[今日の絵2] 2月前半
2.1Jan van Eyck: Adam and Eva, 1429
van Eyckはテンペラから油彩画へと西洋絵画を転換させた人、しかしまだ、このアダムとイヴは、Dürer やRubensなどと違って、非常な美男/美女というわけではない、人間の肉体がまだ「原罪」から解放されていないのか
2 Albrecht Dürer : Adam and Eva, 1507
原罪のアダムとイブを美しい肉体に描くようになったのはバロックから(ラカン『アンコール』によれば、それは重要な思想史的事件です)
3 Peter Paul Rubens : Adam and Eve, 1597
アダムとイヴにしてはギリシアっぽい雰囲気、特にイヴはヴィーナスに見える、ナンパ男ふうのアダムは口説いているのか、イヴはちょっと迷っている?
4 Fra Angelico : Annunciation, detail, 1440
「聖母」にしては質素な服で、いかにも人間の女性らしいマリア、数ある「受胎告知」では私はこの画が一番好き
5 Santi Raffaello : Madonna Sistina, detail, c.1513
ラファエロの「聖家族」はやはり素晴らしい
6 Sandro Botticelli : Primavera, detail, c.1482
「春」の一部の「三美神」、この優美な三美神はcharisたちの三人と言われるが、「パリスの審判」の三女神ヘラ、アフロディーテ、アテナもよく「三美神」として描かれる。明日以降も「三美神」を
7 Lucas Cranach : The Three Graces, 1531
Cranachは「ヴィーナス」もそうだが透け過ぎたヴェールが描き込まれている、Botticelliの三美神がこのうえなく美的であったのに対し、こちらはそれに加えてややエロティックな肉体性を感じさせる
8 Peter Paul Rubens : The Judgement of Paris, 1635
左下のトロイの王子パリスが、やさ男のはずなのにごついマッチョなのが、なんか可笑しい。後でみるRenoirのパリスが丸っこい少年であるのとはずいぶん違う
9 Jean-Baptiste Regnault : The Three Graces, 1793
ルニョーはフランス革命期以降にアカデミーの中心になった「新古典主義」の画家、アングルを思わせる、三美神の肉体の白い輝き
10 Lovis Corinth : The Three Graces, 1904
ロヴィス・コリント1858~1925は、ドイツ印象主義の画家、「三美神」にしてはチープな感じで、場末のストリップ劇場の踊り子のような・・
11 Pierre-Auguste Renoir : Le Jugement de Pâris, 1913
Renoir最晩年の作、左下の王子パリスはふくよかな女性体型の少年か、三美神も、女神というよりはいかにも人間の女、「おらが村の三美人」かな
野田弘志1936~は現代日本の写実絵画の領導者の一人、この絵を描いた時、「谷川さんを通して、人間の根源的な存在の美しさ、その限りなき深さに迫っていかなければならない」と書いた
13中西優多朗 : 次の音、2019
中西優多朗は2000年生れの美大生、この絵は「第3回ホキ美術館大賞」2019を受賞
14 藤田貴也 : Eiko-01, 2016
藤田貴也1981~は写実派の若手、「Eiko」の絵は何枚かある(画家の従妹か知人だろうか)、この絵は、少女を美女や美人として描いているのではない、もっと深い本当の美しさ、野田弘志の言う「人間の根源的な存在の美しさ」を捉えている、原画は膝下まで
15 綿抜亮 : 二つの動作、2014
綿抜亮1981~も藤田貴也と同い年の写実派の若手、この絵は、少女が手を広げながらこちらを見るという「二つの動作」をしている、彼女のこの「見る」には眼だけではなく手も体の中で繋がっている、それを捉えたのがこの絵