[オペラ] ヴェルディ《ルイザ・ミラー》 アーリドラーテ歌劇団

[オペラ] ヴェルディ《ルイザ・ミラー》 アーリドラー歌劇団 大田区民ホール 9月10日

アーリドラー歌劇団を初めて知ったが、東大出身の弁護士・山島達夫が創立したヴェルディのオペラのみを上演する団体。指揮もすべて山島。今回の舞台は、演出が木澤譲、ダンスの振付が能美健志で、全体にコンテンポラリーダンスを組み合わせた斬新なもの。合唱がいまいちだったが(合唱団の大部分がアマチュアだと思う)、ルイザを歌った鈴木麻里子は素晴らしく、他の主要歌手たち(主に二期会)もとてもよかった。

 

この作品は、5年前にMetライブで観たことがあるだけだが、25歳シラーの戯曲『たくらみと恋』を36歳のヴェルディがオペラ化したもので、全体に若々しい勢いがあり、若きゲーテやシラーが登場したとき「疾風怒濤Sturm und Drang」と呼ばれたが、おそらくそれがオペラで表現されている。コンテンポラリーダンスの激しい動きも、まさに「疾風怒濤」的だ。シラーの原作では、ルイザの恋人のロドルフォが、ルイザが強制的に書かされたニセ手紙に騙されたまま、ルイザが心変りしたと早とちりして、ルイザを殺そうとするところが『オセロ』的で、全体の『ロミ・ジュリ』的な展開と不調和な気がするのだが、そこはさらに考えてみたい。(写真↓、左から指揮の山島達夫、ルイザの鈴木麻里子、ロドルフォの小貫岩夫)

この作品は、娘ルイザと父ミラーの父娘愛が真の主題だから、『リゴレット』『ヴァルキューレ』『リア王』などと同様に、「父娘もの」のジャンルに属する傑作というべきだ。音楽も、ヴェルディのあの浮き浮きするような明るく美しい旋律美と(たとえば「乾杯の歌」のような)、荘厳で迫力あるベートーベン的な音響とが絶妙に交差するという意味で、真にヴェルティ的な作品なのだと思う。

 

アーリドラー歌劇団を創設し、上演の企画・オケの指揮を独りで行う山島達夫は、プログラムノートにこう書いている。「仮に二日間の上演すべて満席にできたとしても、多額の赤字は必至です。もちろん生じた赤字は、すべて主宰者である私の責任となります。それにもかかわらず、私がヴェルディの自主上演に人生を捧げているのはヴェルディをキーワードにした「コミュニティ」の再生という私なりの壮大な「夢」があるからです。」10日は6割の入りだった。つまり、彼は弁護士で稼ぎながら赤字を埋めているのだ。凄いではないか。筑駒の同窓会名簿で調べたら、彼は44期生だから、まだ若い。合唱団の充実が課題だろうが、これからも頑張ってほしい。