[今日の絵] 2月後半

[今日の絵] 2月後半

16 ラファエロ : 聖家族1506

「聖家族」は西洋絵画の長く続く深い主題、聖母マリアと幼子のイエスは、母が子を生み人類は続いてゆくことを象徴するか、父のヨセフはいることもあり、いないこともあり、子どもの洗礼者ヨハネがいることもある、これは「髭のないヨセフ」だが、何だか他人行儀

 

17ヤコブ・ヨルダンス : 聖家族1620

父のヨセフは大工というより、長老っぽい、マリアは聖母というより、どこにでもいそうな普通の女の顔だ、イエスも元気いっぱいの普通の幼児

 

18レンブラント : 聖家族1645

父のヨセフは、昨日のヨルダンスの絵とは違って、いかにも大工っぽいが、後方にいて、影が薄い、聖母マリアも普通の女のよう、「聖家族」は次第に「聖性」が弱くなって、「母と子」という、より普遍的な主題に変容してゆく

 

19 Pompeo Batoni : 聖家族 1777

ポンペオ・バトーニ1708-87はイタリアの画家、洗練されたエレガントな肖像画で名高く、王侯貴族からたくさん注文がきた、この絵の聖母マリアは画家の妻がモデルらしい、そういうことは別に問題視されなかったのか

 

20 不明のオランダ・フランドル地方の画家 : Mother and child with Harlequin 18世紀

「聖家族」が元来の構図だろうが、もはや「聖」を感じさせない、聖母マリアというより普通の母、イエスも普通の坊や、でも幸せな家族、なぜ道化と一緒? 右側の男も父親っぽくない

 

21 Elisabeth Vigee-Lebrun : アレクサンドラ・ガリツィア王女と息子1794

ルブラン1755~1842は、マリー・アントワネット付きの宮廷女性画家、フランス革命後は失職、王族貴族の肖像画で食いつないだ、これは「聖家族」ではなく母と息子、若い王女の落ち着いた表情がいい

 

22 Bougreau : Young mother gazing at her child 1871

これは貧乏人の普通の母子だが、ブグローの描く女性はあまりにも優美なので、なんだか「聖母」っぽく見えてしまう、息子もいかにも上流階級のお坊ちゃまで、二人はこの部屋に似合わない

 

23 Edouard Joseph Dantan (1848-1897, French painter)

「聖家族」の真の主題は「愛」、愛によって赤ん坊が産まれ、赤ん坊は母に愛されて少年/少女になる、これを象徴するのが「聖家族」、だから「聖」が見えにくくなっても「聖家族」は描かれ続ける

 

24 Edouard John Ravel (Swiss, 1847-1920) : Les premiers pas 1884

画家は作曲家ラヴェルの叔父、タイトルは「初めてのあんよ!」、最初の頃の「聖家族」は母子の他に聖人が登場していたが、やがて聖人は退き家族や女中などに代わった

 

25 Monet :  妻カミーユと子ども1875

場所はパリ郊外、アルジャントゥイユにマネの世話で手に入れたモネの家の庭、長男ジャンは7歳か、花と人が引き立てあって美しい、ジャンの前の馬のおもちゃもいい、明日見るマネやルノワールの母子像とも雰囲気が似ている

 

26 Manet : 洗濯、服を干す母と子 1875

この絵はサロンに落選、でもマラルメは「みずみずしくも均一な色の葉、町の庭の葉は、夏の朝の空気を閉じ込めている。・・空気で溢れている。至る所で、明るく透明な大気が人物、ドレス、葉と格闘し、その本質と堅固さの一部を自分自身に奪っている」と激賞

 

27 Renoir : Maternité (L'Enfant au biscuit) 1887

誰が付けたかはともかくタイトルは「母性」、「母親」ではなく「母性」と抽象的になるのは19世紀以降だろうか、「ビスケットをもつ子ども」の方は具体的、いかにもルノワールらしい「子ども」が可愛い

 

28 Alexei Harlamoff : Mother and Daughter 1901

アレクセイ・ハラモフ1848-1915はロシアの画家、パリで活動し、ツルゲーネフ等の友人でもあり、芸術家の肖像画などが名高く、少女もたくさん描いた、これは「母と娘」だが、娘に動きがあって、とてもいい

 

29 Picasso : Mother and Child 1901

ピカソは「母と子」をたくさん描いている、これは19歳の時で、「青の時代」の直前か、色彩は明るい、母の顔は目などいかにもピカソ風だ