[折々の言葉] 7,8月

[折々の言葉] 7,8月

恋愛はあらゆる感情を象徴で表現するから、その言葉はつねに比喩なのだ。愛する者にとって、書いているものはもはや手紙ではない、賛歌なのだ。(ルソー『新エロイーズ』) 7.1

 

抗(あらが)いの中にいのちの最後の輝きを楽しもうとするのは、つまらないことなのだ。 (カフカ『審判』) 5

 

獄中ですごした歳月よりも、戦争の日々よりも、社会に適応しようとしたこの時期こそが一番つらかった。(A.ナフィーシー『テヘランでロリータを読む』) 8

 

人は、思慮もなく結ばれた関係は苦もなく切れるだろうと考えるが、しかし・・・。(コンスタン『アドルフ』) 12

 

「これもやはり、愛」と君はいっていた。そしていっそう理由もなしにこうも付け加えたことがあった、「一切か、無か」と。(ブルトン『ナジャ』) 15

 

私はいつもこう思っています。ひとりの人が何か非常に尊いもののために他の人に感謝しなければならないとき、その感謝はいつまでもふたりだけの秘密でなければならない、と。(1897年5月13日、21歳のリルケが、逢ったばかりの35歳の女性ルー・ザロメに宛てた愛の手紙) 19

 

愛という問題は、それ以外のどんな重大な物事に比べても、あれこれの同意によって公然と解決されるものではありません。愛というものは問いであり、そのいちいちの場合について、新しい、特別の、ひたすら個人的な解決を必要とする、人間と人間の間の切迫した問題なのです。(リルケ『若き詩人への手紙』) 22

 

芸術的な体験は信じがたいほど性的な体験に近く、その苦痛や快楽に近いので、この二つの体験は、元来同じ一つの憧憬や法悦の異なった形式にすぎないと言えるほどなのです。(リルケ『若き詩人への手紙』) 26

 

[懐疑があなたを苦しめているならば・・]困難なことに対し、他人の間での孤立に対する信頼の力をいよいよかちえてください。そして、とにかくあなたは、ご自分の人生をそのおもむくままになさってください。私の言葉を信じてください。人生は正しいのです、どんな場合にも。(リルケ『若き詩人への手紙』) 29

 

ひとりでいい。大勢でなくていい。芸術家が望むべきことは、それだけじゃないのか!(画家ピサロの、息子リュシアンへの手紙) 8.2

 

貴方はまだどこか子ども子どもしたところがあるのね、こうして話していると。だから男は損なようでやっぱり得なのね。(漱石『明暗』) 5

 

女と愛し合うのと、一緒に眠るのとは、まったく違う二つの情熱である。愛というものは、愛し合うことを望むのではなく(この望みは数えきれないほどの多数の女と関係する)、一緒に眠ることを望むものである(この望みはただ一人の女と関係する)。(クンデラ『存在の耐えられない軽さ』) 9

 

彼は当時、メタファーが危険なものであることに気づかなかった。メタファーはもてあそんではいけないものである。恋は、一つのメタファーから生まれるのだから。(クンデラ『存在の耐えられない軽さ』) 12

 

彼はもう七年間も彼女に縛られて生活してきた。彼の一歩一歩は彼女の目で監視されていた。彼の足首には鉄の球が結び付けられていた。[彼女が去った今]彼の足どりは急に軽くなった。舞い上がらんばかりであった。存在の甘い軽さを楽しんだのである。(クンデラ『存在の耐えられない軽さ』) 16

 

「差異への権利」が極端に強まると、諸々のアイデンティティが激しく競争することになる。こうした中、ますます多くの白人が、オルタナ右翼の憎悪に満ちたプロパガンダに敏感に反応し、自分たちの方がマイノリティになったと危機感を強めてしまう。(K.フレスト『「傷つきました」戦争』) 19

 

恐ろしいのは、文化の混合を嫌う恐怖症だ。一つの文化の中に「入る」こと、「出る」ことができるのを「きわめて暴力的」と見なしている。まるで、強姦のような話ではないか。実際に存在するのは「文化的混合の話」なのに。(K.フレスト『「傷つきました」戦争』) 23

 

芸術作品は無限に孤独なもので、これに達するのに批評をもってするほど迂遠な道はありません。愛だけがそれを捕えて引き止めることができ、それに対して公正でありうるのです。(リルケ『若き詩人への手紙』)26

 

 いつの日にか[人類に]女性的人間というべきものが現れるでしょう。この進歩は、今は誤謬にみちている愛の体験を、(さしあたっては、追い抜かれた男性たちの意志には大いに反しながらも)変貌させ、根底から変え、もはや男性から女性への関係ではなく、人間から人間への関係に造り直すでしょう。(リルケ『若き詩人への手紙』)30