シチリア島民の蜂起」という13世紀の史実から直接に作られた作品。主人公のエレーヌ公女が、敵国の貴…

[今日の絵] 6月前半

[今日の絵] 6月前半 1 Rembrandt : A Man in a Room, 1630 窓はよく絵の対象になる。その理由は、窓の外は明るく、その明るさの落差が人間の心の開かれ方に作用して、それが様々な外観の差になるからだろう、「窓」は、その画家にしか見えていないものを描け…

[オペラ] プッチーニ ≪つばめ≫ Metライブ

[オペラ] プッチーニ ≪つばめ≫ Metライブ Movixさいたま 6.6 (写真は↓、第2幕終り頃、パリの宴会で踊る客たち、ヴェルディ『椿姫』の「乾杯の歌」と似た雰囲気で、愛を讃え祝福する軽やかなダンスと音楽が快い) プッチーニの、あまり上演されない作品だが、…

[オペラ] ヘンデル《デイダミーア》二期会

[オペラ] ヘンデル《デイダミーア》二期会 目黒パーシモンホール 5.26 (写真は舞台、中村蓉演出・振付で、バロックダンスの代りに全篇コンテンポラリーダンス、下は美少年のアキレウス) 二期会公演、鈴木秀美指揮。珍しい作品が上演された。ヘンデルの最後の…

[演劇] キェシロフスキ『デカローグ5・6』

[演劇] キェシロフスキ『デカローグ5・6』 新国(小) 5.23 (写真は、第6話「ある愛に関する物語」練習風景、ワルシャワの巨大団地だが、空間の使い方が上手い) 今回は「デカローグ」5と6、それぞれ1時間。5は「ある殺人に関する物語」で深刻な内容だが、…

[今日の絵] 5月後半

[今日の絵] 5月後半 12 Matthias Stom : Young Man Reading by Candlelight 1630 マティアス・ストーム1600-1650はオランダの画家、カラヴァッジオの影響を受けた。ロシアの心理学者ヴィゴツキーは「読書しているとき、人は自分と対話している」と述べた、「…

[今日のうた] 5月

[今日のうた] 5月ぶん フラスコに指がうつりて涅槃なり (永田耕衣『加古・傲霜』1934、「涅槃」は釈迦入滅の春の季語、「ねはん」という響きが美しい、「フラスコに映った自分の指」が「涅槃」という奇抜な取り合わせが、いかにも耕衣らしい) 5.1 美しきネオ…

[演劇] 木下順二『オットーと呼ばれる日本人』 

[演劇] 木下順二『オットーと呼ばれる日本人』 民藝 紀伊国屋サザン 5.17 (写真↓は、舞台中央が尾崎秀実、右へアグネス・スメドレー、ゾルゲ。そして本人たち、毛沢東、朱徳、スメドレーの貴重な画像も、延安か) 初演が1962年、本上演が4回目で、丹野郁弓演…

[演劇] シェイクスピア『ハムレットQ1』

[演劇] シェイクスピア『ハムレットQ1』 渋谷PARCO劇場 5.14 (写真↓は、オフィーリア[飯豊まりえ]、ハムレット[吉田羊]、王クローディアス[吉田栄作]、そしてホレーシヨ[牧島輝]、吉田が演じるハムレットは美しい、飯豊まりえはオフィーリアの他にフォーテ…

[今日の絵] 5月前半

[今日の絵] 5月前半 1 ヘンドリック・ステーンウェイク : アーヘンの市場広場 街には人がただ存在するのではなく、街で人は生きている、街の絵には必ずその生きざまが描かれ、画家がたくさん「街」を描くのは、そこにいる「人」を描きたいからだ、作者は17世…

[演劇] チェホフ『カモメ』 オスターマイアー演出

[演劇] チェホフ『カモメ』 オスターマイアー演出 静岡SPAC 5.6 (写真[シャウビューネ上演2023も混じる]↓はニーナ[アリナ・シュトレーラー]とトリゴーリン[ヨアヒム・マイアーホッフ]、マイアーホッフはドイツの有名な作家らしいが、今回のトリゴーリンはい…

[演劇] キェシロフスキ『デカローグ1~4』 新国(小)

[演劇] キェシロフスキ『デカローグ1~4』 新国(小) 4.26/5.2 (写真は舞台↓、1988年のワルシャワの巨大な公営住宅に住む人々、舞台は、シンプルでスタイリスティッシュで美しい) 上村聡/小川絵梨子演出で、TV用映画10連作を舞台化した。キェシロフスキは『…

[今日のうた] 4月

[今日のうた] 4月 行く春や鳥啼(な)き魚(うを)の目は涙 (芭蕉1689『おくの細道』、旧暦三月二七日、芭蕉は、深川から隅田川を船で千住まで行き、そこで見送った人々への別れの挨拶句、芭蕉の句には旅の挨拶句が多く、人と人との出会いと別れが重要な句興の場…

[今日の絵] 4月後半

[今日の絵] 4月後半 18 Michelangelo : Sistine Chapel (detail) 人物画で顔が重要なのは、そこに人格が表れるから、つまり人間の内面が一番表れるのが顔、角度や向き、質感、影の付き方、視線の鑑賞者との衝突の有無など、すべて関係する。ミケランジェロの…

[折々の言葉] 3、4月

[折々の言葉] 3、4月ぶん 趣味とは、些細なことにおいて自分を知る技術に他ならない。人生の楽しさは些細なことから織り成されるのだから、そういうことに心を向けるのは、どうでもよいことではない。(ルソー『エミール』) 3.1 人生の目的は、他者とのよい関…

[折々の写真 ] 3、4月

[折々の写真 3、4月] 3.6 『高慢と偏見』 1995、 BBC制作の6時間もの、ジェニファー・エイル[リジー]、 コリン・ファース[ダーシー]、クリスティン・ボナム=カーター[ビングレイ]、スザンナ・ハーカー[ジェイン]、いずれも人物とキャストがぴったり、『高慢…

[オペラ] ヴェルディ《運命の力》 Metライブ

[オペラ] ヴェルディ《運命の力》 Metライブ Movixさいたま 4.22 (写真は舞台↓、男女の恋愛と戦争との関係が、本作の通奏低音のような主題となっている、それがとてもよく分る演出だった) 《運命の力》はオペラとしては非常に深みのある作品だが、やや「問題…

[演劇] 井上ひさし 『夢の泪』 こまつ座

[演劇] 井上ひさし 『夢の泪』 こまつ座 紀伊国屋サザンシアター 4.17 (舞台は↓、ミュージカルっぽく、喜劇仕立てだが、内容はド直球の史劇、東京裁判で戦犯とされた日本人被告の弁護人を務めることは、それだけで複雑な政治的圧力の渦巻く中心に置かれるこ…

[演劇] 平田オリザ 『S高原から』 駒場アゴラ

[演劇] 平田オリザ 『S高原から』 駒場アゴラ 4.15 軽井沢?あたりにある高級サナトリウムの面会室、裕福な若者たちだが、みな自分の死を予感しており、見舞いの友人たちと一緒に明るくふざけ合っているが、孤独は深い↓ アゴラ閉館で「さよなら公演」の一つ…

[今日の絵] 4月前半

[今日の絵 4月前半] 1 Bottichelli : 春 1482 「わが世の春」「青春」「春画」など、「春」は俳句の季語だけでなく、絵画でも普遍的主題、「春」は我々にとって何よりもまず「喜び」の季節だろう、女にとっても男にとっても 2 Albert-Emile Artigue : 春の花…

[演劇] 劇団道学先生 『東京の恋~さほどロマンチックでもなく~』

[演劇] 劇団道学先生 『東京の恋~さほどロマンチックでもなく~』 新宿シアタートップス 4月10日 初めて知る劇団だが、素晴らしい舞台だった。岸田國士「頼母しき求縁」1930、別役実「その人ではありません」1981の二作に、現代の深井邦彦「うそぶく」を組…

[展覧会] ホキ美術館「第5回 私の代表作」

[展覧会] ホキ美術館「第5回 私の代表作」 ホキ美術館 4月4日 今回見る絵は、何度目かのものが多いのだが、それにしても、〈今、ここに存在する人間〉というものは、ただそれだけで、なぜこれほど美しいのだろう! 野田弘志 「崇高なるもの」OP.9 2023 これ…