2007-01-01から1年間の記事一覧
[演劇] 野田秀樹『キル』 渋谷・コクーン (写真下は、1997年の再演公演より) 1994年初演の作品。野田秀樹の魅力は、少年少女劇を大きな物語に仕立てる天才的な想像力にある。若者は、それがそこに存在するだけで美しい。そうした若者が、ギャグや言葉遊び…
[読書]永井均『なぜ意識は実在しないのか』(岩波、2007年11月) (写真は、デカルトをデザインした昔のフランス紙幣) 本書の最後の章「第3日 なぜ意識は志向的なのか」には、とても興味深い議論がある。というのは、知覚そのものが志向的であるという我々の現…
[読書]永井均『なぜ意識は実在しないのか』(岩波、07年11月刊) (写真は、マクタガートのパラドックスで名高い、J.M.E.McTaggart(1866-1925)。ケンブリッジ大学教授を務めたヘーゲル学者。) 永井氏は、独在的な<私>が「我々の一人としての私」にたえず転化…
[オペラ] モーツァルト『後宮からの逃走』 東京室内歌劇場公演 新国立劇場中H (写真右は、2004年ベルリン・コーミッシェオーパーにおける、カリクスト・ビアイト演出の『後宮』。女たちになぶりものにされる召使オスミン。誰もトルコ風ではない。写真下は、…
[読書] 永井均『なぜ意識は実在しないのか』(岩波、07年11月刊)(写真は、デカルト『人間論』の図。「足の位置に熱さを感じる」真の原因は、足ではなく脳にある。この問題は『第六省察』で深められるが、永井氏の言う「ゾンビ問題」にも繋がる。足を失った人…
[読書] 永井均『なぜ意識は実在しないのか』(岩波、07年11月)(写真は、デカルト『人間論』の中の図版。「魂の場所」は難問中の難問。) 永井氏の新著が出た。「私と他者の非対称性」を一貫して追究してきた永井氏は、『私・今・そして神』『西田幾多郎』など…
[演劇] 土田世紀作『異人の唄・アンティゴネ』 新国立劇場(写真右は、アン[手前、土居裕子]とメイ[純名りさ]。写真下は、年老いた叔父[実は父だった]を車椅子で介護するアン。周囲はコロス。) 「ギリシア悲劇の翻案」シリーズ第三作。人気漫画家の土田世紀が…
[演劇] カフカ原作、松本修脚色『審判』 三軒茶屋・シアタートラム (『審判』は、けっこう演劇化されているようだ。写真右は、アメリカの高校での(!)上演(2006)。下の写真二点は、ドイツの劇団の公演(1997)、こちらの方が『審判』らしい雰囲気。) 松本修は…
[演劇] 坂手洋二『ワールド・トレード・センター』 下北沢ザ・スズナリ (写真右は、編集部員を演じる劇団・燐光群の俳優たち。左から、大西孝洋(編集長カマタ)、中山マリ(古参の部員)、猪熊恒和(副編集長)。写真下は、散らかる編集室。) 劇団・燐光群を主…
[演劇] 鄭義信作『たとえば野に咲く花のように アンドロマケ』 新国立劇場・中劇場 (写真右は、満喜(=アンドロマック)を演じる七瀬なつみと、康雄(=ピリュス)を演じる永島敏行。写真下は、康雄とあかね(=エルミオーヌ)を演じる田畑智子。) トロイの王子に…
[演劇] 国立音大大学院公演『フィガロの結婚』 国立音大講堂 (写真は、モスクワ室内歌劇場公演『フィガロ』。名演出家ボリス・ポクロフスキーによる舞台。私は2年前に来日した『魔笛』を見たが、残念ながらこちらは未見。でも写真から、簡素な舞台に喜びが…
[演劇] 川村毅作『アルゴス坂の白い家 クリュタイメストラ』 鵜山仁演出、新国立劇場 (写真右は、左から、エレクトラ(小島聖)、クリュタイメストラ(佐久間良子)、アガメムノン(磯部勉)。クリュタイメストラは刀を手にするが、だめ男になってしまったアガメム…
[演劇] 井上ひさし作『ロマンス』 世田谷パブリック劇場 (写真下は、左から、大竹しのぶ(チェホフの妻オリガ・クニッペル)、松たか子(チェホフの妹マリヤ・チェホワ)、段田安則(壮年チェホフ)、生瀬勝久(青年チェホフ)、井上芳雄(少年チェホフ)、木場勝己(晩…
[演劇] ガルシア=マルケス原作『エレンディラ』 蜷川幸雄演出、さいたま芸術劇場(写真右は、左からエレンディラの祖母(瑳川哲朗)、エレンディラ(美波)、ウリセス(中川晃教)、語り部の作家(國村隼)。写真下は舞台より。) コロンビアの作家、ガルシア=マルケス…
[オペラ] フィガロの新演出(’06ザルツブルク音楽祭DVD) [2] (写真は、第三幕最後の結婚式シーン。スザンナとフィガロ(ダルカンジェロ)の表情は暗い。) 演出のクラウス・グートは、たしかに才能を感じさせる。生とエロスを寿ぐ傑作喜劇『フィガロの結婚』を…
[オペラ] フィガロの新演出(’06ザルツブルク音楽祭DVD) [1] (写真右は、’06ザルツブルク音楽祭『フィガロ』の第二幕。横たわるケルビーノ(シェーファー)を愛撫する伯爵夫人(レシュマン)とスザンナ(ネトレプコ)。本来はケルビーノを女装させる軽やかで楽しい…
[演劇] チェホフ「三人姉妹」 TPT公演 ベニサン・ピット(写真は、左からオーリガの呂美、マーシャの浜崎茜、イリーナの唐沢美帆) 2004年12月に上演された、TPT公演「三人姉妹」は、アッカーマン演出のとてもユニークなものだった。三人は非常に若くて可愛ら…
[演劇] 野田秀樹『THE BEE』三軒茶屋・シアタートラム(写真下は、左がマスコミ記者役の野田秀樹、中央が井戸役の女性キャサリン・ハンター。彼女はリア王やリチャード三世も演じた英国の女優。) 観たのは『THE BEE』ロンドンバージョン。こちらが原作で、英…
[読書] 長谷川宏『高校生のための哲学入門』(7月10日刊、ちくま新書)(写真右は、著者近影。左は、詩人の茨木のり子との共著) ヘーゲルの翻訳で名高い長谷川氏が、哲学や思想は個人の人生とどう関わるのかを模索した書。答えは、「本当の意味で、人生を楽し…
[演劇] 『国盗人』(シェイクスピア原作、河合祥一郎作、野村萬斎演出・主演) 世田谷パブリックシアター(写真は、リチャード三世=「悪三郎」役の萬斎と、女性4役を兼ねる白石加代子。) 野村萬斎による狂言とシェイクスピアの融合は、これまで『法螺侍』(原作…
[読書] ルース・ミリカン『意味と目的の世界』(信原幸弘訳、勁草書房、07年1月刊) [写真はミリカンの近著。Language : A Biological Model, 2005] 「彼女は来ない」のような否定判断は、通常、それを裏付ける「彼女は急用ができた」のような肯定的な情報がな…
[読書] ルース・ミリカン『意味と目的の世界』(信原幸弘訳、勁草書房、07年1月刊) [写真は、私の家の近所の荒川河川敷。よく散歩するのですが、今、早咲きのコスモスが満開。綺麗でしょう。6月30日撮影] 原始の生物も表象活動をするというミリカンの視点から…
[読書] ルース・ミリカン『意味と目的の世界』(信原幸弘訳、勁草書房、07年1月刊) [写真はチンパンジーのアイちゃん。京大の松沢教授から健康診断を受けている。アイちゃんは、100以上の言葉、英語も10ぐらい知っていると言われるのだが・・・] ミツバチのダ…
[読書] ルース・ミリカン『意味と目的の世界』(信原幸弘訳、勁草書房、07年1月刊) 前回見たように、オシツオサレツ記号に含まれる「目標の表象」から、「目標が達成された状態の表象」が分離されるためには、たんなる「目標の場所」ではなく、空間的表象から…
[読書] ルース・ミリカン『意味と目的の世界』(信原幸弘訳、勁草書房、07年1月刊) 哲学には、「事実から規範は導出できない」という古くからの難問がある。しかしミリカンはまったく逆に考える。そもそも記号(=表象)の起源は、「生物が、自己の生存に適する…
[オペラ] R.シュトラウス『ばらの騎士』 新国立劇場 (写真右は、元帥夫人(ニールント) とオクタヴィアン(ツィトコワ)。写真下は、練習場。左より二人目から右へ、ローゼ(オックス男爵)、ツィトコワ、ニールント。その下は、第二幕の美しい舞台。) 演出は、ロ…
[読書] ルース・ミリカン『意味と目的の世界』(信原幸弘訳、勁草書房、07年1月刊) (写真は2006年7月、オーストラレーシア哲学会での著者。食事そっちのけで、哲学的議論をしてる?) ミリカンは、第6章「志向性」において、自然的表象(記号)と志向的表象(記号…
[読書] ルース・ミリカン『意味と目的の世界』(信原幸弘訳、勁草書房、07年1月刊) (写真はスーザン・ブラックモア『ミーム・マシン』の表紙。ドーキンスの「ミーム」を無批判に賛美したとミリカンは批判する(p23)。) ミリカンは、第2章「ミームの目的とその…
[演劇]シェイクスピア『夏の夜の夢』 J.ケアード演出 新国立劇場 (写真右は、左から、妖精(神田沙也加=松田聖子の娘)、ロバのボトム、ティターニア(麻美れい)。写真下は、左から、ヘレナ(小山萌子)、ディミートリアス(石母田史朗)、ハーミア(宮菜穂子)、ラ…
[読書] ルース・ミリカン『意味と目的の世界』(信原幸弘訳、勁草書房、07年1月刊) (図は、ミツバチの丸型ダンス。蜜が巣から近い時は、8の字ダンスではなく、このダンスを踊る。この単純なダンスも、蜜の位置の情報を表現しているといわれる。J.Bowman氏のH…