ルーブル美術館展

charis2006-07-07

[展覧会] ルーブル美術館展−古代ギリシア芸術  東京芸大・美術館


(写真左は、「トカゲを殺すアポロン」、右は「アフロディーテ(アルルのヴィーナス)」、ともにプラクシテレス作。)


ルーブル美術館古代ギリシア展示室は現在改修中で、その作品が日本で展示中。ありがたい機会だ。朝10時の開館とともに入場、じっくりと対面できた。フェイディアス作の「アテナ」「アテナの頭部」、リュシッポス作の「ソクラテス」「アリストテレス」「弓を持つエロス」、シラニオン作「プラトン」、エウフラノール作「ガニュメデス」など、有名作品が並ぶ。そして何よりすばらしいのは、プラクシテレスの傑作が、「酒を注ぐサテュロス」「トカゲを殺すアポロン」「アフロディーテ(アルルのヴィーナス)」「クドニスのアフロディーテ」(大理石、ブロンズ各1)、「アフロディーテ頭部」と、6つも見られることだ。


前回の日誌に、『アポロンとヒュアキントス』では、羊飼いの若者になるアポロンを女性歌手が演じるので、アポロンが戦闘美少女キャラになったと書いた。だが、プラクシテレスの「トカゲを殺すアポロン」は、まったく少女のような体をしている。上記写真では正面なので分からないが、右肩の斜め後ろに回り、低い視点から見ると、腰、臀部、太ももへと流れる"まろやかな線”の美しさに驚く。まったく女性の体のようではないか! 横にある、これもまた有名なアルカメネス作「アレス」の臀部はキュッと引き締まって突き出しているが、この"軍神"の男性的な臀部と比べると、アポロンの臀部の何と優美なこと!やはりこれは、"音楽の神"の肉体なのだ。


美人コンテストで勝利したリンゴを持つ「アフロディーテ(アルルのヴィーナス)」は、神々しい輝きを放っており、エロティックな感じがほとんどない。ミロのヴィーナスは、腰布の上に臀部の割れ目が見えているが、アルルのヴィーナスの下半身は完全に衣服のみで、胸も強調されていない。何よりもこの作品は、"すっくと立つ"その長身の美しさに圧倒される。プラクシテレスの作品は、男性性や女性性をあまり感じさせず、男女が融合した稀有の美しさをもっている。それにしても、なぜ古代ギリシアで、これほどまでに美しく人間の肉体が造型されることができたのだろう。神々の"端正な美しさ"には、ただ溜め息がでるばかり。ヴィンケルマン、ゲーテヘーゲルといった人々の、ギリシア憧憬が分かるような気がする。ヘーゲル哲学史講義』『美学講義』などでは、ギリシアのところにくると、教壇のヘーゲルの声が上ずってくるのが手に取るように分かる。


今回、これらの傑作が並ぶ第3展示室には、異なる作者のアフロディーテ像がたくさん集められている。これを見比べるのはとても楽しかった。上記写真はルーブルのものだが、壁際に置かれているので、後ろからは見れないのではないか。それに対してこちらでは部屋の真ん中にあるから、360度周囲から像を眺められる。彫刻には、これは重要なことだ。8月20日までやっているので、もう一度見たい。開館とともに入場し、いきなり第3展示室に行けば、まだ誰もいない部屋で、自分のコレクションのごとく、ギリシアの神々と対面できるはずだ。案内HPは、下記。動画もあります。↓
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2006/louvre/louvre_ja.htm