[今日の絵] 9 月前半
1アダム・ウィラーツ:パラティーノ選帝侯とエリザベス王女のマーゲイトでの乗船 1623
人類は約12万年前にアフリカを出て世界に散らばり始めた、おそらく当時から舟が活躍したに違いない。舟は人間の生存に不可欠で、「家」と並んで絵に繰り返し描かれた。今日から少し舟の絵
2 葛飾北斎 : 冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏1832
舟は水を越えて人と人を結びつけると同時に、舟という狭い空間に人を閉じ込めるから、そこでも人と人との新しい関係を創り出す、この小舟の人達は、海と戦う「戦友」だ
3 Caspar David Friedrich :人生の諸段階1834
カスパー・フリードリヒ1774-1840はドイツロマン主義の画家、この絵は、さまざまな大きさと遠近の帆船を、手前の人間たちの世代を異にする人生と重ねて、全体を海に一望したのが「ロマンティッシュ」なのか
4 Rosa Bonheur : 食べものの取り引き 1863
ローザ・ボヌール1822 -1899はフランスの女性画家、同性愛者でもあり、生涯を二人の女性パートナーと過ごしたがスキャンダルにならなかった、家畜の絵をたくさん描き、この絵は、同方向に向かう遠方のボートにも羊?が積まれ、たぶん別の何かと交換がある
5 Albert Edelfelt : Summer evening 1883
エデルフェルト1854-1905はフィンランドの画家、鋭い表情をもつ人物画を描いた、このボート遊びの少女たちも皆それぞれの表情をもっている、夏のフィンランドでは夜になっても明るいので人の顔もよく見える
6モネ:ジヴェルニーのボート 1887
昨日の絵と同様、舟には女性だけ、釣りを楽しんでいる女子会なのか、背景の植物が暗いので暗い水面、舟とその影も暗い、しかしそれによって女性たちの服の白さが際立つ、暗い水面が光っていて、全体が光によって調和している
7 Pissarro : ポントワーゼに停泊するはしけ
石炭や農作物を運ぶ平底荷船で、船そのものは別に美しくないが、中央の船の先端にたぶん女性が一人いて、人間のぬくもりもある。煙突、その煙、奥の森、河の水面など、全体の調和が素晴らしい
8 Tissot : The Thames 1876
テームズ河の河口付近か、物見遊山ではなく、はしけ舟で大きな船まで運ばれているのだろう、雨に濡れないように厚い毛布のようなものを体に掛け、中央には犬も二匹いるようだ、上流階級の女性二人と、手前はポーターか
9 ルノワール : アルジャントゥイユの帆舟1874
パリ近郊のアルジャントゥイユは、当時モネが住んでおり、ルノワールはしばしば訪問してモネと一緒に絵を描いた、この絵は、どこかのんびりしているが自由な雰囲気があり、舟遊びの人々の楽しさが伝わってくる
10 マネ : ヴェネツィアの大運河1875
マネの描く海や河の青色はとても印象的だ、深みがあるのに全体が明るい、この絵も、他の画家なら運河はたぶん違った色だろう、ポールの縞模様もよく調和している、でも船頭一人だけで客はいないのが、もったいない感じ
11 Rafael Romero Barros : グアダルキビル川のほとりのコルドバの日曜日1884
バロス1832-1895はスペインの画家、中産階級の人たちだろう、日曜日に、街近くの中州のような場所に幾つものファミリーが集まるのか、まずそこへ「舟で」渡るのも、楽しみを倍加する
12 Julius LeBlanc Stewart : ベネチアで、ヨット「ナムーナ」の船上1890
スチュアート1855-1919は米国に生まれフランスで活動した画家、ヨットの絵を幾つも描いた、この絵も、豪華なヨットで地中海を楽しむ上流階級の人々、皆さんくつろいだ余裕の雰囲気
13 Juan Martínez Abades : El viático a bordo 1890
タイトルは「聖体の秘跡のための乗船」という意味だろう、大きな客船で誰かが臨終を迎えると、聖体の秘跡のために神父が静かに船に上がってゆく。アバデス1862-1920はスペインの画家、海や港の絵をたくさん描いた
14 John Robertson Reid : Shipmodel maker with harber 1908
老人の漁師が船の模型を作っている、孫たちもいずれは漁師になって、船で海へ出てゆくのだろう。リード1851-1926はイギリスの画家、海の絵をたくさん描いた