アラン・ロブ=グリエ 『エデン、その後』

charis2019-01-23

[映画]  アラン・ロブ=グリエ『エデン、その後』  横浜シネマリン  1月23日 


(写真右は、パリの大学の向かいにあるカフェ「エデン」、モンドリアンの絵の構図の中に若者たちがいる、下は、チュニジアの砂漠で炎の中で踊り狂うヒロインのヴィオレット、宗教的な儀式の生贄の娘なのか、映画全体でもっとも衝撃的で美しいシーン、その下は、終幕、砂漠で自分の分身に会うヴィオレット)


アリストテレスは「眼は、見ることを喜ぶ」と言ったが、ロブ=グリエが1970年に撮った本作も、視覚芸術としての映画をとことん突き詰めた映像美が素晴らしい。女性の美しい肉体が完全にオブジェとなって、石、砂漠、海と調和している。ヴィオレットを演じたカトリーヌ・ジュールダンは19歳だが、彼女のやや硬質な肉体は、石に立ち混じると輝くように美しい。これはやはりチュニジアの太陽光と石の家でしか撮れない映像美だ。有名な絵画のシーンに擬する「活人画」の手法も使われており(中条省平氏の解説)、マルセル・デュシャンの『階段を降りる裸体No.2』を生身の人間が実演し↓、「デュシャン」をまねた「デュシュマン」という怪しい男が、カフェ「エデン」では重要な役割を果たす。モンドリアンの絵の直線や、角ばった石の家、砂漠の地平線、砂丘の縞模様、海の水平線などと調和して人間の肉体はかくも美しくなるのに驚かされる。彼女たちの肉体は、幾何学の一部なのだ。↓



ロブ=グリエの映画は現実と虚構が複雑に入り組んでいるが、考えてみれば、絵画は現実の対象を直接見るわけではなく、虚構の対象を見るわけだから、「活人画」の手法はもちろん、石、砂漠、海の中に人間の裸体を配置するのは、生身の肉体を「絵のような」肉体に変え、視覚対象としての肉体を超越的なものにしているのだろう↓。



最後の分身のシーンもそうだが、ヴィオレットは、同性愛的に描かれているシーンが特に美しく見える↓。本作は上映された当時、「『不思議の国のアリス』と『O嬢の物語』の恐るべき邂逅」と評されたそうだ。



14分の動画がありました。映像美がよく分かります。
https://www.youtube.com/watch?v=PxZ6EzyhGnA