[今日の絵] 12月後半

[今日の絵] 12月後半

19ピーテル・ブリューゲル : 雪の中のハンター 1565

ルネサンス初期まで、「冬」の絵は珍しかったらしい、人々はスケートやホッケーを楽しんでいるが、狩はうまくいかず、獲物はキツネ一匹だけ、ハンターたちは疲れ切っている

 

20安藤広重:目黒の太鼓橋と雄比の丘1857

「江戸百景」シリーズの一つで、江戸には珍しかった石橋を描いた、雪だからか通行人は寒そうに歩いている、マティスではないが、全体の幾何学的均衡の構図が見事

 

21 Pissarro : Street Winter Sunlight and Snow 1872

俳句では季語がさまざまな冬を表現するが、絵画には季語はない、だが冬という季節は、低温、天気、光、衣服など、描かれたものに一定のニュアンスを与える、この絵のタイトルに「冬の太陽光」とあるように、冬は光そのものが違う

 

22 Paul Gauguin : Effe de Neige 1883

ゴーギャンに冬の絵は比較的珍しい、これはまだ画家としては無名時代のもの、タイトルは「雪の効果/印象」、くっきりとした輪郭の絵になるのは1888年頃からで、タヒチ移住は1891~93、この絵はちょっと見ただけではあまりゴーギャンぽくない

 

23 Jakub Schikaneder : 古きプラハの街角1907-09

ヤクブ・シカネーダー1855~1924は、チェコの画家、描かれた絵は夜の光景が多く、全体にどれも暗いのだが、この絵も雪が降り始めた裏通りだろう、「古きプラハの街角」の「暗さ」が印象的だ

 

24 : Jean Béraud : パリ ロワイヤル通り、クリスマスの夜 1905

ジャン・ベロー1849-1935はフランスの画家、19世紀末から第一次大戦までの「ベル・エポック期」の絵をたくさん描いた、この絵も、ブルジョア階級の男女だろうが、皆さん楽しそう

 

25 William Glackens : マディソン・スクエア クリスマスの買い物客1912

ウィリアム・グラッケンズ1870~1938はアメリカの画家、バーンズ・コレクションの絵をヨーロッパで多く買い集めた人でもある、こちらはニューヨーク市マンハッタン区のマディソン・スクエア、クリスマスの買い物客で賑わっている、降雪はないが風の強い日のようだ

 

26 Munch : Workers in the Snow 1913

ムンクは主に人間の苦しみや悲しみを描いているが、この「労働者たち」も、働く喜びを感じているようには見えない、表情は暗く、眼は誰も正面を見ていない、雪の冷たさだけが理由ではないだろう

 

27 Fra Angelico : Virgin and Child 1450頃

「聖母子」はマリアとイエスだが、幼少の洗礼者ヨハネが一緒に描かれることもあり、養父ヨゼフと一緒のものは「聖家族」と呼ばれる。フラ・アンジェリコ1395~1455の「聖母子」には、神性というよりはどこまでも人間らしい素朴な美しさがある、まるで少女のように可愛いマリア

 

28 van der Weyden : Virgin and Child 1454以後

ファン・デル・ウェイデン1400~64は初期フランドル派の画家、イエスの腕はやや捻じれており、まだ幼少なのに視線が鋭く、何かを考えているような顔だ、マリアは実際のモデル女性をもとに描いているのだろう、類型的ではなく、その人個人が描かれている

 

29 Raphal : Virgin and Child 1514

まだ幼児の洗礼者ヨハネが一緒にいる、マリアの眼が鑑賞者をまっすぐに見詰めているのが特徴、他の画家の「聖母子」と比べても、マリアはとても美しい、いつまでも眺めていたくなる上品で優美なマリア

 

30 Dürer : 梨の聖母 1512

マリアが与えた小さな梨の一切れをイエスが食べたところの絵、イエスの身体は何となくぶよっとした印象があるが、イエスを下から抱くマリアの指はがっしりと大きい、マリアは端正で、優しい母の顔をしている、神性というよりは人間性を感じさせるマリア

 

31 Cranach : リンゴの木の下の聖母子 1530前後

クラーナハ特有の下方を向いた細い眼のマリア、イエスは眼を大きく開けて正面から鑑賞者を見ている、イエスの左手にあるのは「原罪」を象徴するリンゴだが、それにしてはイエスの表情は快活で明るい、右手のパンは「私は命のパンである」というイエスの言葉に由来するか